ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
5.6.3 項  マネジメントレビュー からの アウトプット 実務の視点による
ISO9001:2000の解説  <その29>
35-01-29
 5.6.2  マネジメントレビュー からの アウトプット
[第1文] マネジメントレビュー からの アウトプットには、次の事項に関する決定及び処置を含むこと
[ a)項] a) 品質マネジメントシステム及びそのプロセスの有効性の改善
[ b)項] b) 顧客要求事項への適合に必要な製品の改善
[ c)項] c) 資源の必要性

1. [5.2項]の趣旨
    本項は、マネジメントレビューの結論として顧客満足の向上を図るための必要な処置を効果的に導き出すためには、判断と決定が業務の手順、製品の品質、資源の3つの観点で行われることが必要であることを明確にしている。
 
   
2.マネジメントレビュー のあり方
(1) マネジメントレビュー の決定
   マネジメントレビュー によってトップマネジメントは、組織の現在及び将来の事業展開にどのような顧客満足の実現が必要か、また、そのための品質マネジメントの諸業務の問題点、課題は何か、どのような方向で問題解決を図るべきかを決定しなければならない。一定期間毎に繰り返されるこの決定とその処置の実行によって、組織が変化する事業環境の中を一貫して顧客満足の製品・サービスを提供する業務能力を有し、諸業務が品質マネジメントの狙いの顧客満足を実現するように確実に実行、管理される状況が維持される。しかし顧客満足向上を図る品質マネジメントシステム は「組織のマネジメントシステム」(ISO9000; 3.2.2 参考)の一部に過ぎない。マネジメントレビューの決定は、他の目的のマネジメントシステム との関連も考慮にいれた組織全体としての最適解でなければならない。
 
(2) 品質マネジメントシステム の実態の評価と判断
   マネジメントレビューに供される品質マネジメント の諸業務の実績の情報は、目標及び計画と対比、評価される。その業務が改善、維持のいずれを図るものであることを問わず、業務がそれぞれの所定の手順の通りに行われたか、業務の結果がそれぞれの所定の狙いを達成できたか、業務の手順や資源は所定の狙いに対して十分か、発生した問題は効果的に処理されたか等の視点で評価、判断される。最も大切な判断は、品質マネジメントの諸業務の総合した成果として所定の顧客満足が達成されたかどうかである。これは顧客満足に関する実績の情報(8.4 a)項)との対比により評価され、判断される。 規格の表現では、目標や所定の狙いとは「品質目標」(5.4.1項)であり、計画、所定の手順や資源とは「品質マネジメントシステムの計画」(5.4.2項)の結果であり、発生した問題とは「不適合製品」(8.3項)などの「不適合」(ISO9000;3.6.2項)であり、問題の効果的処理には「是正処置」(8.5.2項)や「修正」(同;3.6.6)が含まれる。 更に、所定の顧客満足とは「品質方針」(5.3項)で謳い、「品質目標」(5.4.1項)として掲げた製品・サービスに関する顧客受けとめ方に関する想定である。この想定と実際の顧客の受けとめ(8.2.2項)との差異である顧客満足の達成度は、「品質マネジメントシステムの成果の指標*」(8.2.1項)として最も重要なものである。
 
   これらの評価が、規格の「品質マネジメントシステムが適当か、十分か、有効か」(5.6.1項)の評価である。 トップマネジメント はこの評価によって、顧客満足とその実現のための業務能力の実態と過不足を判断し、問題点を把握する。結論は、顧客満足向上の改善の課題と問題解決の方向に関する処置と決定に関するものであるが、狙いの顧客満足自体が正しかったかどうかの評価と判断が含まれることもあり得る。
 
(3) 変化する諸情勢の評価と対応の判断
   把握された品質マネジメントシステムの実態は次に、変化しつつある内外の諸情勢の情報と対比して評価される。この評価によってトップマネジメントは、組織の目指す顧客満足向上に対して影響が及ぶ情勢変化を把握し、対応すべき情勢変化を選択し、対応のための課題を抽出する。これによって、組織が置かれる新しい状況に対応して、どのように業務の取り組みの狙いや方向を変えなければならないか、この変化に品質マネジメントの業務能力の実態が対応できるのか、強化すべき又は新たに確立すべき業務能力は何かの判断と必要な処置を決定する。規格の表現では、業務の取り組みの狙いや方向の変更は「品質方針」(5.3項)や「品質目標」(5.4.1項)の変更であり、業務能力の強化や新たな確立とは手順と資源を変更することであり、これは「品質マネジメントシステムの変更の計画と実施」(5.4.2 b)項)である。また、このような処置によって、「品質マネジメントシステム が引き続き、適当で十分で有効」(5.6.1項)であることが図られる。
 
(4) 継続的改善
   マネジメントレビュー で トップマネジメントが確立した組織の内外の実態と課題に関する認識及び下した判断と結論としての処置の決定は、以降の品質マネジメントの実行を方向づけるものとなる。この新しい業務の取り組みの狙いや方向は「品質方針」(5.3項)、「品質目標」(5.4.1項)に表現されるから、方向変化が著しい場合には品質方針や品質目標の変更を必要とすることにもなる(5.2.1項)。 規格の「継続的改善」とは、「要求事項を満たす能力を高める繰返し実行の活動*」(ISO9000;3.2.13)である。これは、マネジメントレビュー をAとする品質マネジメント のPDCAサイクルを繰り返して、変化する諸情勢に対応して品質マネジメント の業務能力を必要なまで改善し続ける活動のことである。
 
   この「継続的改善」のPDCAサイクル を4.1項では「品質マネジメントシステム」のPDCAサイクル に関して表現しており、品質方針、品質目標の変更とそれに基づく手順と資源の変更は「品質マネジメントシステムの確立、文書化」であり、品質マネジメントの業務の実行、管理が「品質マネジメントシステムの実施、維持」であり、マネジメントレビューによる決定が「品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善」にそれぞれ相当する。また、8.5.1項では、「品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善」を、継続的改善に直接関係する業務を順に列記して表現している。いずれの表現であれ、マネジメントレビューは、継続的改善の核(1)である。
 
 
4.規格要求事項とその真意 −マネジメントレビューの結論のあり方
(1) アウトプットに3つの視点からの決定及び処置を含める  [第1文]
   「決定及び処置」は英原文では、 decisions and actions である。 加算名詞の場合の decision は、「何が最良か考慮した後に下す選択又は判断」という意味(2)であるから、情報を評価した結果の「判断」のことである。規格では、マネジメントレビュー も「インプットをアウトプットに変換する活動」と定義(ISO9000;3.4.1)される「プロセス」のひとつである。インプット の情報(5.6.2項)を評価し、考慮して「判断」を下し、必要な対応処置を「決定」することが マネジメントレビュー のアウトプット である。
 
   マネジメントレビュー でトップマネジメントは、品質マネジメントの諸業務が意図する事業展開に必要な顧客満足を実現するのに引続き適当で、十分であり、効果的に実行、管理されるよう、必要な処置を決定する。この決定を効果的なものとするためには、問題点や課題の抽出及び問題解決の方向づけと処置は、次の3つの観点に分けて判断し、決定することが必要である。
 
(2) 品質マネジメントシステム 及びそのプロセス の有効性の改善  [ a)項]
   規格で「有効性」とは「活動が計画通りに実行され、所定の結果が達成された程度」(ISO9000;3.2.14)であるから、「品質マネジメントシステム及びプロセスの有効性」とは、品質マネジメントの諸業務が個々に、又、全体としての狙いを実現する能力があり、実際に実現しているかどうかということに関する。狙いの顧客満足の製品・サービスを確実に実現することに関連する業務の能力が不足したため、顧客満足の狙いが達成できなかった場合、或いは、今後の顧客満足の狙いに対して能力不足であると判断される場合は、不足する業務能力の改善を図るため、業務の実行と管理の手順を変更することが必要である。これは、品質保証、品質管理、品質改善、品質計画に関する業務能力の改善が主体であるが、とりわけ、所定の品質の製品・サービスを実現する諸業務の能力や不良製品・サービスの顧客への引き渡しを防止する業務の能力の改善や強化が中心となる。
   
   この他にも、顧客満足の狙いを適切に決定することに関連する顧客のニーズと期待や内外の諸情勢を把握する業務能力、把握したニーズと期待を満たす製品・サービスを企画、開発する業務能力、或いは、情報処理や分析に関する業務能力が問題になることもある。更には販売戦略、外注政策、購買政策、事業モデルの変更に及ぶこともあり得る。
   
(3) 顧客要求事項への適合に必要な製品の改善  [ b)項]
   この原英文は、 improvement of product related to customer requirement と単純である。すなわち、「顧客要求事項に関連しての製品の改善」であり、顧客のニーズと期待を満たすように製品・サービスを改善することである。供された情報の評価の結果で狙いの顧客満足が達成していなかった場合、又は、変化しつつある或いは変化が予想される顧客のニーズと期待を満たすには現在の製品・サービスでは不十分と判断される場合は、現在又は将来の顧客に製品・サービスを買ってもらうためには、顧客のニーズと期待を満たすように製品・サービスを改善又は変更しなければならない。マネジメントレビューによって、製品・サービスの何が問題か、どうすれば顧客のニーズと期待に応えられる製品・サービスとすることができるかの判断と処置の決定を適切に時宜を得て行うことによって、組織は顧客満足の製品・サービスを一貫して提供することが可能となる。
 
   品質保証面での顧客の不満が問題なら、苦情の発生防止、不適合製品・サービスの出荷・引渡しの防止を図るための製品・サービスの改善或いは梃入れという問題解決があり得る。変化する顧客のニーズと期待を満たすためには、製品の機能や性能の変更だけでなく、新規な製品・サービスの開発や投入、品揃えの変更などが必要になるかもしれない。更には、商品戦略の変更、事業分野の変更など戦略的決定も必要になることがあり得る。
 
(4) 資源の必要性  [ c)項]
   品質マネジメント の諸業務が手順の通りに実行されるために必要なものが「資源」であり、6章に規定される人的資源、インフラストラクチャー、作業環境の他、情報、技術、原料や資材、文書や記録、更には、確立した手順、責任と権限、組織構造、供給者との関係もすべて「資源」である。
 
   所定の製品・サービスの品質を実現するために不足する技能、技術、知識、或いは、人材、更に、設備や装置の能力の改善や補強などが、資源の必要性の判断に相当する。処置には、採用、教育訓練、設備改造、更新、機械化、自動化、IT化の他、業務提携、立地の変更、直協分担や要員戦略なども含まれる。なお、規格は、主要な資源の必要の判断とその準備と維持の管理の手順を別途、6章に規定している。
 
 
引用文献 (英文献及び * 印は著者による翻訳)
(1) C.MacNee他: Transition to ISO9001:2000, BSI Publications,2001;p.24
(2) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
H19.5.23 
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