ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
アウトソースしたプロセスの管理 ISO9001:2000
4.1  一般要求事項
34-01-02
1.発表されている種々の解釈
(1) アウトソースと購買の違いについて

アウトソースは購買とは異なるとする考え
アウトソース は単なる購買でない。アウトソースは外注(外部委託)のこと(1)
アウトソース を購買の一形態と前提してしまうと、「契約関係の介在しないアウトソースはどうするか」(中略)などの疑問が起こる(2)
アウトソース は コントロール を必要とする プロセス を外に出すこと。購買と違って、発注時にすべての スペック を明確にすることができず、進展と共に管理を必要とする(3)
自社に該当する業務組織がない場合が アウトソース で、ある場合は購買になる(4)。 
アウトソースとは、プロセス を第三者に外注したり、下請けに出すこと。 購買は製品自身を購入すること(8)。 
 アウトソースは購買の一部とする考え
購買はアウトソースより範囲が広い。自己の範囲内の プロセス を外注(購入)する場合が アウトソース で、自己の範囲外のプロセス を外注(購入)する場合は購買(5)
アウトソースはプロセスを外部に委託することで、一般的には購買プロセスによって、外部委託と管理が行なわれている(6)
 アウトソースは購買と同じとする考え
外部委託(アウトソース)と購買を無理に区別しない方がよい(7)
アウトソース の管理に購買と別の管理を求めた訳ではない(9)
外部に委託することを"アウトソース"といい、外部から購入することを"購買"という、というような誤解が広まっている。委託と購買とを区別する必要はない(10)
アウトソース 又は下請負契約した プロセス は94年版では直接的には記述及されていないが、購買と受入検査に関連する要求事項で規定されていた。4.1項のアウトソースの管理も7.4と7.4.3項に従って行なうことになろう(11)
プロセス の購買が アウトソース であり、製品の購買との違いは、外部プロセス の管理を組織の品質マネジメント システムの中で明確にしなければならないことである(17)
アウトソースと購買の違いに触れない アウトソースの管理についての解説(13)(16)(18)(19)
アウトソースに関する要求事項に触れない 4.1項の解説(12)(14)(15)

(2) 7.4項(購買)との関係について
アウトソース の管理も 7.4項を適用すればよいとする考え(5)(8)(9)(10)(11)(18)(19)
アウトソース の管理に 7.4項だけでは不十分であるとする考え
アウトソース の管理も 一般的には 7.4項適用できるが、社内の他の部分にアウトソースする場合は、「購買」として扱うことには無理がある(6)
購買とは違うので、7.4項のみで管理できるものでない。例えばアウトソース先の力量は 6.2.2項で管理されるのがよいかもしれない(3)
アウトソースとして必要な管理かどうかの判定を行なう際に、7.4項を参考にしてもよい(2)。 
7.4項の中で規定していることが多いが、単なる購買と管理上何がどうちがうかを明確にするのがよい(1)
アウトソース の管理と7.4項の関係には触れていない解説(4)(13)(16)(17)
 
2.規格解釈に考慮が必要な背景事情
(関連情報はこちら)
(1) 事業用語としての"アウトソース"
  事業用語としての outsource(アウトソース)は比較的新しい概念であり用語であり、元々は親会社の支配下で付帯業務を行なうイメージの強かった「下請け」に対して、自立した専門業者に社内にない専門的業務を委託するという違いを強調する用語である。1990年代にITシステムの構築や保守を専門業者に委託する外注形態が米国で拡がったたが、その後経理や人事などの社内業務のアウトソースにまで進んだ。 外注も本来は社内にない外部戦力の活用が目的であり、製造業でも外注依存の高まりから伝統的な親子関係の外注は姿を消しつつ、今日ではアウトソースと subcontract (下請契約)とはほとんど同義語となっている。
   
(2) 規格用語としての"アウトソース"
   ISO9001規格では、物品の購入もサービスの購入も「購買」であり、物品もサービスも「購買品」(94年版)、「購買製品」(20004年版)である。 そして、94年版では組織の物品、サービス購入の行為を一般的に「購買」と呼ぶ一方、「下請負い」とも呼び、購入先のことは「下請負契約者」と呼んでいた。2000年版では、行為はすべて「購買」という言葉で表現され、購入先が「供給者」に変わり、「下請負い」という言葉は使われなくなった。そして、4.1項だけが「プロセスをアウトソースする」として「アウトソース」という言葉を使っている。
 
  規格の "アウトソース”の意味は、TC176の作成した用語の指針に関する文書(20)に「ISO9000: 2000 シリーズの目的と精神からは、"下請負い(subcontract)" と "アウトソース" とは同じ意味であり、相互に置き換えて用いることができる」と明確である。 「購買」も「下請負い」も「アウトソース」も同じ意味であるということである。
 
(3) "プロセスのアウトソース" と製品の購買の違い
   規格では、プロセスの結果が製品、サービスである。 製造やサービス提供のプロセスを外注しても、組織が実際に入手するのは製品、サービスであるから、組織の製品の品質という観点からはプロセスの外注も製品の外注も同じことである。 規格は94年版でも2000年版でも購買製品(purchased product)と呼んでいるから、購買するのはプロセスではなく製品、サービスであることを想定している。
   
   しかし、組織が購買に際して明確にしなければならない購買製品に関する条件を購買情報(2000年版 7.4.2項)或いは購買データ(94年版 4.6.3項)と呼び、これには製品に関する条件だけでなく、必要ならプロセスに関する条件や品質システムに関する条件を含ませなければならない旨規定している。 外注でも普通は結果としての製品、サービスに関する条件をつけて発注しており、特殊工程のような作業方法が特に重要な場合には資格や作業条件の指定も加えられている。プロセスに関する条件の方が重要であれば、製品の購買というよりプロセスの購買とみなして「プロセスをアウトソースする」と考える方が適切となる。 例えばコールセンター業務を外注する場合でも、組織が購買するのは電話応対で顧客の問題を解決するという結果であるが、問題解決に至る応答の的確さ、要領の良さ、言葉づかいなどサービス提供プロセスそのものも電話をしてくる顧客の満足度に大きな影響を持つから、"プロセスのアウトソース"と考える方が適切であることもあり得る。
 
(4) 規格の意図するアウトソースされたプロセスの例(関連情報はこちら)
   TC176文書(22)では、機械製造会社が保守・アフターサービス業務を他社に委託する、特殊鋼メーカーが熱処理を外部委託する、製造工場が使用する原材料の購買という本社業務を商社に委託する会社が設計を外部委託する、銀行の海外向けコールセンター業務を外部委託する、の例を挙げている。いずれの場合も外部委託した業務が、組織の製品、サービスの重要な品質に係わり、特殊工程的なサービス提供のプロセスである。
 
(5) 4.1項の "アウトソースしたプロセスの管理"の意図
   4.1項は、品質マネジメントシステムの確立、文書化、実施、維持、有効性の継続的改善という規格の基本について規定している。 この a)項が 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの特定であるが、適用除外を規定する1.2項が参照されている。 1.2項では、規格要求事項の内、組織と製品の性質上適用不可能なものは適用を除外しても規格適合性を毀損しないと説明されている。これを組織の都合よく解釈して、何がしかの要求事項は 「そのプロセスを外注した」ので適用除外するというようなことはできないということを明確にするために、「アウトソースしたプロセスの管理」に言及したものである。
 
   このことは、TC176の文書「1.2項 "適用"に関する指針」(21)に、「製品実現の全般的責任は組織にあるから、特定の製品実現プロセス(製品の設計開発、製造など)が外部の組織にアウトソース(又は下請負い)されたという事実はこのプロセスを品質マネジメントシステムから除外する正当な理由にはならない」として明確に説明されている。
 
 
3.規格の論理に基づく解釈
  規格では、アウトソースと下請負いとは同じ意味で、相互に置き換えて用いることができる用語である。2000年版では 94年版の"下請負契約者"が"供給者"に置き換えられ(ISO9001 3項)、7.4項でも94年版(4.6項)の"下請負契約された製品"や"下請負契約要求事項"が"購買製品"、"購買要求事項"に言い換えられている。このように、規格では、購買、下請負い、アウトソースがすべて同じ意味である。そこで 4.1項は「プロセスのアウトソース」であるから、"下請け"より近代的な、そして、「プロセスの購買」よりも実態をよく表現する、"アウトソース"が使われたのであろう。
   
  規格の"購買"は 94年版から既に、製品、サービスの購買だけでなく、プロセスの購買の概念を含んでいる。 購買する製品の要求事項を明確にする際に、その製造プロセス自体が組織の製品の品質確保に必要ならば、製造の手順、工程、設備、要員に関する条件をも明確にすべき(7.4.2項)ことを規定している。 "アウトソースしたプロセス"を 7.4項(購買)で管理するのに何の不足もない。TC176文書(22)は、7.4項が "アウトソースされたプロセスを提供するサービス" を含むすべての購買製品にあてはまる旨明記している。 また、その中で「プロセス自身が適合製品をその顧客に提供する組織の能力に影響を及ぼす場合には、それはまた、4.1項の要求事項に従っても管理されなければならない」としているが、管理の中身として 7.4.2項とことを記述している。
 
  4.1項の"アウトソース"は適用除外との関係で規定されたものであって、購買とアウトソースを区別するための意図は規格には全くないと考えられる。
 
 
4.結  論
   アウトソースも購買も同じ意味であり、プロセスのアウトソースは購買の一部である。 購買に、製品、サービスの購買の他、"プロセスの購買"があるとの概念は 94年版から存在しており、目新しいものではない。  しかし、2000年版規格では"下請負契約者"が"供給者"と呼称変更され、7.4項(購買)では "下請負" という用語はすべて "購買" で置き換えられている。 4.1項で "プロセスの購買"に "アウトソース"という用語が用いられたのは、このことが一因であろう。 4.1項に「アウトソースしたプロセスの管理」が規定された意図は、「組織が適合製品を提供する能力に影響を及ぼすプロセスをアウトソースする場合には、それを理由にこのプロセスを無視したり、組織の品質マネジメントシステムからこのプロセスを除外してしまってはならないということを強調する(22)」ことである。

   上記1のアウトソースと購買の違い、アウトソースの7.4項以外による管理を主張する異説には、論拠が示されておらず、主張に根拠が見当たらない。 異説はすべて日本語文献に見られる。 海外文献では異説の主張はなく、アウトソースと購買の違いに触れない解説とアウトソースに関する要求事項にさえ触れない解説が大部分を占める。 7.4項との関係についても、海外文献はそれに触れないものが大半である。英語では "subcontract" と "outsource" の理解に何の困難もないことの左証であろう。

   
   
引用文献 (英語文献及び印は筆者の和訳)
(1) 辻井 浩: "よくわかる最新ISO9001の基本と仕組み", 秀和システム, 2001.11.11
(2) 住本 守: "アイソスFORUM", 月間アイソス, 2002.2, p.33
(3) 平林良人: "ISO9000 94年版からの移行のしかた", 日科技連, 2001.7.9
(4) 吉田修一: "ISO/TC176国内対策委員に聞く", ISOMS, 2002.4, p.12
(5) 森 清照: "倉庫運輸業におけるISO9001:2000",月間アイソス,2002.10, p.120
(6) 大和田孝: ISO9001 2000年版 ミニQuestion&Answer, ISOMS, 2004.1, p.84
(7) JAB ISO9001 Workshop の議論, 2002.7.31-8.1
(8) 森田允史: ISO9001 2000年版 Q&A大特集, 月間アイソス, 2001.10,p.51
(9) 加藤重信: "アイソスFORUM", 月間アイソス, 2002.4, p.5
(10) 飯塚悦功他: ISO9001要求事項及び用語の解説,日本規格協会,p.44
(11) J.Kanholm: ISO9001:2000 新要求事項,AQA Co.
(12) D.Hoyle: ISO9000 Quality Systems Handbook,BH,2001
(13) RC&Associates: ISO9000:2000 Compliance with New Requirements, Jan. 2001
(14) C.A.Cianfrani他: ISO9001:2000 Explained, Quality Press, 2001
(15) R.Tricker: ISO9001:2000 For Small Business
(16) H.C.Monnich,Jr:ISO9001:2000 For Small and Medium Sized Busunesses, Quality Press,2001
(17) C.MacNee他: Transition to ISO9001:2000, BSI Publications Inst.,2001, p.9
(18) TC176: ISO9001:2000 for Small Busunessess, ISO Central Secretariat, 2002.6, p.54
(19) 野見山正弘: 業種別ISO9001規格の読み方, ISOマネジメント,2002.8, p.1
(20) TC176:用語に関する指針,ISO/TC176/SC2/N526R,17 May,2001
(21) ISO/TC176: ISO 9001:2000 1.2項 "適用"に関する指針,TC176/SC2/N524R2,2001.3.13
(22) ISO/TC176:アウトソースされたプロセスに関する指針,TC176/SC2/N630R    全文和訳
H16.3.19 
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