ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

   
論評
  実務の視点  ISO マネジメントシステム コンサルタントの切り口
このセクションでは、 MS 実務の視点主宰者が、ISOマネジメントシステム規格を取巻く種々の問題を取上げ、
実務の視点に立つ  ISO マネジメントシステム コンサルタント としての見方、考え方を披露します。
目  次
日本のISO取組み
の問題点
-論評 我田引水-
ISO
マネジメントシステム

時事寸評
-メールマガジン-
マネジメントシステム
と規格


"MS 実務の視点"主宰者
ISO マネジメントシステム コンサルタント

岡          賢
名古屋市緑区旭出2-909
サニーヒルズコンサルタント
事務所
コンサルタント の プロフィール


テーマ別  目次
-日本のISO取組みの問題点-
登録制度の効用
機能不全
組織の業務能力が不足
誤った規格解釈、取組み
誤った登録審査基準の適用
誤った登録制度運用
審査登録についてのJAB新見解
再建の道筋狂わす登録停止
登録証有効性への疑念報道
ISO14001と環境配慮投・融資
登録組織不祥事と業界対応
製品の品質と システム の品質
役に立たないISOの行く末
ISOは役に立っているか
誤解
自治体の登録は税金の無駄
ISO14001は中小企業に重荷か
簡易版EMSは中小企業のためか

テーマ別  目次
-日本のISO取組みの問題点-
登録制度管理
権威主義と機関益
審査登録についてのJAB新見解
ISOコンサルタント登録制度打切り
ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言
プール事故対応と日米規格観
ISO機能不全の構造要因
コンサルタント登録制度は誰のため?
審査機関の顧客は誰か?
自在な説明、自在な解釈
不祥事は是正処置とればよい
環境影響とは
食い違うISO14001 改訂説明
"いいとこ取り"のEMS
ISO14001::2004で審査が厳格化
規格解釈は誰のためか?
製品の品質と システム の品質
制度批判への対応
審査登録についてのJAB新見解
登録証有効性への疑念報道
ISO9001は 効果が出ない 規格
審査とコンサルティング分離の新方針
付加価値のある審査

テーマ別  目次
-日本のISO取組みの問題点-
規格運用の実態
論理不在
マネジメントへのトップマネジメントの関与
マネジメントシステムは経営のツール
内部監査は”経営に役立つ”
製品の品質と システム の品質
論理の説明のない簡易版EMS
製品、環境の改善は不要
付加価値のある審査
形式的運用
登録取得組織の不祥事の原因
登録取得は取引継続の保証?
審査のバラツキの原因は組織
継続的改善は経営の普遍目的
ISO思考停止症の管理者達
形式的内部監査の落とし穴

テーマ別  目次
-日本のISO取組みの問題点-
機能させるには
"要求事項"
"要求"と"必要"で異なる成果
登録取得組織の業務能力
登録取得組織の不祥事の原因
要求事項の意図と表現
"要求事項"は"必要事項"
規格は要求しない  
すべては"要求事項"から
必要条件と十分条件
その他
記録の意義
文書のスリム化/システムのスリム化
システムを構築するということ

テーマ別  目次
-特定テーマで考える-
不祥事
登録取得組織が不祥事
を起こす理由
53. 誤った規格解釈と取組み
54. 誤った登録制度統制
55. 誤った登録審査基準適用
56. 組織の業務能力が難関
61. 経営トップの空虚なコミットメント

日本のISO取組みの問題点 論 評 我田引水− 62
実務の視点で、ISO9001/ISO14001マネジメントシステムの
認証、登録制度と体制 、並びに、その下での統制、規格の解釈 及び  関連する活動
に関する日本の実態、更に、組織の規格取組みの実状
について問題を提起し、規格制定の意図に沿った適切な取組み方を考えます。
   目 次
<最新号>
62  救世主になれそうもないISO9001の2008年改訂(追補)版(H20.3.4)
61. (追)登録取得組織が不祥事を起こす理由−経営トップの空虚なコミットメント
(H20.2.13)
60. つながる点と線=認定改革IAF案対応のJAB筋書-ISO業界よもやま話(H20.1.19)
59. 泣く子と地頭とJRCA   -ISO業界よもやま話(H20.1.7)
58. 競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出(H19.12.5)
 <規格の意図>
[要求事項の意味]
57. “要求”か“必要”で大違いの規格取組みと成果 −五度、“要求事項”を論じる
34. 規格は要求しない
26. 要求事項の意図と要求事項の表現
23. 遂に全国誌に登場、「"要求事項"は"必要事項"」という真実
14. 必要条件と十分条件 −機能するISOシステムにするには
5. すべては"要求事項"から始まった
9. 記録の意義
8. 文書のスリム化とシステムのスリム化
 
[誤解される意図]
37. 内部監査は"経営に役立つ"のか −新たな空理空論
27.マネジメントシステムは経営のツール ? -大いなる錯覚
 
20. 継継続的改善はマネジメントの普遍的目的
17. 製品の品質とシステムの品質
10. 製品の改善、環境パフォーマンスの改善は不必要か?

7. システムを構築するということ
 
 <規格適用の制度、体制>
[規格の解釈]

62. 救世主になれそうもないISO9001の2008年改訂(追補)版)
44. 環境影響とは  −不可解な日本語
43. マネジメントシステムにはトップマネジメントの関与が大切か?
−片仮名英語の弊害
42. 日米で食い違うISO14001:2004 改訂の背景説明
−どちらが本当か?
28. "いいとこ取り"のEMS  
−いつでも組織は悪者
24. ISO14001:2004 で認証審査が厳格化される?
22. ISO9001 はそれだけでは "効果が出ない" 規格か ?
18. 規格解釈は誰のためか?
−論拠に乏しい説明
 
[制度、体制の運営]
60. つながる点と線 =認定改革IAF案対応のJAB筋書
-ISO業界よもやま話(2)
59. 泣く子と地頭とJRCA  
-ISO業界よもやま話
55. (続々) 登録取得組織が不祥事を起こす理由
−誤った登録審査基準の適用
54
. (続) 登録取得組織が不祥事を起こす理由
−誤った登録制度統制
52. 混迷を深めるか審査登録制度
−審査のあり方に関するJAB新見解
51. 不二家再建の道筋狂わすISO9001登録停止の決定
−時事寸評番外編
49. ISO登録証の有効性への疑念報道
−不二家の品質不祥事
48 ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言
−業界広報誌への読者の反乱?
47. ISO14001と環境配慮投資、融資
−価値のない登録証
46. プール事故死対応に見られる規格観の日米差異
45. 登録組織の不祥事と業界の対応
−審査登録制度の信頼性を毀損
38. ISO機能不全の構造要因
29. 審査機関の顧客は受審組織ではないという考え方
16. 論理の説明のない簡易版EMS
6. 役に立たないISOマネジメントシステム の行く末
4. ISO14001導入は中小企業には重荷か
1. 簡易版EMSは中小企業のために必要か、そして、利益になるか
 
[組織の取組み]
61. (追)登録取得組織が不祥事を起こす理由
−経営トップの空虚なコミットメントが問題潜在化
56. (完)登録取得組織が不祥事を起こす理由−組織の業務能力が難関
53. 登録取得組織が不祥事を起こす理由
−誤った規格解釈と取組み
12. ISO思考停止症の管理者達
11. 規格の意図に沿わない内部監査の落し穴
2. ISOは役に立っているか?
−混迷の実状
 
 <審査登録>
58. 競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出
55. (続々) 登録取得組織が不祥事を起こす理由
−誤った登録審査基準の適用
54. (続) 登録取得組織が不祥事を起こす理由−誤った登録制度統制
52. 混迷を深めるか審査登録制度
−審査のあり方に関するJAB新見解
25. 登録証取得は将来的にも取引継続の保証になるか?
21. 審査のばらつきは受審組織が原因
19. 自治体のISO14001認証登録は税金の無駄遣い?
13. 審査とコンサル分離のJAB 新指針
3. 付加価値のある審査
 
 <支援活動と制度>
50  ISOコンサルタント登録事業打切り
−規格協会、やはり自分のためだった?
48  ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言
−業界広報誌への読者の反乱?
38. 制度に反対する本当の理由
−(その5) ISOコンサルタント登録制度
36. 必要理由が取替えられた訳は?
−(その4) ISOコンサルタント登録制度
35. 何を公平に ”評価” するのか
−(続々) ISOコンサルタント登録制度
33. 理屈の通らない必要理由の説明
−(続) ISOコンサルタント登録制度
32. 規格協会のISOコンサルタント登録制度は誰のためか 
(註) 規格条文引用時の*印はJIS翻訳と異なる筆者のISO英文の翻訳であることを示す。

                             <お知らせ>
次のものは、 "規格要求事項の解釈"セクション の No.6ページ 「システム運用の実務 -定説の誤謬」に移載しました(H18.5.26)
 
41. 是正処置の効果の確認  −実務を無視した解釈
40. 米国産牛肉の輸入全面停止は防げた! ―ISO時事寸評(番外編-2)
39. 毎日実施するマネジメント・レビュー −誤訳と誤解

31.パソコン修理ミス −時事問題でISOを考える(番外編)
30. 経営者に対する内部監査は必要か?
15. 内部監査員は部課長以上であることが必須

 62.  救世主になれそうもないISO9001の2008年改訂(追補)版  
    ISO9001の改訂作業は、実質的に最終段階であるDIS版に達し、今年10月には発行される見込みとなっている。この改訂作業については、ISO規格の見直し規則に則ってとは言っても、2000年版への以降のまだ終わっていない2003年10月にその議論が始まった。時期尚早の意見も強い中、2012年のISO14001との同時改訂を念頭において、最低限の改訂のAmendment(追補版)を2008年に発行するということで、翌年から作業が始められた。途中でISO14001との整合化の議論も2012年のISO14001との同時改訂の話も消滅し、逆にISO9001の改訂範囲拡大の論議が再燃するなど曲折があったが、意図の明瞭化、翻訳性の改善、ISO14001との互換性の改善に限定するという当初改訂方針の通りに、改訂作業が進められてきた。DIS版は通例なら内容はあまり変わらずに今後、FDIS版を経て改訂規格として発行される。
 
  規格改訂は品質マニュアルの改訂作業など基本的に登録取得組織に負担を強いる。2008年改訂への当初強かった慎重論が覆されたのは、それを上回る改訂の必要が認識されたからであろう。改訂の狙いが意図の明瞭化に置かれていることからすると、条文の誤った受けとめが規格運用の効果を妨げていると思われる事情が各国にもあるのだろう。日本では、規格導入の効用に関する登録取得組織の不満や不祥事による登録証への社会の不信が爆発寸前の状況にあり、この根幹には業界ぐるみの上意下達の誤った規格理解と解釈がある。もし2008年改訂に意味を見出すなら、このような恣意的で無原則な条文解釈が許されなくなる明瞭な条文記述に改善されることである。これにより規格運用と登録制度の問題が解消されるなら、規格改訂で生じる組織の負担は十二分に報われる。
 
  さて、公表されたDIS版では、改訂箇所は規格の全51条項の内の24条項に及び、66件の記述の変更があるから、とても小改訂とは言えない。これを分析すると、単なる表現の変更が34件あり、目的が意図の明瞭化にあると認められる記述の変更は32件と半数である。後者でも、確かに現行の表現に不備があり誤解を招かない適切な表現に改められたと考えられる記述の変更は11件のみであり、他の17件の変更には格別の必要は見出せない。問題は残りの4件であり、記述の変更により本来の意図が変更されているから、規格改訂方針に実質的に背いている。しかも、変更は、「監視測定の手段(device)」を「監視測定機器(equipment)」に限定し(7.5.1,7.6)、「作業環境」から人的作業環境を除外し(6.4)、検査合格の証拠の記録は管理しなくてもよい(8.2.4)とするものであり、およそ組織の業務の必要や経営管理の常識を無視した変更である。これらは2000年版が立脚する論理に悖り、効果的な マネジメント の手本としての規格の有用性を毀損する誤った変更と言わざるを得ない。最低限の改訂に留めるという方針を掲げながら半数の条項で合計66件もの変更が行なわれ、しかも有用な記述変更はわずか11件に過ぎない。DIS版が4年もの歳月を掛けて議論を積み上げた結果であるとすれば、如何にも乏しい内容であり、4件の誤った変更と言い、伝えられる改訂作業の曲折や議事の紛糾などと合わせて、この度の改訂作業が規格作成関係者による変更のための変更の議論に動かされていたことを推察させる。
 
   そこで、変更の意味があると考えられる11件であるが、現行版のJIS和訳が変更後の英文に意訳していたので影響がない1件を除くといずれも、日本で誤って受けとめられている要求事項に関係している。すなわち、プロセスの監視測定方法はプロセスの重要性に応じたものでよい(8.2.3)、内部監査の不適合は必要な場合に是正処置をとればよい(8.2.4)ことが明瞭になり、「リリース」が製品の出荷であり次工程送りの意味は含まれない(7.5.1,8.2.4)ことも明瞭になり、現行の余計な形式的業務をとりやめさせるという意味で特に効果的な記述変更である。「必要な力量」の意味を再確認させ、必要な職務遂行力充足のPDCAサイクルの必要を明瞭にした記述変更(6.2.1, 6.2.2 b),c))は、現場要員の業務能力の開発の教育訓練の形式との受けとめの誤りに気付かせるという意味で役に立つ。また、顧客満足の監視の意味の明瞭化(8.2.1)、及び、アウトソースしたプロセスの管理の意味の明瞭化(4.1)も、多くの組織の現実の問題を改善するための道を示すものとして有用である。更に、顧客の個人情報の管理の重要性の指摘(7.5.4)も時宜を得たものと考えることができる。
 
  全体として必要が疑われかねない2008年改訂であるが、日本では特に、登録取得組織には大なり小なり品質マニュアルの記述の変更が必要となるだけで、何の実務上の利益ももたらさないと思われる。なぜなら、 DIS版要点解説は、どの記述変更も単なる表現の変更としかとらえておらず、多少とも効果の出る可能性をもつ11件の変更についても、変更の意義をほとんど何も真っ当に取り上げていない。日本ではこの要点解説が権威をもって認証業界を支配することになるから、折角のわずかな改訂さえも活かされることはなさそうである。その上に、現状の誤解をむしろ許容する改訂が含まれており、更にJIS仮訳には測定機器の校正の識別の表示が必要になる(7.6)というおまけまでついている。 2008年改訂が日本のISO9001規格と認証制度を巡る深刻な問題の解決の救世主になる可能性はまずないであろう。
このページの先頭へ H20.3.4(修 3.6)

 61. (追補) 登録取得組織も事故、不祥事を引起こす理由
             
− 経営トップの空虚な コミットメント が 問題を潜在化させ不祥事に
<新たな不祥事>
  昨年の一連の食品表示の偽装に比べて社会の関心は薄いが、エレベーター強度不足(7月)が偽装かどうかの決着のつかない間に建材耐火性能偽装、型枠強度偽装(11月)が発覚し、今年に入って古紙配合の偽装が、そして先週には再生樹脂配合の偽装が明らかになった。偽装は流行語の域を越え、企業の日常となったかにも見えるほどである。これらの偽装問題の特徴は、製品の性能ないし効能に係わる品質を偽っていた問題であること、いずれもが堂々たる大企業であること、最初に問題発覚した1社だけではなくほとんど業界ぐるみの状況にみえること、不祥事の分野がISO9001からISO14001に拡がったことなどである。多くがISO9001や14001の登録証取得企業であることに言及する報道がないのはISO規格の登録制度の存在の希薄さの反映であろう。
 
<製品品質のためという言訳>
  古紙や再生樹脂配合の偽装の原因説明は、色合いや異物混入など顧客の品質要求に応えるためのやむをえない処置であり、良い品質を供給したのだから問題ないという開き直りを含んでいる。 しかし、企業が顧客に訴え、顧客がそれに共感して買ったのは、古紙や再生樹脂から成る製品であるということである。ISO14001に関して言えば、古紙や再生樹脂の配合は企業の活動が森林破壊や天然資源の消費という“著しい環境影響”の原因となっているとの認識の下に、企業が採用した地球環境責任を果たすための方策である。ISO14001登録取得は、技術的、収益上の困難さとのバランスさせつつ必要な環境責任を果たすという意志表示であり、だから製品を買ってほしいという顧客への訴えである。色合いや異物混入防止が顧客のニーズや期待だから古紙や再生樹脂使用が出来ないなら、それをやめればよいのであり、別の責任の果たし方を探せばよい。
 
   ISO9001で「品質」とは、ものやサービス の特性が顧客のニーズや期待を満たす程度を意味する。この場合、古紙や再生樹脂を配合することが顧客のニーズと期待であるから、その配合程度が品質である。色合いや異物混入防止が品質なら、古紙や再生樹脂の配合も品質である。偽装がばれた企業の品質は良かったという言い訳は成り立たないのである。 配合していないのに配合していると言ったとすれば虚偽以外の何物でもない。日経新聞1月14日号の囲い記事「大機小機」は、刑法の理論上は詐欺罪が成立すると論じている。
 
<経営トップの コミットメント>
  ISO9001、14001は、組織が真っ当に発展するための顧客第一の貫き方、又、地球環境責任の果たし方に関する指針である。しかしこの指針に則る経営を実践することは、収益企業としては必ずしも容易なことではない。 従って、経営に規格の指針を導入せんとするなら、 経営トッフ はこれをあくまでやり通すという揺るぎない決意を固め、自他に約束しなければならない。 規格が トップマネジメントに求めている コミットメント(5.1項/4.2 b),c)項)とは、規格の実践を職を賭してやり抜き通すという覚悟である。やり抜くと言う以上、まして、やらなければ辞任すると言う以上は、あれをやれ、これをやれと号令をかけるだけではなく、ちゃんとやられていることを自身で確信できるところまで確認するはずである。従って、この度の不祥事で大半の経営トップが知らなかったと主張しているのは、コミットメント をしていなかったと言っているのと同じである。 登録証取得が目的化する中で、規格の品質マネジメントシステム、環境マネジメントシステム の大半は現場の品質又は環境の改善運動と認識されて取り組まれている。多くの経営者には両システムに係わる業務が経営者としての自らの責任の不可分な一部であるとの認識がないから、コミットメント が必要とは知っていても その意味の理解は希薄である。どの経営トップも不祥事は遺憾であり、知っていたなら許さなかったと言っているから、これらの内のISO9001、14001の登録取得組織は トップマネジメント の空虚な コミットメント が問題を潜在化させ、結果として不祥事を発生させた。
 
<登録取得組織が事故や不祥時を引起こす第5の理由>
  筆者は昨年、日本で登録取得組織が事故や不祥事を引き起こす理由について考察し、誤った規格解釈と取組み、誤った登録制度統制、誤った登録審査基準の適用、組織の業務能力醸成の困難さの4点を取り上げた。 しかし、この度の新たな特徴を有する一連の不祥事は、経営トップの空虚な コミットメント に立脚する規格取組みという第5の理由の存在を明らかにした。
 
   ISO9001,14001の審査は組織の不正を見破るのが目的ではない。審査は、組織が規格に則って顧客満足第一の又は地球環境への責任意識をもった経営を行っていることを確認することであり、組織が一生懸命やっているから見てほしいと言うのを受けて審査が行われる。不正はないというのが審査の前提である。 審査で コミットメントをどのように確認したかという問題は残るが、善意の組織を審査するという前提に立てば、認証機関を非難することは必ずしも適当ではない。むしろ、この度の一連の不祥事に関しては、企業が不正を認めた時点で直ちに、当該認証機関の能力と審査登録制度への信頼を傷つけた理由で登録停止処分に付すのが筋道であった。このような認証機関の対応は、この第5の理由の存在に対する有効な抑止力になるであろうし、また、登録制度の意義を社会に明確にでき、信頼毀損への影響を少しは緩和できる。認証機関は一時的に顧客(登録取得組織)を失っても、長期的には社会から信頼される認証機関との評価を得て繁栄の道を歩むことができる。
このページの先頭へ H20.2.13

 60.つながる点と線 認定改革IAF案対応のJAB筋書−ISO業界よもやま話
   1月11日の日経新聞は「ISO認証審査厳格化―企業の偽装相次ぎ形骸化批判」という大見出しで、昨年10月のIAFのシドニー会議で登録証の信頼性を高めるために審査方法を見直すことが決まり、国内でも経産省がIAFに先んじた実施を目指して独自に改革案を検討していると報じている。内容は社会の関心事ではあるが、時事ニュースとしてこの時期に報じられることの意味がわからない。しかし、同じ週の7日にはJABが3月に「ISO 9001認証を考える」をテーマに公開討論会を開催し、研究成果「信頼されるISO 9001認証制度」を報告すると発表しており、記事の直後に届けられた雑誌「月間アイソム」では経産省の認証制度信頼性向上取組みの寄稿文が掲載されている。これらが関連を持った動きだとすると、昨年4月の「マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方」というJABの見解発表まで遡って一連の出来事という点が、JABの認定改革IAF案対応という線でつながる。
 
   登録証を掲げる組織が製品 リコール、法規制違反など事故や不祥事を発生させる事例の絶えないことは欧米では10年前から問題になっている。IAFは2001年には問題取組みを開始し、その後さらに拡がる顧客や社会の不信に対して設立した作業班が昨年3月に問題解決のための認定制度の改革案をまとめた。この問題の欧米の認識は、登録取得組織の事故や不祥事発生は認証活動が適切でないのが原因であり、IAFに属さない認定機関の傘下の怪しげな認証機関、格安を売り物にする認証機関、更に、母国の認定機関の監視の目の届かない海外で活動する認証機関による不適切な審査と安易な登録証発行が背景にあるというものである。従って、作業班の提案は、不良認証機関の存在を許さないようにする「認定の有効性の改善」であり、具体策として認定活動の質の改善、不祥事発生に責任があるとわかった認証機関の制裁、他国で活動する認証機関の監視強化、認証機関の価格競争抑制などを挙げている。
 
  これはJABには乗れない話である。JABの考えでは、マネジメントシステムの審査登録は改善することに意味があるのであり、登録証は事故や不祥事の防止とは無関係である。不祥事が出れば認証機関は組織にきちっと是正処置をとらせればよいだけである。IAF提案のように登録組織の不祥事に対して認証機関の責任を問うなら、JABはこれまでの考えが間違っていたことを認めなければならないから面子まるつぶれである。認定機関の認定活動が問題だったというような事は、業界に絶対的な権限で君臨してきたJABとしては口が裂けても言えない。それに、IAF作業班の報告を認めると、今後発生する不祥事の度毎にJABが世間の非難の矢面に晒されることになりかねない。
 
  昨4月13日のJABの認証審査に関する見解発表は、認証機関の認定のための新規格ISO/IEC17021の発行と関連づけられていたが、その中身では制度の信頼性回復とそのための“マネジメントシステムの有効性”の審査がやたら強調されていた。不二家問題など登録証への疑問が拡がる中のその前月の3月には、のんびりと「ISOを楽しむ」というテーマで公開討論会を開いていたのに態度急変である。しかし新見解も肝心の不祥事の防止が必要とは言わず、訳のわからない理屈が並びたてられているだけに思えた。今になってこれがその1ケ月前のIAF作業班報告への反応だったとすると合点がいく。続く4月27日、認証機関の団体JACBは、公表を約束して検討中の環境関連不祥事への審査登録機関としての対応の結果を公開しないことを決めた。これも情勢に逆らう決定で当時は疑問を感じたが、JABのIAF対応策との整合のために迂闊な内容の発表を差し控える意図が裏にあったのだろう。そしてIAFは10月総会で作業班の提案を承認し、具体策検討の新作業班TFを発足させた。JABは11月、認証機関を集めてこの総会の報告会をもっているから、何がしかの因果を含めたのかもしれない。
 
  来る3月の公開討論会でJABは、IAFの改革案を踏まえて、登録組織の不祥事に起因する登録制度の信頼性低下と信頼性回復に関する考えを明らかにするはずである。もし、日経新聞の記事や経産省寄稿文がこの前座として用意されたものであるとすれば、それらの内容から、発表される「信頼される認証制度」の骨子が昨年4月のJAB新見解に沿ったもので、信頼性の回復に何の役にも立たず、一方でJABの権限を更に強めるものである可能性が強い。経産省の改革案もこれにお墨付きを与えるものであろう。点としてのそれぞれの出来事は雑誌や報道記事に基づく事実であるが、それらをつなぐ線は筆者の憶測である。憶測が誤りで線は点のつながりでないのなら、公開討論会でJABは、認証制度の本来の目的に立ち戻ってIAFが行おうとする認定制度の改革の狙いと同じ趣旨の登録証の信頼性回復のあり方を示すことになる。
このページの先頭へ H20.1.20

 59. 泣く子と地頭とJRCA −ISO業界よもやま話
    「泣く子と政府には勝てない」とは、福田首相に呼びつけられ法人事業税3,000億円の召し上げを承諾させられた顛末を説明する石原都知事の記者会見での発言である。威勢のよい日頃の政府への対抗姿勢をあっさり覆すはめになった照れ隠しのために諺「泣く子と地頭には勝てない」がちゃっかり拝借された。ところで、ISO審査員にも、泣く子と地頭以上にどうすることもできない存在がある。日本でISO9001審査員に資格証を発行する権限を独占するマネジメントシステム審査員評価登録センター(JRCA)である。
 
   JRCAの形式主義と官僚的判断と対応に対する不満や不信は、審査員の世界では先達のJRCA創立時期の体験を始め数々の逸話が語り継がれているが、今や1万人を越えるに至った審査員資格保持者の多くにとって自身の体験となりつつある。JRCAは要員認証機関に関するIEC/ISO規格の制定を理由として審査員資格基準を変更し、審査員資格の毎年の維持と3年毎の更新の手続きにこれを適用することを図っている。この移行手続きでさらに多くの審査員が泣かされている。
 
  JRCA NEWS December 2007号によると、新制度での資格維持、更新の申請に対して、2007年7月を例にして申請245件に対してその51%に申請書類の不備があり、追加資料を要求したということである。この数値を見て世間の人々が、JRCAが審査員を厳格に審査していると安心するのか、はたまた、申請書類もまともに書けない頼りない審査員だと不安になるのか、興味のあるところである。しかし、審査員にとっては、蔓延する苦労話の数値による裏付けであり、これほどの異常な事態になお自らを顧みず、理不尽を押し通すという怪物の正体見たりである。
 
   例えば、申請受理拒否の68%がCPD(継続的専門能力開発)の書類の不備だそうであるが、能力開発が不十分というのでなく書き方がまずいということである。記事は記入に関する注意事項を掲載しているが、具体例として例えば、能力開発の目的の記述として「審査員捕である。第三者審査経験はない。自組織のQMSの効率化を高める」では不合格であり、事務局メンバーとして無駄な仕事が増えたという声がある等の前置きの下に、「私自身も…自社のQMSの効率を高める必要性…を感じていたが、実践に移すだけの知識・技術がなかった。そこで今回、効率化のポイントを知ると共に、それを実践する方法を取得する」と書けば合格だそうだ。また、能力開発で習得した事項の書き方として、「食品関連企業の審査に当たっての、…、…、関連法規制」ではだめで、「講師の説明により、…。また、関連する法令について知識を増やすことができた。特に重要な法令は規格項番に合わせて理解することができたので、今後の審査に活用できる」ならよいのだそうだ。
 
  審査員が資格取得後も継続的に能力開発努力を続けなければならないというのがCPD書類の提出を必要とする理由なのだが、能力開発実績が十分でないという理由で資格維持、更新に失敗した話は聞かない。要するに審査員には、「私は….に欠けるところがあり、これを克服するためには…を勉強する必要があり、…の方法で勉強した結果、…がわかりました。これからもがんばります。」とJRCAにご報告する従順さが必要なのである。審査員を高校生程度とみなし駄々をこねて泣く子に目くじらを立てても大人気無いが、それが地頭以上の権力で強制されるのではかなわない。
このページの先頭へ H20.1.7

 58競争を加速する非JAB系審査登録機関の進出
<登録件数推移と認証機関数>
   ISO9001,14001の登録件数が伸び悩みの様相を示して数年になる。JAB統計でISO9001の新規登録は遂に今年1/4期からマイナスとなり、総登録件数が減少し出した。ISO14001も直近の3/4期の総登録件数の増加率は0.7%にまで下がった。審査登録機関(今後は“認証機関”と呼ぶ)の業績も影響を受け、淘汰が始まっている。例えば、JAB認定の認証機関は今月初めでISO9001が52機関、ISO14001が44機関であるが、認定番号にはそれぞれ11件、6件の欠落があるから、この分だけ廃業や合併でなくなったと想像される。しかしこの情勢の中で、海外の認定機関の認定を受けただけでJAB認定を受けずに活動する認証機関が増加している。筆者の調査では、ISO9001で21機関、ISO14001でも21機関もある。登録件数も概算推定で6,500件、1,500件もあり、JAB統計の43,000件、21,000件のそれぞれ15%と7%に相当する。これら認証機関の多くの活動開始が近年であることも踏まえると、日本の登録件数がJAB統計ほどには衰えていないこと、また、それでも飽和しつつある市場にJAB統計の1.5倍もの多数の認証機関がしのぎを削って既存登録を含めて登録組織を奪い合う状況であることが推察できる。
   
<適合性評価事業の特質>
  適合性評価という事業は元々競争の余地が小さい。製品たる登録証は規格適合の証明であるから、どの認証機関が発行する登録証も価値は同じである。その上に認証機関の活動に関する国際的基準があり、通常各国にある認定機関、日本ではJAB(日本適合性認定協会)、が認証機関の登録証発行活動と登録証の価値を一定のものとする枠組みが確立している。更に、各国の認定機関はIAFなる団体を結成し、その下での多国間相互承認協定により登録証の価値の世界的整合が図られている。製品の価値に差をつけようがないのである。
 
<非JAB系認証機関の活動の特徴>
   非JABの認証機関はほとんどが外資系で母国の認定機関の認定を受けている。ほぼ一様にその国際的活動と実績を強調し、日本企業の輸出先で認定を受けていることを強調するものもある。しかしこれは国内だけの企業に対しては逆に弱みとなる。一方、日本独特の規格解釈や認証制度理解に関しては、筆者の経験で判断する限りはJAB傘下の認証機関と変わることはない。審査がJAB枠組みの下の日本人審査員によって行われるから当然であり、従って登録証の信頼性という点でも非JAB認証機関に格別の競争力がある訳ではない。競争力があるとすれば、受審組織を顧客とみなす政策にあるようで、例えばJABが事実上禁じている予備審査も行っている。この線上かどうか、低価格を堂々と掲げる認証機関も少なくない。実際に筆者も驚く価格水準を一度ばかりか体験させられた。
   
<価格競争>
   差別化が困難な認証事業界では、市場が狭まり顧客の奪い合いになると価格勝負が一番手っとり早い。米国では既に価格競争に陥り、IAF枠組みの認定を受けない認証機関や、認定機関の認定を偽装する認証機関まで出ており、格安料金を売物とする認証機関による安易な登録証発行など、混乱する状況が各種情報に垣間見られる。登録証の取得と維持が組織の唯一の関心事であることが大半である日本の状況では、安価で手間を要せずに発行される登録証は殊更、魅力的である。非JAB認証機関の筆頭のM社は「審査費用の低廉化、顧客の納得の審査料金」を掲げる一方で、2009年末での業界一のシェア獲得を宣言している。この目論見通りだと全登録の20%強の登録証を発行する認証機関となるから、その価格政策が認証市場全体に強い影響を及ぼすことは必至である。
 
<まとめ>
   登録証の信頼性の議論は、引き続く品質、環境の事故や不祥事に加えて、激化する低料金審査競争の中に埋没し、忘れられることになるかもしれない。一方で、認証機関の激しい競争で登録取得のハードルが下がって、登録取得が小規模組織に拡がり、やがて認証制度は登録証で社長室の壁を飾ることを目的とするものになっていくのかもしれない。登録証への信頼が失墜している今こそ、顧客や利害関係者を裏切らない保証としての登録証を発行できる能力が認証機関の競争力となり得るし、それなら、安売り競争で身を削ることにもならないと思うのだが、どうであろうか。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-58>

 57.  “要求”か“必要”で大違いの規格取組みと成果
                −五度、“要求事項”の問題点を論じる  
<“要求”か“必要”か>
  ISO9001/14001の規定は日本では、“規格の要求”である。 これはJISが規格の標題や規定にあるrequirement を「要求事項」と和訳したことに関係していると思われるから、この解釈は英語圏ではあり得ない。なぜなら、requirement は、必要条件、必要事項の意味であり、ISO9000の定義でも「ニーズ又は期待」である。即ち、規定は “要求”ではなく“必要”なのである。
 
<“要求”と“必要”で異なる規格取組み>
規格が「・・すること」ということを行うのだから、“必要”でも“要求”だからでも変わりはないとも言えないことはない。しかし現実には、“要求”と“必要”とでは規格取り組みを決定的に異なったものする。これを、同一事項にもかかわらずISO9001とISO14001とで規定の表現が大きく異なる4つ条項を取り上げて検討したい。
 
(1) 計測機器の管理
  ISO9001(7.6項)では計測器管理の規定はJIS規格書で17行にもわたるほどに詳細だが、ISO14001(4.5.1項)では「校正又は検証された監視及び測定機器が使用され、維持されていることを確実に・・すること」と一言である。“要求”であるからISO9001の登録審査では、校正の基準の計量標準、校正有効期限の標識、保管状態の他、校正不合格の場合の過去の測定結果の評価や処置の実績まで詳細に確認されるが、ISO14001では大抵は校正管理台帳の記録があれば良しとされる。ISO9001の規定は測定値が正当で必要な精度で得るための計測器管理の必要条件を示しているが、ISO14001の測定値はどうでもよいということはない。法令で報告義務がある測定値に係わる計測器が校正で異常と判定された場合に当該測定器を取替えるだけでは虚偽報告の罪に問われることもあり得る。ISO14001ではそこまでは“要求”されていなくとも、それも“必要”なのである。
 
(2) 外注の管理
  業務を外注した場合、供給者の業務実行や組織が受取る製品は必ず組織の必要を満たしていなければならず、或いは、組織の必要や許容範囲を逸脱しては困る。これを確実にするISO9001(7.4項)の規定は、3つの亜条項、JIS規格書18行に及ぶが、ISO14001(4.9項)では「著しい環境側面に関する・・・手順及び要求事項を伝達すること」とこれも一言である。要求の明確化と文書による伝達、受入れ検証、供給者の業務能力の管理などのISO9001の詳細な規定は、供給者に確実に要求を満たさせるためにはこれが必要であるということを示している。ISO9001の登録審査ではこれらの実施を“要求”として詳細に確認されるが、「伝達」が“要求”であるISO14001では供給者への要求の一覧表の確認程度で済まされる。しかし、例えば深刻な公害の原因となる工程を外注した場合、供給者の不始末による法規制違反や発生させた公害に対して社会は組織を免責しないから、実際には“伝達しました”では済まされない。ISO14001ではそこまでは“要求”されていないが、組織はISO9001の規定を参考にして「伝達」したことが確実に順守されるように供給者を管理することが“必要”である。
 
(3) 法令順守
  ISO14001は条項「法的及びその他の要求事項」を設けて(4.3.2項)、組織の製品・サービスと業務に適用される法令を特定し、必要な時に参照できるようにし、それらをどのように適用するかを決定する手順を確立し実行するよう規定し、更に、これらの法令の順守を確実にするための「順守評価」(4.5.2項)とそのトップマネジメントによる確認 (4.6項)を規定している。法令順守の大切さは同じなのにISO9001では「製品要求事項の明確化」(7.2.1項)の中に「製品に関連する法令・規制要求事項を明確にすること」を記述するだけである。登録審査でもISO14001では、関係する法令と条文を記した一覧表を提示させ、抜けがないか、法改正が反映されているか、どのように適用され、実際に順守されているかが確認されるが、ISO9001では品質マニュアルに現在適用されている法令が記述されていればそれ以上は聞かれない。しかし、取組み組織が法令違反をして顧客の離反や行政、刑事罰を被るのを避けたいなら、ISO9001では“要求”されていなくともISO14001並みの手順が“必要”である。
 
< 結論 >
  規格の規定requirementを“要求”と受けとめるか“必要”と受けとめるかで、規格の解釈が本質的に異なり、規格取組みとその成果に決定的な相違をもたらす。“要求”と受けとめ、規格の文面を追うだけの規格解釈で、書かれてあることだけ行うという規格取組みでも、登録証を得ることはできる。“必要”と受けとめ、規格の規定の意図や趣旨を斟酌する規格解釈で、書かれてなかろうが必要なことを行うという規格取組みでは、規格の狙いである顧客満足の向上ないし地球環境保全責任の全うを実現し、事業を発展させることができる。ISO9001,14001に限らずISOマネジメントシステム規格はいずれも、組織がそれぞれの観点で不祥事を出さず、顧客や利害関係者のニーズと期待に応えるための当該分野の世界最新の論理を示すものである。日本ではISOマネジメントシステム規格についての社会の不信に加えて、少なからずの組織がその効用に疑問を抱いている。しかし、これは規格の性格と目的への無理解から規格解釈を誤り、誤った規格取組みをしているからであって、規格の論理が誤っているからではない。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-57>

 56. (完) 登録取得組織も事故、不祥事を引起こす理由
              −組織の業務能力醸成が最後の難関
<登録取得組織の事故、不祥事発生の理由>
  日本でISO9001,14001登録取得組織の事故や不祥事が相次ぎ起きるのは、 誤った規格解釈、規格取組みを背景とし、誤った登録制度統制が根本原因であり、誤った登録審査基準の適用が直接原因である。それなら、これらがすべて改められれば、事故、不祥事が起きなくなるのであろうか。事はそんなに簡単ではない。
 
<業務の効果的実行>
  規格に則って組織が業務を行えば、製品品質又は環境保全に関して利害関係者のニーズと期待を満すことが出来、逆に、利害関係者の想いを裏切る事故や不祥事は起こさないようにできる。しかし、規格が示すのは業務の在り方であり、規定はrequirement(必要条件)であり、「効果的に、適切に業務を行うこと」と言うだけで、規格が業務を行ってくれるのではない。 業務を効果的に実行する業務能力は組織自身で育み、醸成しなければならない。規格では、この業務能力も「資源」であり、要員には力量がなければならず、ものごとをやり通す意志と責任感につながる「認識」「自覚」をもち、トップマネジメント 初め管理者には職責を全うすることに職を賭す覚悟、つまり、コミットメントが必要だと言っている。装備力や資金も必要であると言っている。これも組織がやらなければならない。特に人的資源に限界がある中小規模企業では容易でない。
 
<事故、不祥事の防止>
  諸業務を効果的に実行しなければ、規格の狙いは達成できず、事故や不祥事を防ぐことはできない。相次ぐ登録取得組織の事故や不祥事よる規格と審査登録制度への信頼低下は、欧米でも関係者の深刻な問題である。この議論の日本との違いは、登録取得組織が事故や不祥事を発生させること自体を問題とし、その原因を登録審査での組織の業務能力の評価、或いは、業務の効果的実行の判断の不適切さに置いていることである。正に業務能力の不足が事故や不祥事の原因なのである。
 
  組織は規格に則って業務を行い、登録証を維持するのには相当な資源を投入している。これは一般に業務の効果的実行に十分な資源とは言えない。しかし、この資源ないし業務能力を事故や不祥事防止に集中投入する、すなわち、事故や不祥事の発生の阻止に焦点を当てて品質又は環境マネジメントシステムの諸業務を行うべきである。事故や不祥事の発生は組織の経営を危険に晒らすから、その防止は組織の最重要事である。但し、今日のJAB統制下の審査登録の論理との相当の軋轢を覚悟することが必要ではある。
 
<結論>
  登録取得組織が事故や不祥事を引き起こす原因と背景を改めても直ちには事故や不祥事がなくならない。規格に則って業務を効果的に行えば事故や不祥事を防止できるが、効果的に業務を行うことができるかどうかは、組織の業務能力の如何によるからである。登録証を取得すれば事故や不祥事を効果的に防止できるとの期待は、登録証はそんな意味で発行していないとの審査登録業界の見解と同じ程度に不適切である。
 
<総合結論>
  ISO9001,14001の目的には、組織が事故や不祥事を発生させて経営破綻に追い込まれることを防ぐことが含まれ、規格にはその発生防止を図る要件が適切に規定されている。また、このような組織の能力と実態を保証することも審査登録制度の目的であり、IAFの定める登録審査基準では事故や不祥事の発生が懸念される組織の業務状況に対しては登録証は発行できない。しかし、規格は、事故や不祥事の発生防止を含む最新の効果的な経営管理の在り方の世界標準を示す情報媒体であり、規格を学ぶことと規格の教えを実行することとは別問題である。組織が規格の示す要求事項を効果的に実行する業務能力を育み、確保することは容易ではない。事故や不祥事を発生させないための最後の難関は、組織の業務能力である。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-56>

 55. (続々) 登録取得組織が不祥事を起こす理由
                     −誤った登録審査基準の適用
    日本では ISO9001,14001登録取得組織の事故や不祥事報道を契機に、審査登録機関は「認証・審査の有効性の向上」や「社会財として真に社会に必要とされる方向性を探る」を掲げるが、事故や不祥事の発生防止と登録証との関係は従来通り否定している。
 
  登録審査は適合性評価の一種で、 マネジメントシステムを「ある規格、規制又は仕様に対して評価すること」であり、この評価活動が審査である。審査では監査証拠を評価して当該の「監査基準が満たされている程度を判定」し、適合か不適合かの監査所見及びそれらを総合しての監査目的に対する適否の監査結論が出される。登録証発行可否の監査結論の合否判定基準は、JABも一員の国際的枠組みIAFが指針として定め、JABも審査登録機関認定の基準に採用している。
 
   これによると「1つ以上の要件(要求事項)を欠き、又は、実施、維持されていない*」状況、又は、「組織が供給する品質」ないし「組織の方針、目標を達成するEMSの能力」に「深刻な疑念が惹起される」状況は不適合と見做される。規格の品質、環境マネジメントシステムは、事業継続にどのような顧客満足の製品或いはどのような環境改善が必要かを品質、環境方針に明確にし、その実現を図る業務体系である。方針は一般には改善に関するが、事故や不祥事のような事業継続に悪影響を及ぼす問題は起こさないことを暗に含む。IAF指針の趣旨は、不適合とは個々の業務に問題があるか否かではなく、システムとして問題があるかどうかであり、システム不全がもたらす品質又は環境方針に背く意図しない事態、例えば、事故や不祥事、が生じる深刻な疑念があれば登録証は発行しないということである。
 
  海外でも登録組織の品質事故による登録証の信頼低下が問題視されてきた。しかし、今日の議論は、IAF枠組み外のいわゆる非認定審査登録機関による安価、安易な登録証発行、及び、未熟な審査員による安易な監査結論を問題視するものであり、ISO9001の登録証は「組織が良い品質の製品、サービスを提供することの証明」というような考え方が基本となっている。また、登録否定の条件としてのシステム不全の概念や システム不全が疑われる状況について、例えばISO、米国の審査登録機関の団体IAAR、欧州認定機関協力機構が見解を発表している。このように海外では、IAF指針の則った登録証と事故や不祥事の発生との関係の論理が確立し審査が行われている。それでも事故や不祥事が発生している。
 
  日本では登録証は「不祥事が発生した場合でも根本原因究明から再発防止が確実に行われるということの保証」に過ぎず、事故や不祥事の発生防止は審査の目的にはない。この考えのIAF指針との整合性については説明がないのであるが、説明できずにこの考えで登録証が発行されているのなら誤った登録審査基準が適用されていると言わざるを得ない。そしてこれが、登録取得組織も事故や不祥事を引起こす直接的原因である。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-55>

 54. (続) 登録取得組織が不祥事を起こす理由 −誤った登録制度統制
   ISO9001,14001登録取得組織の品質、環境の事故や不祥事の発生に対して、審査登録制度を司る日本適合性認定協会(JAB)は問題意識は持っても、発生に対する責任を完全否定している。このJABの主張は果たして、規格とその適合性評価制度の国際的枠組みに照らして正当なものかどうかを、ISO9001を例に検証したい。
 
  品質保証規格と二者監査の始まりは1959年制定の米国の軍事規格MIL-Q-9858と言われるが、やがて1970年代、欧州諸国では顧客企業が独自に品質保証活動の規範を定めて供給者に順守を求める二者監査が拡がり、各国ではこれの統一のために品質保証規格がそれぞれに制定された。これら品質保証規格の中身は供給者がこれを順守すれば不良品が納入されないと顧客企業が考える供給者の業務方法を定めたものであり、顧客企業は供給者が規格を順守することを物品購入の条件とし、これを監査で確認して供給者を選定し、以降も業務遂行を監視した。
 
  1982年、英国政府は企業の品質競争力の向上の手段としてこのような性格の品質保証規格のひとつBS5750の適用を企業に求めた。同時に規格への適合を確認し、当該企業が不良品を出さないという業務能力を有することを未知の顧客に保証する第三者監査制度を推進した。国際貿易促進の観点から1987年に国際規格化されたISO9001シリーズ規格は、契約当事者間の二者監査への適用が主眼であったが、1989年のISO適合性評価委員会年次総会の決議によるISOマネジメントシステム規格の審査登録制度の国際的枠組みの確立を経て、1994年改訂で第三者監査への適用が明確にされた。
 
   MIL-Q-9858に遡る不良品の出荷防止に関する考え方と手法は、欧州各国規格、BS5750からISO9001の各版へと追加、強化されてきたが、2000年版は1980年代の成功企業の体験を反映した現時点における最も効果的な品質保証マネジメントの規範であると考えられている。このISO9001の審査登録制度の国際的枠組みは、知らない企業同士の取引において組織が「必要な品質の製品を供給できる」という「安心感」を顧客に提供することが狙いである。登録証は国際的 サプライチェーンの中で「組織が異なる国に存在する供給者を選択する」指標として使用されるものであるが、そのような指標たり得るのはこの安心感の故である。従ってこの安心感とは、顧客がこんな不良品を受取らされるのなら取引したくないと考える水準や程度、種類或いは頻度の不良品は出荷されることはないという安心感であると言える。
   
   一般に、事故や不祥事と言われるのは、“組織”たる企業の製品品質又は品質関連業務に関して顧客ないし消費者が強い不安や不満を抱く事柄の曝露であり、過去の多くの事例では実際に顧客離れが起きている。取引開始の段階でこのようなことが予測できれば、顧客はそのような企業や製品を選定しなかったはずである。顧客は普通、不良品絶無は期待しないまでも、著しい品質不良なかんずく新聞種になるような品質事故や不祥事の発生の恐れのないことは期待して企業や製品を選択している。この顧客の淡い、しかし、切実な期待を正当な安心感までに高めるのがISO9001と審査登録制度の本来の趣旨である。
 
  JABは、審査登録は不祥事発生のないことの保証ではなく、不祥事を発生させた組織に再発防止処置をとらせることが審査登録の趣旨であるという立場である。この程度の安心感で顧客が初めての取引、とりわけ国際取引の決断をするとJABが考えているとは思えないが、その主張が国際的枠組みの意図する「安心感」との関連で語られ、正当であることが説明されることはない。これに関連するISO9001は“顧客の要求”であり、審査登録制度は“社会制度”であるとするJABの説明も、それなら顧客が何のために要求しているのか、社会を何から守るのかの説明を欠き、そもそも、このような考えが規格と審査登録制度の国際的枠組みの論理のどこから出てくるのかの説明もない。業界権威層の論理性を欠く説明を何事も鵜呑みにし、自在の断片的論理の権威主義で以てJABが司る国際合意に悖る誤った審査登録制度統制が、登録取得組織も事故や不祥事を発生させる根本原因である。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-54>

 53. 登録取得組織が不祥事を起こす理由 −誤った規格解釈と規格取組み
<続発する事故、不祥事>
   ISO9001/14001の登録取得組織が品質或いは環境に係わる事故や不祥事を引き起こして、規格や審査登録制度への社会の不信が高まっている。そのような組織にも規格適合性の登録証が発行されるなら、規格や審査登録制度とは何なのかというのが、社会の正直な疑問である。なぜなのか考えてみる。
   
<規格制定の目的>
   ISO9001などの品質マネジメントシステム規格は、品質で遅れをとり競争力を失った欧州諸国が日本製品と同じような良い品質の製品をつくるための企業の業務指針として作成された。一方、ISO14001は持続的発展の原理の下で事業組織の地球環境に対するふさわしい責任の果たし方の指針である。どの組織も顧客に製品を買ってもらうことで成り立っており、事業遂行には顧客はじめ、消費者、市場や地域社会、一般社会、金融機関、投資家、法律(官公庁)など広い利害関係者の支持が必要である。組織が事業を維持、発展をさせたいなら、顧客やその他の利害関係者のニーズと期待を満たす製品を提供することが必要であり、ニーズと期待を満たすように事業活動を行うことが必要である。組織がISO9001、ISO14001に則って業務を行えば、組織と製品は顧客やその他の利害関係者に受け入れられ、支持され、顧客等利害関係者からそれぞれの利益を受け取ることができる。逆に、組織が業務で規格の規定を逸脱することは、顧客等利害関係者のニーズと期待を裏切ることを意味し、或いは、裏切る結果を生ずることになり、組織は利害関係者の支持を失う。
 
<規格の事故、不祥事防止能力>
   両規格の規定がこのような現実の効能を有していると考えることができるのはなぜだろうか。ISO9001は品質で成功した世界の企業のマネジメント活動の優れた考えと要素を採入れたものであるとISOは、説明している。 すなわち、1970〜80年代に品質で世界を席捲した日本の輸出産業のマネジメント にも習ったものであり、組織が規格に則って業務を行えば当時の日本企業と同じ成功を納めることが期待できる。また、ISO14001は、国際合意の地球環境責任を果たすための、環境影響削減の方針、目標を適切に設定し、その実現を図る取組みを規定している。そして、このためのマネジメント の諸業務のあり方についてはISO9001の考えと要素を共有している。どちらの規格のその有用性は実績で証明されていると信じてよい。
 
   例えば、耐震性偽装マンションの販売事件(H17.11)では、ISO9001が規定する建築基準法の確実な適用(7.2.1 c))と適用されたことの確認(7.5.2, 8.2.4)、外注設計士が正しく設計を行うことを確実にする管理と確認(7.4)がどのようになっていたのかであり、賞味期限切れ原料牛乳の使用など不二家のずさんな品質管理の実態曝露事件(H19.1)では、ISO9001は原料牛乳の使用基準の明確化、確認 (8.2.4)の必要、基準はずれの場合にとるべき処置(8.3)、更にはこれらの記録の維持(4.2.4)を規定しており、管理者が責任及び権限を完遂(5.5.1)しておれば起き得ない事態である。JFEスチール、神戸製鋼、日本製紙の環境測定データ捏造事件(H17.2,5, H19.7)に関しては、ISO14001は法令など規制に関して遵守状況を責任者が定期的に評価し (4.5.2)、トップマネジメント がこれを確認すること (4.6 a))になっており、他社の経営の意に反する 改ざん事例が自社で起きないようにする予防処置(4.5.3)の手順を規定している。パロマ工業鰍フ湯沸器による死亡事故多発が発覚した事件(H19.1)では、子会社たる販売会社を顧客とし、且つ、修理保全サービスを適用除外とするなど、ISO9001の意図を逸脱した取組みしかしていない。
 
<事故、不祥事の発生の理由>
  上記の不祥事の例でもわかるように、規格は品質事故、環境事故或いは不祥事を起こさないような管理を的確に規定している。不祥事が発生したのは、これらの組織が規格の規定に則って業務を行ってこなかったからである。日本では、規格の規定を“要求事項”と呼び、その「〜すること」と記述されている事項は“規格の要求”である。組織は審査で不適合だと言われないように“要求”を満たすことを考え、そのように“要求”を満たすよう業務を行う。何のための「〜すること」かを考えない。これが登録取得組織が事故又は不祥事を起こす理由である。
 
   組織が成長、繁栄を望むなら、「〜すること」を審査員の顔色で判断するのなく、これで事故や不祥事を起こさないで済むかどうかで業務のあり方を決めなければならない。出来るか出来ないかとか、大変だとかいう問題ではない。なぜなら、事故や不祥事を起こした組織は、イメージの失墜、生産縮小、競合組織の傘下入り、破産等の重いツケを支払わされるのである。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-53>

 52. 混迷を深めるか審査登録制度−審査のあり方に関するJAB新見解
    JAB(日本適合性認定協会)は4/13、ウェブサイトに「マネジメントシステムに係わる認証審査のあり方」という声明を発表した。これは審査登録機関認定の基準が、ISO/IEC Guideから 新規格ISO/IEC17021に変わることに伴うJAB認定基準の改訂作業に係わる見解の表明である。声明は不祥事で揺れる制度への信頼回復を旗印にしており、反対意見を封じ籠めて今後のJABによる審査登録機関の統制に新見解を押しつける意図が汲み取れる。
 
  声明を斟酌すると登録制度に対するJABの問題意識は、各種のISOマネジメントシステム規格のシステムが“有効に機能していない”が、それは各システムが組織の“本来業務(ビジネス)”と異なる別々の仕組みとして構築、運用されていることに原因があるということのようだ。そして、規格要求事項にばかりに囚われ、また、各審査員の専門知識に深入りした登録審査がこれを助長してきたと見ている。よって、現状を改めるためには登録審査を“ビジネス全体の視点からの審査”とし、“マネジメントシステムの有効性の審査”としなければならないというのが結論である。
 
  一方で声明は、“有効性の審査”の必要の根拠を新規格の序文の記述に置き、「認証はマネジメントシステムが『a)規定要求事項へ適合している、b)方針、目標を達成できる、c)有効に実施されている』ことを実証するものである」という記述を引用している。しかし、これが“有効性の審査”であるというなら、これまでも“有効性の審査”であった。第一に、ISO9001,14001両規格とも“一般要求事項”として「マネジメントシステムを確立、文書化、実施、維持、及び、有効性を継続的に改善すること」と規定し、これを含むすべての要求事項に関する審査の結果が登録証である。それに、JAB認定基準(R300:G.2.1.2)も登録の条件を「組織が品質マネジメントシステムを効果的に実施かつ維持していることを実証するものでなければならない」と明確に規定しているのである。制度への信頼性の本当の問題は“有効性の審査”であるかどうかでなく、“登録証の有効性”を社会が“事故、不祥事を起こさない”ことと期待するのに対して、JABの率いる業界が“事故、不祥事の場合に再発防止処置をとる”ことだとしていることなのである。知ってか知らずかJABの声明はこの本質問題を棚上げしたまま、加えて、声明の“有効性の審査”がこれまでの審査とどのように違うのかも説明しないで、信頼回復のためにこれからは“有効性の審査”だと言っている。これでは信頼回復が図れるとは到底思えない。
 
  声明は“品質の推移”や“環境パフォーマンスの変化”を審査しなければならないとし、“ビジネスの流れに沿った審査”“プロセスアプローチ的審査”“付加価値のある認証サービス”“規定要求事項への適否確認に終わらない審査”の必要をも唱えている。これらに関しても、例えばパフォーマンスの向上がどの程度以下なら不適合とするのかなど、審査にこれら見解を適用するのに必要な説明はない。また、製品や環境パフォーマンスの改善は規格の「要求」ではない、審査で確認する要求事項に抜けがあってはならない、コンサルティングと見做される審査の指摘は厳禁というようなこれまでのJABの統制を変更するのかどうかについても触れていない。
 
  このようにJABの新見解は論理性に乏しく、制度の信頼回復の道筋も見えない。内容は抽象的で判断基準が示されていないから、新見解の運用はすべてJABの胸先三寸ということになる。審査登録機関はJABの意向をあれこれに慮り、審査へのあれこれの形式を審査員に求め、審査員はこれを確認するあれこれの証拠の提示を求めるから、受審組織にはあれこれと余計な形式的な業務がまた増える。JABの業界支配力の強まりと裏腹に組織の困惑と悲鳴が大きくなり、不祥事は続き登録証への信頼の低下は止まらない。ISOマネジメントシステム規格の審査登録制度のこんな明日は見たくない。
このページの先頭へ 詳しくは<sub62-01-52>

 51. 不二家再建の道筋狂わすISO9001登録停止の決定
        −時事問題でISOを考える(番外編-3)
   5/2の新聞各紙は、洋菓子大手の不二家がその菓子3工場などに対するISO9001登録の一時停止措置を受けたことを報じている。1月の“ずさんな品質管理”の実態の発覚後の臨時審査で指摘された8件の不適合に対する是正処置の5件を審査登録機関SGSジャパンが不十分と結論づけたとのことである。実際には既に登録は停止状態にあるから、その解除とならなかったということであろう。これはJAB認定の基準に準じた所定の手続きに従ったもので、現行の審査登録制度の枠組みでは正当なのであろう。
 
  これによりISO9001再登録を条件にしていた大手小売り数社は取引再開を見送り、不二家は当てにしていた再建の道筋を狂わされた。SGS社もこの情勢を知っていたはずだから、決定はISO審査が情実に流されない、公正なものであることを社会に示したとも言え、また、登録証を裏切った組織にはちゃんと制裁を加え、実効ある再発防止対策をあくまで追求する姿を見せたとも言える。SGS社や業界にはこの決定が審査登録制度への社会の信頼回復に与ればとの想いがあるのかもしれない。しかし、社会が審査登録に不信を抱いたのは、社会制度であるなら品質事故や不祥事を出さないよう企業を監視すると期待していたのに、不祥事が発生したからである。不二家に裏切られた感情はあっても、だからと言って社会が今の不二家に登録停止の制裁を加えることを望んでいるとは思えない。消費者や小売り各社の期待は、再審査が購入又は販売の再開に必要な安心の保証をもたらすことではなかったのだろうか。
 
   また、登録証は組織にとって、品質関連業務がISO9001規格の要件を満たして実行されており、出荷する製品の品質に安心感をもってよいということについての第三者による客観的な裏付けである。半年前の審査で裏付けを得たのに、不祥事の報道が出た途端に数々の不適合指摘が出され是正した上でなお登録が拒否されたことに対して 組織に困惑があっても直ちにはおかしいと言い切れない。然るにSGS社は経緯を顧みた形跡なしに、再登録に藁にもすがる思いの組織に対して大向こうを意識した登録停止処分を、しかも問題発覚後3ケ月にして、言い渡した。これが業界の日頃標榜する“経営に役立つ審査”なのだろうか。
 
  多くの小売り各社が販売を再開している状況の中でのこの度の決定は、買っている消費者に不二家製品の品質は安心できないという警告になることも意識されていないようだ。関係者の間で利害の対立する影響の大きい微妙な決定には、審査の経緯や結論に関しての説明があってもよい。しかし、一時停止については「公表する必要はない」とのJABの基準のまま、SGS社は口をつぐんでいる。
 
  この度のSGS社の決定は、審査登録機関の論理や制度の基準を満たしていても、組織と社会の利益に資するのが目的の審査登録制度の趣旨に適うものとは思えない。不二家の再建の道筋を狂わし、社会の販売再開の期待に冷水を浴びせ、既に購入を再開した消費者には品質不安を匂わした。再開された販売は続けられるから、これは逆の意味での審査登録制度への露骨な不信表明である。再審査の一連の経過は審査登録機関の論理に忠実であったが故に、社会の審査登録制度への信頼を回復するのでなく、信用を失う方向に作用したように思える。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-51>

 50. ISOコンサルタント登録事業打切り  −規格協会、やはり自分のためだった?
   日本規格協会は、公益を謳い“標準化団体の責務”だとして始めたISOコンサルタント登録事業をわずか1年半しか経たない3月末に打切った。筆者は、ISO9001規格登録制度の機能不全の現状への対応を理由にしたこの事業の開始に反対した。それは、機能不全の原因が一握りの指導層がすべてを決めて関係者をこれに従属させる権威主義とこれを実践する統制の仕組みにあり、この事業はコンサルタントに管理の網を被せ、同時に管理機関が事業益を得るというお決まりの統制構図に合致するもので、機能不全の更なる進行に繋がると考えたからである。
 
   規格協会は打切りの直接理由として、コンサルタントの登録も組織の利用も少なくて、「事業継続に必要な資源が社会への貢献度に見合わない」と判断したことを挙げている。つまり、儲からないからやめるとのことである。同協会の“公益を担う責務”を考えると無責任な、あり得ない所行であるから、やはり、機関益が目的で、公益や責務は口実に過ぎなかったと考えざるを得ない。
 
   さて同協会は、登録コンサルタントを集めて合計4回の研修会を開催した。これは、能力あるコンサルタントの提供という事業目的の推進のために、既に組織に紹介するに足る能力があると認定した登録コンサルタントにも更なる能力向上を求める機会であるのであろう。しかし、研修会のテーマは、「役に立つ内部監査」とか「組織の違法行為防止」という通俗的話題と幾つかの規格条項の解釈である。これは業界指導層の思惑に沿うテーマであっても、コンサルティング能力とは全く関係がない。しかも、いずれの研修会もグループ討議と発表という形式であるが、業界著名人が“メンター”として討議と結果を指導し講評し結論をまとめている。自立して職業を営むコンサルタントの更なる能力開発は、拠って立つ専門知識について先生のお説を拝聴し、導かれて、学習することなのである。業界指導層の認識では、“一定の基準を満たすコンサルタント”とはこの程度の人間であり、業界ではこのように従属的な何事にも無批判な人間が期待されているということである。
 
   因みに審査員についても例えば、毎年の資格維持手続きにおいて“専門能力の継続的開発”の実績報告を求められるが、これには自身の強みと弱みを明確にし、何を目的に何を習得したかを500〜1000字にまとめた文書を提出しなければならない。まるで高校生の夏休みの自習のレポートであり、審査員も子供扱いである。日本のISOマネジメントシステムの適合性評価制度では、この程度のコンサルタントが組織を指導し、この程度の審査員が審査しているのである。
 
   事業打切りの発表で、「社会的要請は強くないと判断せざるを得ない」と言い訳けしているが、もともと社会が要請したものではなく、自身が社会のために必要と理屈をつけて始めた事業である。理由の説明が変転するなど作られた必要性に立ち、紹介するコンサルタントの業務能力の何を保証するのかも説明できない事業がうまくいかなかったのは不思議でない。しかし、事業の失敗がこのような正当な理由ではなく、管理されることに慣れて強制されないことへの関心を持てない多数の個人のコンサルタントによる無意識の無視が主因であるとすれば、業界の問題の風土の改善の端緒にもならない。ともあれ、この騒動は、業界の権威的風土とその中でプロの個人が制度の枠組みで子供扱いされているという事実を社会に垣間見せるという思わぬ“社会的貢献”を演出した。
このページの先頭へ H19.4.12(修 4.13)

 49. ISO登録証の有効性への疑念報道 −不二家品質不祥事
   不二家洋菓子工場の期限切れ原料使用の問題は、全社的なずさんな品質管理を浮き彫りにするまでに発展し、経産相が同社取得のISO9001に関する疑念をJAB(日本適合性認定協会)にぶつけたと報じられるに至った。不祥事報道はこれまでも少なくないが、登録取得との関係に直接言及されたのはほぼ初めてであり、それだけに業界の危機感は強く、対応も迅速である。
 
  まず、JABは声明を発表し、不祥事の報道があった場合の審査登録機関とJABのとるべき制度上の対応処置を説明し、当該審査登録機関のSGSジャパンもこの手続きを実行中と発表した。JACB(審査登録機関協議会)も会員機関に向けて、「不祥事が起こった際の適切な対応も審査機関の社会に対する重要な義務である」とし、各機関が認証・審査の有効性の向上に主体的に取り組むことを求める声明を発表した。
 
  JAB声明は、民間の制度であるので国の指示を受ける謂われはなく、不二家の再審査など言われなくともやっているというもので、JACB声明は「ISO認証の有効性及びISO認証制度の信頼性が問われている」との認識を示して少しはまじめだが、制度上の対応処置の実行以上の内容はない。しかし、報じられる経産相の要請が実際にあったとすれば、監督官庁の立場からではなく、ISO9001登録組織がなぜ品質不祥事を起こすのかという一般消費者の率直な困惑や疑問を代表したものであろう。
 
  そもそも、ISO9001は品質保証の国際標準であり、「品質保証能力を実証する場合」に適用するのだとJIS解説は説明している。そしてJABは、審査登録機関認定基準において「組織が供給している製品の品質に重大な疑いを生ずる状況」を「不適合」とすべきことを規定している。登録証は審査で当該組織の「製品の品質に重大な疑い」がないと判断された結果であり、登録証のJABマークはそのような審査と判断基準で登録証が発行されているとのJABの判断て証拠である。これが審査登録制度の論理であるなら、経産相の疑念と要請は理に適っている。不祥事の露顕に際しては、なぜ「疑いがない」と判断したのかという審査の判断の適切性の検証がJABや審査登録機関の最初の対応でなければならない。
 
  しかし、日本の登録制度では、品質保証の規格ISO9001への適合と品質保証能力の実態とは無関係という理屈である。審査登録は「製品認証の概念とは異なり、マネジメントシステム審査登録は改善することに意味がある」というJABの解釈の下に行われている。登録証は品質不祥事が起きない保証ではない。これが、どの声明も経産相要請の背景に応えず又は気づかない振りをしている理由である。それでいて各声明は社会に審査登録制度の信頼性向上に対する理解と支援を求める文章で締めくくられている。つまり、不祥事も出るのが登録制度だと言いながら、登録制度を信頼して欲しいと言っているのだ。
 
  日本では、ISO9001規格導入の狙いの通りに機能していると評価する組織はJAB調査でも50%強に過ぎない。しかし先年、これと無関係な「負のダウンスパイラル」と称する別の機能不全が持ち出され、審査機関の安易な審査とコンサルタントの能力不足が原因としてJABは管理を強めてきた。同時進行形で、登録制度は社会制度であるとか、審査機関の顧客は受審組織ではないとの主張が現れ、今や業界常識となった。登録制度は組織の悪行の監視、組織の顧客の保護が目的であって、組織には直接役立たないものだと言っている。しかし、今度はその顧客からあからさまに機能不全を指摘されるに至った。
 
  この度のISO9001登録証への疑念報道への対応は、何事につけ論理不在の業界らしい。この業界体質の背景には、規格と登録制度の理解や解釈において一握りの指導層が天啓的判断を下す権威主義とそれを鵜呑みにする無責任主義がある。ISO9001と登録制度を機能させるには、関係者が自分の頭で考えてすべてを本来の姿に戻すしかないように思えるのだが。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-49>

 48.  ISO専門誌“アイソムズ”休刊宣言 −業界広報誌への読者の反乱?
<“アイソムズ”休刊宣言>
   ISOマネジメントシステム規格専門の月刊雑誌“アイソムズ”がこの12月号をもって休刊することが明らかになった。理由の説明はないが、情報伝達手段としてのインターネットの発展に触れたウェブサイトの休刊の弁から、読者数の減少が主因であることがうかがわれる。筆者は、この雑誌の発行元であるISO研修機関の研修を受けて審査員資格を得て以来、同誌の読者であり、2002年には投稿論文がその5,6月号を飾ったこともある。筆者の目には、日本の主要ISO専門誌3誌の中では質、格調の観点で最も優れたものに写っていた。しかしながら、実は今年の3月で6年間続けた定期購読を打ち切った。理由は同誌の記事に読むべきものがなくなって久しくなったからである。打切りの通知に永年の読者としてのお礼の言葉を添えたが、なしのつぶてであったことが気になっていた。その1年も経たない休刊宣言だから、既に当時読者離れが深刻化していたものと推定される。筆者は随分我慢強い読者であったということである。
   
<ISO専門誌の実態>
  “アイソムズ”に限らず、"ISOマネジメント"や"月間アイソス"など日本のISO専門誌には、ジャーナリズムとしての主張が希薄である。内容は一般に、規格解釈や規格の適用或いは規格作成動向など関連する事項に関するインタビューか解説や説明の記事と組織の規格適用体験の発表記事の2種類が中心である。前者で採り上げられるのは決まって、業界指導層かそれにつながる著名層及び審査機関の責任者や”ベテラン”審査員の見解であり、内容はどれも業界権威につながる金太郎飴の切り口を思わせる同一かつ同質振りである。記事は普通、これをひたすらありがたく拝聴する形でまとめられている。後者は例外なく、首尾よく実行したことを指導教官に褒めて貰うための生徒の発表の如くの文面で、組織のシステム構築や運用に関する成功体験の報告という業界権威に忠実な内容である。
   
   記事には問題提起や現状批判の視点は存在せず、今や常識となったISO取組みの問題ある実態に切込むこともなく、国外に目を転じることもない。特集や連載記事となる時代を反映した時々の話題やテーマ も業界指導層の受け売りであり、業界利益を代表する人々の見解を無批判に伝えるだけである。日本のISO取組みには、ISOへの日本代表を務める層を頂点として、それにつながる指導層とJABやその支配下の審査登録機関、研修機関、審査員が登録組織の上に君臨するという業界秩序が確立しているが、ジャーナリズムもこの中に身も心もどっぷりと浸かって、業界広報機関誌に成り下がっているかの状況である。
   
<読者の関心の変化>
   日本でISO取組みが始まって15年も経って、ISOマネジメントシステムとはどんなものかという初歩的な興味から、規格適用の効用への深まる疑問や登録組織の相次ぐ不祥事或いはこれらへのJABや審査機関の対応など自らのISO取組みに資し、疑問に応える情報へと読者の関心は大きく変化している。読者が体験し見聞きする現実に目を塞ぎ、相変わらず業界権威の意向と業界利益を擁護する情報しか報じないISO専門誌から読者が離れていくのは当然である。
 
<空疎なISO9001取組み>
   顧客に依存する組織は、顧客のニーズと期待を満たすことではじめて、その事業を継続させ発展させることが可能となる(ISO9000 2.1)。組織は製品に関する顧客満足度を監視、測定し(ISO9001 8.2.1)、分析して(同 8.4 a) )、変化する顧客のニーズと期待を把握し、これに対応するよう製品を改善しなければならない(5.6.3 b))。 これを、ISO9001の啓蒙を事業とする“アイソムズ”発行組織が知らず、また、実行を怠ったとは考えられない。しかし日本では、JIS規格付属解説のように、顧客要求を辛うじて達成すれば顧客満足となる(3.2 e)とし、製品の改善は必ずしも必要でない(4 p))とされている。このような解釈に沿う見解を記事にしてきた雑誌の発行元が、そのような品質マネジメントを行い、その結末が雑誌の休刊宣言だとすると、日本の問題あるISO取組みを身をもって証明したことになる。
このページの先頭へ H18.12.15(修: H19.1.11)

 47. ISO14001と環境配慮投資、融資 −価値のない登録証 
<ISO14001環境マネジメントシステム>
   ISO14001は、組織が活動及び製品・サービスに付随する環境影響を管理し、継続的に改善する環境マネジメントの業務体系の枠組みを提供する。その狙いは“持続的発展”の理念に沿って組織の発展と環境の保全とを両立させることにある。つまり組織は、その環境影響を把握し、適用される環境法その他の規制を遵守すると共に、組織の環境影響を受け或いは関心を有する人々(利害関係者)のニーズと期待に応え、且つ、技術上、財務上で実行可能な精一杯の環境改善を着実に、継続的に行う。
 
<環境責任>
   ISO14001規格制定のきっかけは、“持続的発展”を共通の理念に掲げ、世界の環境取組みを方向づけ、枠組みを定めた1992年の地球サミットである。ここでの産業界の環境取組みの誓約を検討するための会議“BCSD”が開催され、「組織の確実で一貫した環境改善努力を評価する普遍的な指標がない」という問題意識が明確にされた*1。ISO14001はこれへの応えであり、組織が規格に則って環境マネジメントを行えば、地球環境に対する環境責任を果たすことになる。
 
<審査登録制度の狙い>
   審査登録制度は、組織の環境マネジメントがISO14001の要求事項に則って実行されていることを判定し、組織が国際標準の環境責任を果たしていることを登録証の発行により、広く利害関係者に証明するためにある。利害関係者は現実には組織から直接、間接に環境影響を被ってはいるが、登録証によって組織の現状と環境取組みが国際標準の環境責任を満たすものであるとして了承し、組織と製品を受入れ、安心して組織の活動を支援する。組織は利害関係者からの信頼を得て、競争優位の確保、社会との良好な関係の維持の他、投資家の基準を満たし資金調達を改善でき、妥当なコストで保険がかけられ、許認可の取得が容易になる、というような実務上の利益を期待することできる*2。
 
<環境配慮投資、融資>
   ところで、社会的責任投資、環境配慮型融資というような組織の地球環境保全取組みに着目した投資や融資の仕組みが世界で拡がっている。企業の社会的責任という概念は1980年頃に始まるが、今日の環境配慮投資や融資の拡がりが世界の環境取組みの枠組みを定めた地球サミットの決議“アジェンダ21”に加速されたものであることは間違いない。これらの投資、融資では、投資、融資元の機関投資家や金融機関が、組織の社会的責任ないし環境改善への取組みを一定の基準で評価して、投資先を選別し、融資条件を優遇する。しかし、投資、融資元は通常、「一口に環境といっても評価の基準が難しい。業種も企業規模も違う」という問題の下での「大変な作業」を強いられる*3。
 
<登録取得組織の利益>
   環境配慮投資、融資とISO14001の原点は同じであり、狙いも同じく、組織が環境責任を果たすのを支援することである。環境配慮投資、融資が環境責任を果たす組織を選別する基準を必要としているのに対して、ISO14001がその基準となることをも意図して環境責任の果たし方を定めている。にもかかわらず、ISO14001が環境配慮投資、融資との関連で語られることはない。昨年末で世界の21%、23,500にのぼる日本のISO14001登録組織も環境配慮投資、融資を受けるためには、未取得組織と同じように、個別の必要条件を満たし、指定データを報告し、評価を受けなければならない。ISO14001が取得組織に意図された利益を与えていない。
 
<ISO14001普及の障害>
   この状態が機関投資家や金融機関のISO14001についての認知が不足しているためであるなら、JABや審査登録機関にはISO14001の普及がその生命線である以上、ISO14001の利用価値の広報に努める必要がある。しかし、業界は“審査の公正さ”や“審査の付加価値”に熱心で、登録証の価値には関心を示さない。しかし例え広報活動を行ったとしても、環境配慮投資、融資が“環境責任を果たす企業が発展する”という信念を基礎にしているから、“紙、ごみ、電気から本業での環境改善へ”というようなことが真面目に語られる日本のISO14001の不真面目な実態は、機関投資家や金融機関の説得、理解活動の重大な障害となるに違いない。
 
*1 J.Cascio他:ISO14001ガイド、日本規格協会、1996.12.16
*2 JISQ14001;序文
*3 日経新聞: 2006.9.18号、スイッチオン・マンデー
このページの先頭へ 2006.9.10

 46. プール事故死対応に見られる規格観の日米差異
<ふじみ野市プールでの事故死>
  去る7月31日の埼玉県ふじみ野市の市営プールでの小学生の事故死は全国のプールの安全対策の問題を浮かび上がらせた。報道によると、業界には共通の安全基準は存在せず、プールの安全は文部科学省の学校プールの整備指針、国土交通省の公園内のプールの技術基準と通達及び厚生労働省のプール安全対策の通達に依存してきた。8月30日には関係省庁連絡会議が開かれ、民間を含めたすべてのプールについて安全対策の統一的な指針をまとめることとなった。
 
<米国のプール安全基準>
  規格大国の米国では米国温浴槽及びプール協会*(NSPI又はAPSP)が、公共及び個人の温浴槽とプール、温水プールに関して7種類の規格を作成し、米国国家規格*(ANS規格)として発行されている。同協会の活動目的のひとつが「プールの健康、安全、公共福祉に関連する標準(standard)の確立」であるから、米国ではこの規格が安全確保の統一的な施策や基準として機能してきたものと思われる。
 
<プール安全確保の法制定>
  折しも米国ではプールの安全を図る法案「プール及び温浴槽安全法*」が上下院で審議されている。この背景はわからないが、法案は連邦政府の商品安全局*(CPSC)が安全基準(safety standard)を定め、これを州政府が適用するのに補助金を支給するというものであり、安全基準はCPSCが独自に制定しても、既存の規格*(standard)を適用してもよい。APSPは、この法制化に協力する旨の声明を発表しているが、この中で、新しい安全基準が既存のAPSPの規格を基礎とすべきであり、効果的な安全確保には民間の智恵と柔軟な対応力を活用するのが得策という主張を展開している。
 
<米国の規格事情>
  1996年時点で規格作成を事業範囲とする組織は約700あり、93,000の規格が存在し、その半数の49,000が民間規格である。2003年末の米国国家規格協会*(ANSI)認定の規格作成機関は約200、この半数が特定規格作成のための共同作業組織である。米国国家規格*(ANS)の和は約10,000である。米国では国家技術転移及び技術振興法(NTTAA)*により連邦政府が民間の自発的な規格(voluntary consensus standards)を活用することを奨励されている。ANSIの承認した米国国家規格*(ANS)はすべてNTTAAが規定する条件を満たしているから、いつでも政府に採用されて規制の基準又は指導の指針となり得る。
 
<ISO9001と審査登録制度>
  米国での規格の制定と利用は、民間の自主性と活力及び官に対する独立性、また、民間の自律的進歩を促し活用するという官の政策の象徴である。ISO9001と審査登録制度も、このような欧米の規格観と官民風土の下に成立した国際貿易の促進を図る民間の取組みであり、取引の拡大という民間組織の利益が目的である。然るに日本では、通産省の審議会たる日本工業標準調査会がISOに加盟し、国内では審査登録制度の運営を管理している。業界指導層も制度を「社会制度」であるとして規格を組織を管理、規制する手段に転化し、民の利益を擁護するはずの日本適合性認定協会もこれに追従する。永年の規制緩和の政治課題の進捗が遅々とするのは、官の抵抗より民の官頼みの意識に原因があるのではないだろうか。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-46>

 45. 登録組織の不祥事と業界の対応−審査登録制度の信頼性を毀損
<審査登録制度の意義>
   規格ISO9001,14001は、組織が品質又は環境に関して利害関係者のニーズと期待を満たすことによって利害関係者から製品の購入、立地許容、操業認可、融資や投資など組織の発展に不可欠な支援を得ることができるとする原理に基づいている。組織がそのような努力を行っていることは利害関係者にはわからないから、組織は公正な第三者たる審査登録機関の審査を受け、その努力を証明する登録証を得て利害関係者にかざし、支援や支持を訴える。これが審査登録制度の意義である。
   
<審査登録制度の認知と登録証の信頼性>
   ISO9001,14001の普及び利益の享受のためには、当該の及び潜在の利害関係者の登録証に関する認知と登録証への信頼感が不可欠である。折しもパロマ工業製瞬間湯沸器に係わる深刻な品質事故が新聞等を賑わせている。ガス中毒防止はこの種製品の品質の最も基本的要件であるから、同社の問題処理は如何にもお粗末で、品質保証の観点で妥当性に欠ける。ISO9001に則り顧客のニーズ、期待である欠陥製品防止の努力をしているというなら、死亡事故を何件も発生させるような問題処理はあり得ない。報道は同社にISO9001適合の登録証が発行されている事実に触れていないから、事件が一般消費者の審査登録制度の信頼への打撃とはなっていない。しかし、報道がないのが社会一般のISO9001と審査登録制度に対する認知と信頼の無さの反映であるなら、審査登録業界としては幸いとばかり喜んではいられまい。
 
<登録組織の不祥事への業界の対応>
   近年、登録取得組織による品質又は環境事故など不祥事の報道が少なくない。JABは今年、耐震偽装マンション販売疑惑渦中の潟qューザーのISO9001登録取得の事実の報道を契機に、審査で知り得た法規制違反に対する審査員の義務を定めた通達を出した。しかし通達は対象を意図的な違反、しかもISO9001審査に限定しているなど内実に乏しい見せかけの対応である。不祥事が明らかになった場合審査登録機関は、その組織の登録を一時停止にして再発防止対策を要求し、この結果により登録を復活させるという対応をとるのが通例である。審査でなぜ発見できなかったかなど審査登録機関の責任に言及した例はなく、雑誌での見解表明では「少ない工数で最低ラインのマネジメントシステムの存在と有効性を保証しているだけで、事件、事故の起きないことは保証していない」と責任を否定している。
 
   目下の湯沸器ガス中毒事故に関しては、パロマ工業に登録証を発行した審査登録機関JIA-QAセンターは沈黙を守り、登録一時停止の発表さえない。ただ、登録範囲が「”株式会社パロマ向け” ガス温水機器・・・」であり、販売後のサービスを登録範囲から除外しているから、報道される事故は顧客たる潟pロマの問題であって、パロマ工業の登録証の品質保証の対象外であると整理できる。これが審査登録業界の沈黙の理由かもしれない。責任回避の論理はそれでよいとしても、この登録証は何のためだったのかという疑問に答える必要がある。
 
<まとめ>
   日本の登録証の圧倒的多数は国内の事業者間取引に使用され、関係者にはその有効性に関する割切りが存在している。従って、不祥事報道で直ちに登録件数が減少することはないが、認知さえ未だしの消費者はじめ一般社会に審査登録制度への疑念と不信を育む機会を与える。例え不祥事防止が審査登録制度の枠を越えるものであるとの業界の主張に合理性があるとしても、不祥事を起こす組織にも登録証が発行されるという事実は、審査登録制度の有用性に対する疑問を増幅させても、信頼を向上させることはない。
 
   問題の根底には、システムを機能させることを否定する規格理解と要求事項解釈、これらに基づく形式重視の審査と審査合格の形式を整えるシステム構築作業という日本のISOマネジメントシステム取組みがある。不祥事はこのような取組みによるシステム機能不全の結果であり、現にシステムが組織の役に立っていないという証拠である。不祥事は今後も発生し続け、社会の登録証への信頼の向上は望むべくもない。
このページの先頭へ 詳しくは<62-01-45>

 44. 環境影響とは    −不可解な日本語
               「全体的に又は部分的に組織から生じる環境に対するあらゆる変化」
(JISQ14001 3.7)I
   ISO14001は、組織の活動と製品・サービスがもたらす「環境影響」を管理し継続的に改善する環境マネジメントの規格である。 この「環境影響」とは、「有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる、環境に対するあらゆる変化」(3.7項)と定義されている。この日本語では、環境影響とは「組織の環境側面」が原因となって「環境に対して何かが変化する」ことである。また、この何かはいろいろに変化するらしいことはわかるが、この変化が別の何かの「全体的に又は部分的」に生じるらしいとなると、この「何か」が何かわからない。
 
   この不可解な日本語は、この定義の英原文の中のそれぞれの英語表現の理解の誤りに起因する。まず「環境に対する変化」であるが、原英文は changes to the environment である。 change to 〜は change in 〜 と共に「〜が違ったものになる行為や結果」を意味する。例えば changes to the tax system は、「税制の改正」であるから、原英文は「環境に対して何かが変化する」のでなく「環境が変化する」のである。すなわち、「環境に対する変化」でなく「環境の変化」である。環境変化を「環境影響」と言うのであるから、ごく当たり前の定義である。
 
   次に「全体的に又は部分的に生じる」であるが、この原英文は、wholly or partially resulting from〜 である。ここに resulting from 〜 は、「〜の故に生じる、〜に起因する」の意味である。そして副詞 wholly or partiallyは、動詞 resulting from 〜を修飾するから、生じた結果の「全部か一部か」が 「〜に起因する」という意味である。この場合、結果は「環境変化」であり、原因は「組織の環境側面」である。変化の「全部」が組織の環境側面に起因する場合だけでなく、当該の環境変化に別の原因もあり、変化に対する組織の環境側面の寄与が「一部」に過ぎない場合でも、というのが or であり、そのどちらの変化もというのが「あらゆる変化(any changes)」の any である。例えば、水俣湾の有機水銀汚染は特定企業の排水の結果による海洋汚染であるから前者、地球温暖化は世界の多くの企業の炭酸ガス排出の総合的結果であるから後者、のそれぞれの環境変化である。規格ではどちらも組織起因の「環境影響」として扱わなければならないということである。
 
   すなわち、「環境影響」とは、組織の環境側面に起因する環境変化であり、その環境変化に対する組織の寄与の大小を問わないということである。別にむずかしい問題ではない。不可解な日本語和訳が難しく見せているだけである。
 
   因みに「環境側面」の定義も不可解な日本語である。すなわちJISは、「環境と相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素」(3.6項)と和訳しているから、「組織をとりまくもの*」(3.5項)である「環境」が組織の活動や製品と「相互に作用する」ということである。この事例では interact with the environment を単純に「相互に作用する」と和訳しているのである。しかし、上記の定義でも明らかなように「環境側面と環境影響の関係は一種の原因と結果である*」(A.3.1項)し、現実に組織が環境側面を通じて一方的に環境に作用するのである。すなわち、「環境に係わり合いをもつ組織の活動又は製品又はサービスの要素」が環境側面である。
 
   そもそも規格は特殊な用語を使用するものではない。用語の定義があっても、その用語の一般的意味を超越するものではなく、規格における特徴や重要視する面を強調するに過ぎない。ISO14001でも世間でも、環境影響とは「何かがもたらす環境変化」のことであり、定義は環境変化が組織の原因である限り、その寄与の大小にかかわらず組織に責任があるということを強調しているのである。ISO14001において最も基本的な概念である「環境影響」なのに、「全体的に又は部分的に組織の活動、製品・サービスから生じる環境に対するあらゆる変化」と定義され、訳のわからないまま「環境影響」というものに組織が取組んでいる。これに関して規格作成関係者を初めとする業界権威やいわゆる識者から明快な説明も問題提起もない。この定義でわかったつもりなのであろう。
 
   JISQ14001/9001にはこの種の不可解な、あるいは違和感のある日本語表現が少なくない。大半は英文法を適切に適用していないことが原因であるが、規格の意図に則って翻訳する姿勢があれば避けられたはずの不適切和訳である。日本ではISO14001,9001規格は審査登録のための「要求」であり、業界権威や識者による“神の啓示”的規格解釈にひれ伏す業界風土が固まっている。ここでは、規格の文言はどうでもよいのであり、むしろ意味不明が故に難解に見える日本語の方が、業界権威の規格解釈がよりありがたく受け取られる。「寄与度の大小にかかわらず組織の活動、製品・サービスに起因するすべての環境変化」が環境影響だと種明かしをして、「何だそんなことか」と規格が何も特別なことを言っている訳でないことが一般に知られても、規格の権威が低下することはないけれど、業界秩序には大きな影響が生じる可能性は強い。   
このページの先頭へ H18.6.10(修:6.16, 11.6, 12.23)

 43. マネジメントシステムにはトップマネジメントの関与が大切か? −片仮名英語の弊害  
<規格理解の混乱>
   ISO9001/14001マネジメントシステムの効果的な構築と運用にはトップマネジメントの関与が不可欠だと言われ、ISO9001:2000では トップマネジメントの責任と役割が拡大、強化されたとも言わる。これら表現にはひっかりを覚えるが、理屈から言っておかしい。本来何でもないのに日本では混乱している問題の背景に片仮名英語がある。
   
   例えば、日本では「マネジメントシステム」について何のことか理解に苦しみ、更には規格特有の概念であるかの錯覚をしている人々も少なくない。 解説書でも、マネジメントシステムを規格の3つ定義をつなぎ合わせて「組織を指揮し、管理するための方針及び目標を定め、その目標を達成するための相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」と説明され、マネジメントシステムを特別な環境又は品質改善の運動を意味する固有名詞かの説明さえある。
 
<経営管理>
   「マネジメント」の原英語は management と言う経営用語である。これは、日本でも馴染みのある概念で、経営学では「管理」と和訳され、企業でも財務管理、技術管理など「管理」を当てて実行してきた。世間一般では組織全体の活動を取り仕切ることを「経営」、その人々(top management)を「経営層」、その命令により各部門内の活動を取り仕切ることを「管理」、部門の長(middle management)を「管理者」と呼んでいる。一方、経営学では経営と管理の区分にこだわらない方向で「経営管理」と呼ぶようにもなっている。「経営管理」と言う言葉で、規格の management の定義の「組織を方向づけし(direct)、制御する(control)統一性のある(coordinated)活動*」を読むと合点がいく。「マネジメント」という新語だから何か新しい活動かの錯覚を生む。
 
<体系>
   「マネジメント」に加えて「システム」が混乱に拍車をかけている。これは「体系」のことであるから、「マネジメントシステム」は「経営管理の体系」と訳される。「体系」とは「そのものを構成する各部分を系統的に統一した全体」であり、規格の system の定義の「相互に関連づけられ又は作用し合う一連の要素*」であるからぴったりの訳である。定義づけると難解だが、「体系的」は物事がバラバラではなく組織的、統一的であることを表すのによく用いられる。例えば、乗継ぎ駅、ダイヤ調整、相互乗入れが整備された時に交通機関の集まりは、それぞれの交通機関を要素とする地域交通体系となる。
   
   JISが「一連のプロセスをシステムとして・・」と和訳している プロセスアプローチの定義の部分の原文は「a system of processes(諸プロセスのシステム)」であるから、マネジメントシステムは「諸業務の体系」である。「業務」が マネジメントシステムの要素である。規格の マネジメントシステムの定義はその要素として組織構造、手順、プロセス、計画活動、責任、方法、資源を例示しているが、それらに則り又は使用するのが「業務」であるから、要素を業務と見ることと矛盾しない。
 
<経営管理業務体系>
   マネジメントシステムとは「経営管理の業務の体系」のことである。品質マネジメントシステムは「品質経営管理業務体系」、環境マネジメントシステムは「環境経営管理業務体系」である。規格の品質又は環境に関する経営管理においては、関係する諸業務がばらばらに行われるのでなく、組織の目標達成を目指す トップマネジメントの意図に沿って他部門の業務との連携の下に各部門の諸業務が統一的、組織的に行われるようにすることが基本であり、このように実行される経営管理の諸業務の体系が規格の マネジメントシステムである。表現するには難しい概念ではあるが、だからこそ何の意味も含蓄しない片仮名英語より、日常で馴染みがあり、それ相当の意味を持つ日本語を使用する方が、理解を容易にし、混乱を招く恐れも少ない。
 
<片仮名英語の弊害>
   「トップマネジメント」の原英語は top management であり、最高の立場で組織全体の経営管理を担う人々のことである。日本語では「経営層」、新聞等では「経営トップ」と呼ばれる。経営管理業務体系の確立や運用は経営層本来の業務であり、責任であるから、「関与」では経営層の責任を果たしていない。また、経営層に固有の責任が規格作成者によって変えられるはずがないのである。マネジメントシステムが「経営管理業務体系」と和訳されていれば、冒頭のようなおかしな話は生まれなかったと思う。