|
|
| 1 |
ISO9001
2008年版(追補)
改訂の要点 |
| 5 |
実務の視点によるISO9001:2000
の解説 |
|
ISO9001
海外の公的機関
の解釈 |
TC176はじめ
各国のTC176加盟機関による
公式の規格解釈
こちら |
日本にもあった
MS 実務の視点
サイト 主宰者の認識であり、
原著者の見解ではありません |
| ☆ 品質目標は必ずしも全部門、階層で設定される必要はない(ISO9001:5.4.1) |
| <大和田 孝: アイソムズ 、2005.7、P.68> |
| ◆ 「それぞれの部門、階層」という和訳が混乱の源。 |
◆ 「それぞれの」の原文は"relevant" であり、「関連する部門、階層」という意味。
|
[関連する MS 実務の視点]
32-5
|
|
|
| 2 |
英語で読み解く ISO9000/ISO14000 |
32 |
JISQ9000/14000 シリーズ規格は、"ISO規格と内容的に全く同一な翻訳規格"であることは、各規格序文で明確にされている。これは、和訳文の日本語を一人歩きさせてはならず、最終的には英原文に立ち戻ることが必要であるという、規格解釈の原則を示すものである。(詳しくはこちら<32-02-00>)
然るに日本では、ほとんどの規格解釈が JISの日本語の意味を根拠としており、JIS和訳文にある多くの誤訳や不適切な翻訳とあいまって、日本に独特の、或いは、顕著な形式的或いは非論理的解釈が育まれている。
英文法上、また、規格の意図の点で、更には、日本語表現として、問題のあるJIS和訳について検討し、規格の適切な理解の一助としたい。
|
| 目 次 |
<最新号>
36. 運用管理とは (4.14)
35. 外部コミュニケーション を行なうとは (3.17)
34. 決定及び処置とは (1.28)
33. サービス提供の後でしか顕在化しない不具合とは (12.20)
|
|
<規格・作成順 目次>
34. 決定及び処置 とは
32. 改善の機会及び変更の必要性 とは
18. 管理責任者とは
17. トップマネジメントとは
15. 教育と訓練と教育・訓練の違い
7.力量(ISI9000)と能力(ISO14000)とは
4.ジェネリックマネジメントシステム(GMS)とは
3.品質目標、環境目標設定の枠組みとは
2.マネジメントレビュー(経営層による見直し)とは
1. 要求事項とは
33. サービス提供の後でしか顕在化しない不具合とは
29. 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定のひとつとは
28. 監視機器及び測定機器 とは
26. 適切な設備を使用しているとは
25. 測定値の正当性の保証とは
23. 必要により作業手順が利用できる とは
22. 測定値の正当性が保証されなければならない場合にはとは
21. 是正処置において実施した活動のレビューとは
19. プロセスの妥当性確認とは
11. 「要求事項への適合に対するコミットメント」とは
10. 約束、コミットメント、責務とは
9.ISO9001の適用範囲(規格使用の目的)は
8.品質マネジメントシステムの計画とは
5.品質目標を設定する部門、階層とは
36. 運用管理とは
35. 外部コミュニケーション を行なう とは
31. 適用可能な法的要求事項 とは
30. 環境目的及び環境目標とは
27. 汚染の予防とは
24. 必要な変更を文書に反映するとは
20. 組織で働く又は組織のために働く人々 とは
16. 要員が訓練を受けていることを要求すること とは
14. 管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面 とは
12. 「著しい環境影響」「著しい環境側面」 とは
5.品質目標を設定する部門、階層 とは
13. 一般に品質方針は組織の総合的な方針と整合するとは
6.マネジメント(運営管理活動)の定義
|
|
36. 運用管理
日常業務の管理 の意 |
| (JISQ14001 4.4.6 運用管理) |
ISO14001 4.4.6項の標題は「運用管理」であり、「著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画すること」との要求事項が規定されている。日本語では「運用」は、「うまく機能を働かせ用いること」「活用」であり*2、資金の運用、法律の運用などと使われる。この4.4.6項では「著しい環境側面に伴う運用」というだけで、何を運用するのかが明らかでない。
そこで、なんとなく「環境マネジメントシステムの運用」と受けとめるのが普通であるが、「環境マネジメント
システムの運用」とは「環境マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、維持し、継続的に改善すること」である。
品質マネジメントシステムの運用管理」というのなら、4.2〜4.6項のすべてが相当する訳であり、4.4.6項だけが品質マネジメントシステムの「運用管理」というのはおかしい。
この疑問は原文の英語を見ると簡単である。 つまり、「運用」は“operation”であり、「運用管理」は“operational
control”である。 96年版では、JIS和訳は「運用及び活動」であり、原英語は“operations
and activities”であった。“operation”とは「異なる事を行なう複数の人々を巻き込んだ組織的活動」*1であり、事業組織の“operation”とは、事業活動であり、日々に行なわれている業務のことであり、経営管理(マネジメント)業務に対する日常業務である。 “operation”も“activities”も同じような意味であるので、2004年版では“operation”になったのではないかと思われるが、 規格では「活動及び製品・サービス」という表現をしているから、“operation”でなく“activity”を採用してもよかった。
「運用」は「日常業務」の意味であり、「運用管理」は「日常業務管理」の意味である。
海外の解説書では、operation(日常業務)の具体例として、例えば「製造、設計、購買、エンジニアリング、建設、保全、経理」*3とか、「設計及び
エンジニアリング、生産、保全、購買、営業、顧客サービス、設備の設置」*4を挙げている。
著しい環境側面とは組織が管理しなければならないと判断した組織が出す環境影響の原因のことである。
4.4.6項は、これら環境側面に関係する日常業務を管理することの必要を規定している。
*1 S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University
Press
*2 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6
*3 J.Kanholm: ISO14001 REQUIREMENTS, AQA Co., 1998; p.94
*4 S.L.Jackson: The ISO14001 Implementation Guide, John Wiley & Sons,
Inc.,1997; p.144
|
| このページの先頭へ |
H20.4.14 |
35. 外部コミュニケーション を行なう とは
外部へ情報発信する の意 |
著しい環境側面について外部コミュニケーションを行なうかどうかを決定する
(JISQ14001 4.4.3 コミュニケーション) |
ISO14001 4.4.3項(コミュニケーション)では、「内部コミュニケーション」と「外部コミュニケーション」との2種類のコミュニケーションを取り扱っている。 ここに、コミュニケーション の原英語は、communication であり、「人々に情報を与える行為」の意味*1である。 あるグループや組織の内部の多数の人々がそれぞれの情報を伝える状況は「情報の交換」であり、 ISO9001では、内部コミュニケーション(5.5.3項)に関する communication は「情報の交換」と定義されている*2。
ところで、ISO14001の「外部コミュニケーション」は同じ4.4.3項で、表現を少し変えて、その要求事項が2ケ所に分かれて記述されている。
そのひとつは、「外部の利害関係者からの関連するコミュニケーション」である。 これは、それを「受け付け、….、対応する」と規定されているから、組織が外部からの情報を受信して、それに応える情報を発信するという情報交換であることが明白である。
しかし、もうひとつは、「著しい環境側面についての外部コミュニケーション を行なう」と記述されているだけである。
これを「情報交換」と受けとめると、先の「外部からのコミュニケーション」の規定も著しい環境側面に関係する情報の交換であるから、こちらの情報交換と重複する。
この原英文を見ると、
to communicate externally about its significant environmental
aspects
であり、「著しい環境側面について外部へ情報を与える」である。 つまり、組織から外部の利害関係者への一方通行の情報発信である。規格書の付属書A「この規格の利用の手引き」は、この「外部コミュニケーション」の方法について、例えば、年次報告書、ニュースレター、ウェブサイト、地域での会合があると説明している(A.4.3)。 従って、「外部コミュニケーション を行なう」より、「外部に情報を発信する」という和訳の方が、規格の意図を的確に表し、わかり易い。
:*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、17 May 2001, N526R
|
| このページの先頭へ |
H20.3.16 |
34. 決定及び処置 とは
判断及び処置 の意 |
マネジメントレビューからのアウトプット に含めることが必要な事項
(JISQ9001 5.6.3/JISQ14001 4.6 マネジメントレビュー) |
ISO9001, 14001両規格は、それぞれのマネジメントシステムが「引き続き、適切で、妥当で、かつ、有効であること」を確実にするために、マネジメントレビューを行うべきことを規定している(5.6項/4.6項)。 規格は、トップマネジメントがこれを行うのに必要な情報をそれぞれ規定しており、トップマネジメントはこれら情報を評価、検討して、結論を出さなければならない。結論は、それぞれのマネジメントシステム の問題点とその対応についてであり、ISO9001の場合は具体的な3つの観点も明確にしている(5.6.3 a)〜c)項)。このトップマネジメント が下すべき結論、つまり、「マネジメントレビューからのアウトプット」には、それぞれの マネジメントシステム に必要な変更に関する「決定及び処置」を含まなければならない(5.6.3項/4.6項)。
この“決定”と“処置”であるが、トップマネジメントは変更のための“処置”を“決定”するということなら、日本語としての意味が通ずる。
しかし、英原文も any decisions and actions と両語を並列に並べている。 “処置の決定”以外に“決定”する何かがあるのかと考えても、マネジメントレビューの結論としての“決定”としては思いつかない。
「決定及び処置」とは違和感を覚える日本語であり、よく考えると意味が通じない、おかしな日本語である。
英語の decision は確かに「決定」であるが、これには2種類の意味がある。 ひとつは、「何か重要なことを決定する行為」であり、この意味の場合は不可算名詞として使われる。 もうひとつが、「何が最善かを考え、討議した後に下す選択又は判断(choice or judgement)」の意味であり、この意味で用いられる場合は可算名詞となる*1。 規格は decisions と複数形であるから、「選択又は判断」である。 別の辞書*2も、「決定する行為」と「考慮した後に到達した決定」の2つを挙げており、後者には同義語として「conclusion (結論)」が挙げられている。
decisions and actions は、「判断及び処置」という意味である。 情報を評価して情勢や問題をどのように判断したのか、そして、問題対応のための処置を決定したならその処置と合わせて、マネジメントレビューの結論にしなければならないという意味である。
原英文には anyが付いており、これをJISQ14001は「あらゆる」と和訳し、JISQ9001は日本語に含めていない。
これは トップマネジメントの結論として「あれば、そのすべてを」という意味であり、マネジメントレビューを行っても常に問題が見つかる訳ではないことを示唆している。
JIS和訳の「決定」も“決定する”という意味ではなく、結論としての“決定”という意味で使用されているものと思われるが、「決定及び処置」では「決定」の意味がぼけてしまう。
JIS和訳には、条文の意図をどう伝えるかでなく、何か機械的に日本語を当てはめているかの和訳が少なくないが、これもその典型である。
(1) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc |
| このページの先頭へ |
H20.1.28 |
33. サービス提供の後でしか顕在化しない不具合 とは
サービス引渡しの後でしか顕在化しない不具合 の意 |
プロセスの妥当性確認を必要とする プロセスに関して
(JISQ9001 7.5.2 プロセスの妥当性確認 |
ISO9001 7.5.2項(製造及びサービスの提供の妥当性確認)は、“プロセスの妥当性確認”の在り方を規定している。
同じ条項で規格は、“プロセスの妥当性確認”を行う必要のある場合を「製造及びサービス提供の過程で結果として生じる
アウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合」とし、検査や試験をしなくとも不良品又は不良サービスを顧客に流出させないための管理が“プロセスの妥当性確認”であることを明確にしている。
そして、「製品が使用され、又は、サービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないような
プロセス」も、“プロセスの妥当性確認”を行わなければならないプロセス に該当すると規定している。この場合の「サービスが提供されてから」の「サービス提供」は明らかに誤訳である。
なぜなら、この場合の原文の英語は、after the service has been deliveredであり、これは「“サービスが引渡された”後に」である。
ISO9001では、プロセス(業務)の結果は製品#1であり、 サービスも製品の一種#2である。サービス以外の製品を生み出すプロセス を規格は“production (製造)”と呼び、サービス を生み出すプロセス を“service provision (サービス提供)”と呼ぶ。この「製造又はサービス提供」が、7.5項の標題となっている。すべての業種に適用する汎用規格として、「製品」「製品実現」と1本で押し通されている表現も、この場合だけ“製造”と“サービス提供”との2つの用語を使用せざるを得ない。さらに、製品を顧客に引渡すことは、 “delivery (引渡し)”#3、又は、“release(リリース)”#4である。製品が サービスの場合も同じ用語である。すなわち、“サービス”という製品は、“サービス提供”というプロセス で生み出され、顧客に“サービス引渡し”される。普通は、この“サービス引渡し”も“製品引渡し”として一括表現される。 ここに、releaseは、組織の手元から離すという意味(1)で、 また、delivery は顧客の手元にもたらすという意味#5での、“製品の引渡し”である。
“サービス提供”の結果で生じる“サービス”の不具合が、“サービス引渡し”後になってはじめて顕在化するような場合には、“サービス提供”のプロセスの妥当性確認によって、不具合のある“サービス”が“サービス引渡し”されることのないようにしなければならない。
自動車車体外傷修理というサービス業では、修理するという“サービス提供”の後の外観検査でサービスの不具合は検証できるが、輸送というサービス業で届けた冷凍食品の品質の維持状況、つまり、サービスの不具合は、顧客の手元に届けて受領印をもらったという“サービス引渡し”の時点ではわからず、“サービス引渡し”の後に顧客が食べてみないとわからない。
JIS和訳のような「“サービス提供”されてからしか顕在化しない不具合」というのでは、すべての不具合がそうであるから、JIS和訳文では意味が通じない。
このJIS和訳は、 service provision と service delivery を混同した明白な誤訳である。
#1: ISO9000, 3.4.2; #2: 同, 参考1; #3: 7.5.5項; #4: 8.2.4項;
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University
Press |
| このページの先頭へ |
H19.12.20 |
32. 改善の機会 及び 変更の必要性 とは
改善の余地 及び 変更の必要性 の意 |
マネジメントレビュー における マネジメントシステムの評価
(JISQ9001 5.6.1/JISQ14001 4.6 マネジメントレビュー) |
JISQ9001、JISQ14001両規格のマネジメントレビュー は マネジメント活動のPDCAサイクルの
A に相当する活動である。 これをJISQ9001は「このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行うこと」(5.6.1項)、JISQ14001は「レビューは、環境方針、並びに環境目的及び目標を含む環境マネジメントシステムの改善の機会の評価及び変更の必要性の評価を含むこと」と規定している。なお。両日本文は微妙に異なるが、英原文は
quality と environmental の違いだけで、全く同じ文章である。
いずれにせよ、両JIS規格とも マネジメントレビューが「マネジメントシステム の改善の機会と変更の必要性」を評価する活動であると説明している。
ここに「改善の機会」というのは、わかったようでわからない日本語である。「改善の機会」と「変更の必要性」も同じことのようでもあり、違うならどのように違うのかがわからない。
「改善の機会」の原英語は、 opportunities for improvement である。 opportunity は、「特定の状況が何かを行う又はなし遂げるのを可能にする時機*1」、「状況、時機、及び、場所の好ましい組み合わせ*2」という意味(1)(2)である。確かに「何かをするのに好都合な時機」の意味(3)の日本語の「機会」であり、これを以てJIS和訳は「改善の機会」としているのであろう。
しかし、opportunity の語意(4)は「好ましい状況の組合わせに基づく可能性*3」であり、類義語としては chance, occasion(2)(4) やbreak(4)の他、 opening(成功の見込み)(2)(4), や、room(余地)(2), possibility, possibleness(可能性) (4)が挙げられる。英和辞典(5)でも、「機会、好奇、時機、しおどき」と共に、「可能性、見込み、自由度」が挙げられている。つまり、opportunity は、時機という意味の「機会」だけではなく、可能性という意味の「機会」として使われる英語である。従って、opportunities for improvement は「改善の機会」ではなく、「改善の余地」「改善の可能性」という和訳の方が適当である。実際、インターネットで opportunities for improvement を検索すると、書籍や論文の標題としてしばしば用いられている。この場合、大体は「改善の可能性のある事項」という意味であり、「(可能な)改善点」という和訳があてはまる。
このように、JIS和訳「改善の機会」は「改善の余地」の意味である。
トップマネジメントは、マネジメントレビューで情報を吟味して、品質、環境マネジメントシステム をその狙いや意図の達成に適当で適切で有効なものとして維持するために、方針や目標を含む業務の在り方、つまり、手順や資源について、改善できる点はあるか、また、変更の必要な点があるかを評価しなければならない。どちらもマネジメントシステムの手順や資源の変更であり、改善が目的であるが、前者は現状より適当、適切、有効なものに出来る可能性があるという意味であり、後者はそのようにしなければ現状または将来には適当、適切、有効でなくなってしまうという意味での、変更、改善である。規格の意図は、「改善の機会及び変更の必要性」ではなく、改善できる点と改善しなければならない点という意味での「改善の余地及び変更の必要性」である。
原文
*1 a time when a particular situation makes it possible to do or achieve something.
*2 a favorable combination of circumstances, time, and place
*3 a possibility due to a favorable combination of circumstances
辞書
(1) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) Merriam-Webster’s Online Thesaurus, Merriam-Webster Inc
(3) 広辞苑、第3版、新村 出、岩波書店、昭58年12月6日
(4) The American Heritage Dictionary of the English Language, Houghton Mifflin Co.
(5) 実用英語大辞典、海野文男他、日刊アソシエーツ、1998.6.26
|
| このページの先頭へ |
H19.9.17 |
31. 適用可能な法的要求事項 とは
適用される法的要求事項 の意
|
法的及びその他の要求事項の特定 / 順守の定期評価
(JISQ14001 4.3.2 法的及びその他の要求事項 / 4.5.2 順守評価) |
JISQ14001の4.3.2項(法的及びその他の要求事項)では、組織が「適用可能な法的要求事項」と「適用可能なその他要求事項」を特定しなければならないと規定されている。また、4.5.2項(順守評価)でも、組織が「適用可能な法的要求事項」と「適用可能なその他要求事項」の順守を定期的に評価することを規定している。両条項の意図に鑑み、また、日本語表現として、「適用可能な」には違和感を覚えさせられる。
これは、英原文の applicable が単純に「適用可能な」と和訳されているからであるが、この単語を含む英文の正しい意味は「適用される法的要求事項」「適用されるその他要求事項」である。
すなわち、各種の英語辞書で applicable を調べると、OALD*1は通常は名詞の前では使われないとの註釈の下に
applicable to 〜 を「〜の場合には真実と言える」という意味であるとし、同義語として
relevant (関連する)を挙げている。M-W*2は同じく同義語として relevant を挙げて、「適用されるのに必要な能力、資質がある」「適用されるに適切な」を意味すると説明している。更に、Webster*3
では「あてはまる(suitable)」「適合した(adapted)」である。またM-Wは用法例に
statutes applicable to the case (この訴訟に適用される法令) を挙げている。
capable が「可能な」を意味するとしても、applicable は適用が可能か不可能かの「適用可能」ではなく、「適用される」「該当する」の意味であり、「適用され得る」という意味である。
英和辞書でも、新コンサイス英和辞典*4は「適用できる、応用できる」と「(用途、目的に)あてはまる、適う、適切な」の2種の意味を挙げ、英辞郎*5は「適用できる、適切な、応用できる、適用される、当てはまる」と和訳している。また、英辞郎には、applicable
を含む英語の実務的な翻訳事例が多数掲載されている。例えば、適用される梱包仕様書
(applicable packing specifications)、適用しうる法定耐用年数 (applicable
statutory useful life)、適用規格 (applicable standard)、適用基準 (applicable
criteria)、関連文書 (applicable documentation)、関係法令 (applicable laws
and regulations)、当該期間 (applicable time limit)であり、いずれも applicable
に対して「適用可能な」ではなく「適用される」の意味に解釈した日本語が当てられている。
「適用可能な法的要求事項、その他要求事項」ではなく、「適用される法的要求事項、その他の要求事項」と和訳することが、原英語
applicable の正しい翻訳であり、日本語表現としての違和感を抱かせない、また、規格の意図を正しく反映した日本語文面である。
*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
*3 Webster’s Encyclopedia of Dictionaries, New American Edition *4 佐々木達:新コンサイス英和辞典、三省堂、1980.3.1
*5 EDPグループ:英辞郎、PDIC for Windows
|
| このページの先頭へ |
H19.8.7 |
30. 環境目的及び環境目標 とは
包括環境目標及び個別環境目標 の意 |
環境目的と環境目標の設定、実施、維持
(JISQ14001 4.3.3 目的、目標及び実施計画) |
JISQ14001の4.2.3項(目的、目標及び実施計画)は、組織が「文書化された環境目的及び目標を設定し、実施し、維持する」べきことを規定している。日本語では「目的」は「達成を図る事柄」、「目標」は達成の「目印」*2である。
つまり、何かを行う計画では"何のために"が「目的」であり、"何を、どこまで"が「目標」である。環境影響の継続的改善を図る規格における「実施計画」は環境影響改善の計画であろうから、その目的が「環境目的」であるなら「環境目的」とは環境影響の改善であるに決まっている。計画策定に当たり今更「目的」を設定するというのは奇妙である。
しかし、英原文では、「環境目的」は environmental objective
であり、「環境目標」は environmental target である。 例えば 英辞書*1ではobjective
を「達成しようとしているもの」とし、target を「達成しようとする結果」と記述しているから、どちらも同じ意味で「目標」である。JISQ9001は
quality objective を正しく「品質目標」と和訳している。
この同じ「目標」である “objective” と “target” の違いを、規格はその定義で明確にしている。すなわち、“objective”の「環境目的」(3.9項)とは、『「環境実績に関する全体的な意図及び方向づけ*」である「環境方針」(3.11項と整合する「全般的な環境到達点(overall environmental goal)」』である。 一方、“target”の「環境目標」(3.12項) は、この『「環境目的」を「達成するために設定し、満たす」ことが必要な「環境実績についての詳細な条件(detailed performance requirement)」』である。つまり、包括的又は概略の目標が“objective”の「環境目的」、それを構成要素に分けてそれぞれの目標にしたのが“target”の「環境目標」であるということである。
ISO14004の実践の手引き(4.2.5項)でも、「環境目的」が「製造作業のエネルギーの削減」、「環境目標」が「燃料と電気の単位生産量当たり対前年比10%削減達成」として例示されているから、「環境目的」は「目的」ではなく、「環境目標」の上位の概念の包括的目標という意味合いである。すなわち、多様な環境影響とそれぞれに多くの環境影響発生原因(環境側面)を抱える組織が、どんぶり勘定に陥らず着実に改善を進めるには、2段階で目標を設定することが効果的であるというのが規格の意図である。
従って、「包括環境目標」と「個別環境目標」が規格の意図に沿った和訳であるが、JIS9001が
objective に「目標」をあてているので、規格の使用に混乱を招かないために
environmental objective を「環境目標」とし、 environmental target を「環境個別到達点」とするのもよいと思われる。
*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日 |
| このページの先頭へ |
H19.3.30(修 4.14) |
29. 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定のひとつ とは
品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の尺度のひとつ の意 |
顧客満足に関する情報の監視
(JISQ9001 8.2.1 顧客満足) |
ISO9001の8.2.1項(顧客満足)では、組織は「顧客要求事項が満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているか」つまり、顧客満足の達成状況についての「情報を監視する」ことを規定している。JIS和訳はこれを、「品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の‘測定’のひとつとして」行うとしている。“測定”のひとつとして“監視”するというのはおかしな日本語である。
「・・・の測定のひとつとして」の原英文は、 as one of the measurements
of … であり、 measurements が「測定」と和訳されている。 measure や measurement
は“測定”を意味する英語であるが、measure には、動詞で「何かの重要性、価値、効果を判断すること」、名詞では「何かの大きさ又は強さの印」「何かを判断、測定する方法」や「判断基準、尺度」という意味もある。動詞形の
measure の名詞形であるmeasurement に、“判断基準”“尺度”というような意味を直接的当てている辞書はないが、「何かの大きさ、長さ、量」や「測定により得られた数、程度(extent)、量」という表現で、それと近い意味のあることを示唆している。
翻訳者用辞書“英辞郎”は performance measurement の和訳として、“測定”の他に(行政の)業績“指標”を挙げている。これに関連する米国の「政府業績成果法(Government
performance and results Act)」に関する情報をインターネット上で検索すると、行政府の業績評価に関して
performance measurement を業績“指標”の意味で用いており、measurement をmeasure
と同じ“判断基準”“尺度”の意味で使っている文例が散見される。 実用的な英語で、measurement
は “判断基準”“尺度”を意味するという左証である。
そして、欧米の規格解釈において、このas one of the measurements
に関連する説明では、しばしば、 measurement ではなく、measure が使われている。例えば、ISO/TC176
は2000年版発行に際する声明で、この顧客満足に関する情報の監視について、as
a measure of system performance と表現し、D.Hoyle氏やTC176の商業本の説明でも
measurement でなく measure を用いている。英米の専門家は measurement を“測定”ではなく“尺度”の意味に受けとめている。
このように、8.2.1項の as one of the measurement は、「“測定”のひとつとして」ではなく、「“尺度”のひとつとして」である。品質マネジメントシステムは、組織が顧客満足向上を目指し達成するための業務の体系である。組織は、品質マネジメントシステムの実績を評価する“尺度””指標”として、「顧客要求事項が満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているか」という「顧客満足」に関する情報を監視しなければならない。
|
| このページの先頭へ |
詳しくは<sub32-02-29> |
28. 監視機器及び測定機器 とは
監視及び測定の手段 の意 |
製品の適合性実証に必要な監視機器及び測定機器の決定
(JISQ9001 7.6 監視機器及び測定機器の管理) |
ISO9001の7.6項は、製品の適合性を実証するために行う監視及び測定に使用する「監視機器及び測定機器」の管理について規定している。この「監視機器及び測定機器」は、原英文では、
monitoring and measuring devices であるから、 device が「機器」と和訳されていることになる。
device は、「装置、機器、半導体素子、デバイス、仕掛け(仕組み、機構、道具)、工夫(計画、案、対策、手段)」であり*1、「特定の仕事をするように手はずされたもの(an object)又は装置(a piece of equipment)」「特定の結果又は効果を生み出す何かを行う方法(a method)」である*2。 形のある“機器”だけでなく、仕掛け、機構、対策、手段、計画、対策などをも意味する用語である。
規格作成者のひとりであるC.MacNee氏ら*3は「すべての種類の手段(tools)及び手はず(arrangements)であり、アンケート調査の質問票のようなものも含まれる」と説明しており、D.Hoyle氏*4は、装置(hardware)に限らず広く、情報を捉えるソフトウェア、方法(method)、感応子(sensor)を意味し、人の感覚、認識、面談、質問票、態度、知識を含むと説明している。
さらに、通常の計測器など「計器、ソフトウェア、測定標準、標準物質、補助装置」は規格では、measuring
equipment (同;3.10.4)であり、そして、7.6項の校正や検証の要求事項を含む
a)〜e)も、 measuring equipment に対する要求事項である。 JISはこれも「測定機器」和訳している。因みに、ISO14001(4.5.1項)の「監視及び測定機器」も
equipment である。
規格における監視及び測定の対象は、製品の特性だけでなく、顧客満足や手順の遵守、計画の進捗、業務の効果的実行など品質マネジメントシステムに係わる種々の行為、出来ばえ、状況、状態である。因みにこのようなものもすべて“特性”で表現される(ISO9000;3.5.1)。そして、製品も伝統的な工業製品だけでなく、ソフトウェア
や サービス を含むから、工業製品に伝統的な計測機器では監視や測定のできない種類の特性が多くある。
監視及び測定の device は規格の意図では、「機器」に限定されるものではなく、監視及び測定の「手段」という意味である。
JIS和訳は、device も equipment も「測定機器」である。このことが、7.6項で標題や第1節で用語
device を、第3節では用語 equipment をと、それぞれ異なった用語を使用している規格の意図をわかりにくくしている。すなわち第1節の「製品の要求事項への適合の証拠を提供するのに必要な『監視機器及び測定機器』を明確にすること」の『監視機器及び測定機器』は、「監視及び測定の手段」の意味である。組織は監視、測定が必要と判断したなら、検査機器や計測器を使用するのか、計算機で判定するのか、目視観察、判断か、データ照合かなど、監視、測定の対象の特性に対してふさわしい「手段」を決めなければならない。そして第3節の趣旨は、「監視及び測定の手段」のひとつである「監視機器」については、必要なら校正や検証を行わなければならないということである。
なお、ISO14001の「監視及び測定機器」(4.5.1項)は、monitoring and
maesurement equipment であるから、「機器」で問題 ない。
*1: 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26
*2: S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*3: C.MacNee他: Transition to ISO9001:2000, BSI Publications,2001; p.44
*4: D.Hoyle: ISO9000 Quality systems Handbook,Butterworth-Heinemann,2001; p.513
|
| このページの先頭へ |
H19.1.17(修: 1.18)(追: 2.7) |
27. 汚染の予防 とは
汚染の防止 の意
|
環境方針に含む トップマネジメント の コミットメント
(JISQ14001 4.2 環境方針) |
ISO14001は組織が環境パフォーマンス、つまり、環境に関する組織の業績を改善していくことが狙いである。これを規格は「汚染の予防」と呼び、これについて
トップマネジメントが環境方針で誓約することを求めている。
「汚染の予防」の原英語は、prevention of pollution であり、prenventive action が「予防処置」(3.18項)と和訳されたのと同じように、こちらの prevention も「予防」と和訳された。 prevention の本来の意味は、「何かが起きないように前もって処置をとる」という意味(1)であり、辞書には擬古的用法としての「何かが起きるのに備えている」という意味も挙げられている(2)。しかし、「誰かが何かをするのを止める」「何かが起きるのを止める」という表現で「前もって防ぐ」という意味を殊更に強調しない辞書(3)もあり、一般に「予防」と単なる「防止」の両方の意味で使われている。 例えば、「カメラのぶれを防ぐ(prevent cameras shake)」「〜の折れ曲がりを防ぐ(prevent 〜 from becoming crimped)」などは、単なる「防止」の意味の例文(4)である。 preventive action の場合は、その定義から「予防処置」という和訳が適切であるが、英語の
prevent は必ずしも「予防」ではないのである。
ここに「汚染の防止」とは、「有害な環境影響を低減するために、あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物質の生成、排出又は放出を回避、低減又は制御する、工程、方法、技術、材料、製品、サービス又はエネルギーの使用*」と定義(3.18項)されている。要するに、汚染物質を組織の外へ出さないようにすることであるが、現実には汚染は組織の外に出てしまっているから、汚染の“予防”を
トップマネジメントが誓約するというのは実態に合わない。
規格のprevention of pollution に「予防」の意味が含まれることは間違いないが、規格の意図は、起きていない汚染を「予め防ぐこと」(5)だけではなく広く、汚染を起こさない、広めない、悪化させないということである。すなわち、「汚染の防止」である。
引用文献
(1) Merriam-Webster Inc: OnLine Search,Thesaurus, www.m-w.com
(2) Merriam-Webster Inc: Collegiate Dictionary
(3) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(4) 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26
(5) 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日
|
| このページの先頭へ |
H18.12.27 |
26. 適切な設備を使用している とは
製品実現の計画で定められた設備を使用する の意 |
管理された状態での製造及びサービス提供
(JISQ9001 7.5.1 製造及びサービス提供の管理) |
ISO9001 7.5.1項(製造及びサービス提供の管理)では、製造及びサービス提供を管理された状態で実行するための要件を規定しているが、このひとつが「適切な設備を使用している」(同 c) 項)である。 これは the use of suitable equipment の和訳であり、「適切な」の原英語は suitable である。これは目的や状況に適っている*1ことを意味する言葉で、規格も「目的、状況、人の性格などに合っている又は適切である」と定義*2している。「合っている」という意味であるから、日本語では「適当な」の方に近い*3。
94年版では4.9項(工程管理)で、工程を管理された状態で実行するための要件として設備に関しては、「適切な設備の使用」(同
b)項)、「必要に応じて設備の承認」(9同e) 項)、及び、「工程能力を継続的に維持するための設備の適切な保全」(同
g) 項)を規定していた。このいずれの「適切な」も原英語は suitable であり、b)
項は use of suitable equipment と2000年版 7.5.1 c)項と同文である。
所定の結果を出すのに十分な設備を導入し、その能力を維持することに関するe)項とg)項は2000年版では、「製品要求事項への適合を達成するのに必要なインフラストラクチャーを決定し、準備し、維持する*」との規定(6.3項)に引き継がれて
いる。 残るb)項の「適切な設備の使用」が表現も同じでそのまま、7.5.1 c) 項のJIS和訳「適切な設備を使用している」になったと考えるのが自然である。
すなわち、7.5.1 c) 項の「適切な設備を使用している」とは適切に保守、保全された設備を使用するという意味ではなく、目的に適った設備、合った設備を使用するという意味である。組織は注文を受け、製品に対する顧客のニーズと期待を決定し
(7.2.1項)、これを製品の品質目標とその他の要件(7.1 a)項)として展開し、その達成のための手順と資源(同
b) 〜d) 項)を定め、準備し、そのような製品実現の計画の通りに製造又はサービスの提供が行われるように管理する(7.5.1項)。
7.5.1 c) 項の「適切な設備」つまり「合った設備」を使用するとは、製品の品質目標達成のために必要として製品実現の計画で定めた設備を使用するということであるから、
「定められた設備を使用する」或いは「所定の設備を使用する」という意味である。
*: 筆者の和訳
*1: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2: ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、N526R
*3: 新村 出: 広辞苑、岩波書店、S61.10.6 |
| このページの先頭へ |
H18.12.8 |
25. 測定値の正当性の保証 とは
妥当な測定結果を得ること の意 |
測定機器の校正又は検証
(JISQ9001 7.5.6 監視及び測定機器の管理) |
ISO9001 7.6項では測定機器の管理に関して、
Where necessary to ensure valid results, measuring equipment shall be ……として、a)
calibrated or verified ….
など a)〜e)項の要求事項を定めている。 これをJISは、「測定値の正当性が保証されなければならない場合には、a)
校正又は検証をすること・・・・」と和訳している。
この和訳の「・・・・が保証されなければならない場合には」の部分が、英文では「・・・が保証されるために必要な場合には」の意味であることは、先に(No.22)で明らかになった。そこで、この和訳の前半の「測定値の正当性が保証される」という部分であるが、英文は前記のように、to
ensure valid results であるから、valid results が「測定値の正当性」に、to
ensure が「保証される」と和訳されていることになる。 これは適切な英文和訳とは言えない。
まず valid であるが、根拠があり又は適法であるという点で「妥当な」「有効な」という意味*1であり、7.3.6,7.5.2項では validationが「妥当性確認」と、同じ7.5.6項では validity が「妥当性」とそれぞれ和訳されている。また、ensure はJISでは一貫して「・・・を確実にする」であり、4.2.2項でjustification に「”正当な”理由」との日本語が当てられているように、この条文のensure も「・・・を確実にする」で問題なく、むしろ適切である。従って「測定値の正当性が保証される」は、「妥当な結果を確実にする」である。
7.6項ではこの条文の前に、「監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できること」との規定◆があり、必要な測定精度にふさわしい精度を持った測定機器を使用することの必要を規定している。つまり、精密な測定には高い測定精度の測定機器を使用しなければならず、粗い精度の測定値でよければ相応の低精度の測定機器でよいということである。このように必要な精度の測定機器で測定された結果の測定値が valid results であり、「妥当な測定結果」である。従って、「測定値の正当性が保証される」ではなく、「妥当な結果を確実にする」であり、「妥当な測定結果を確実に得る」という意味である。
この条文を原英文に則って解釈すると、JIS和訳の「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」は、「妥当な測定結果を確実に得るのに必要な場合には」という意味であることになる。条文全体としては、「測定値の“正当性”を保証されなければならない場合には校正又は検証を行う」のではなく、「必要な精度の測定値を得るために校正又は検証が必要な場合にはその校正又は検証を行う」である。
◆(註釈) この条文の正確な意味については、こちら(No.28) を参照
*1 Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary |
| このページの先頭へ |
H18.10.22 |
24. 必要な変更を文書に反映する とは
文書の必要な変更を実施する の意
|
是正及び予防処置の文書化
(JISQ14001 4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置) |
JISQ14001:2004の 4.5.3項では、不適合と是正処置、予防処置の手順についての要求事項を規定した後に、「組織は、いかなる必要な変更も環境マネジメントシステム文書に確実に反映すること」という規定をしている。 この文章では、「必要な変更」というのは是正、予防処置のための必要な手順の変更を指していると想像されるが、それなら手順の変更はすべて文書化しなければならないという意味になる。
しかし、「プロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために必要な」手順のみ文書化すべきとの規定(4.4.4
e)項)で示されているように、すべてを文書化するには及ばないとするのが規格の文書化の原則である。
この部分の英原文は、次の通りである。
any necessary changes are made to environmental management system
documentation.
・・・・・・・(1)
この changes are made to ….documentation が、「変更を文書に対して行う」と解され、「変更を文書に反映する」という和訳文があてられたのであろう。
しかし、この英文は意味の上では、次の文と同じである。
any necessary changes to environmental management system
documentation are made. ・・・・・・・(2)
ここに、change to 〜 は change in 〜と同様に、「〜の変更」の意味*であるから、(2)は「文書の必要なすべての変更を行う」という意味であることがわかる。
ただし(2)のような構文では主部が述部より長くてバランスが悪いので、同じ意味を表す場合は(1)のような構文が用いられるのが普通である。
例えば change is made to 〜 を含む文章をインターネットで拾うと、次のように枚挙の暇がない。
◇ A change was made to this Notice on April 19,2006 (本通告の変更は2006年4月16日に行われた)
◇ A change was made to the database upgrade code (データ更新用コードの変更が実施された)
◇ A change was made to the statement regarding the use of weapons
in security operations. (治安活動での武器使用に関する声明が変更された)
◇ When a change is made to the page, the chart goes out. (ページに変更を加えたところ、図が消えた)
従って、この条文は原英文に則ると、「変更の文書への反映」ではなく「文書の変更の実施」の意味であり、 「是正、予防処置のために手順を変更する場合、その手順が文書化されているなら、『組織は、文書の必要なすべての変更を行うことを確実にしなければならない』」という意味になる。
なお、同趣旨の条文は96年版にもISO9001の94年版にもあったが、原英文の表現が(1)と異なっているためか、適切に和訳されていた。
<ISO14001:1996, 4.5.2項>
組織は、是正及び予防処置に伴う文書化した手順のあらゆる変更を実施に移すこと
−The organization shall implement any changes in the documented procedures
resulting from corrective and preventive action.
<ISO9001:1994, 4.14.1項>
供給者は、是正処置及び予防処置に伴う手順書の変更をすべて実施すること。
−The supplier shall implement any changes to the documented procedures
resulting from corrective and preventive action.
* Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press |
| このページの先頭へ |
H18.9.20 |
23. 必要により作業手順が利用できる とは
必要により作業手順書が利用できる の意 |
製造、サービス提供の管理された状態での実行
(ISO9001 7.5.1 b) 製造及びサービス提供の管理) |
<作業手順>
ISO9001 7.5.1 b)項では、「製造、サービス提供を管理された状態で実行すること」とした上で、「管理された状態には、『必要により作業手順が利用できる』ことを含む」と規定している。この原英文は、
Controlled conditions shall include the availability of work instructions,
as necessary である。 instruction は、「あるものをどのようにするのかについての詳細な情報」(OALD)であるから、
work instruction は、作業の方法に関する詳細情報という意味になる。
<work instruction>
英語では work instruction は、このような内容の文書の名称となっていることが少なくない。実際、ISO9001においても、work
instruction は作業の手順を規定した文書という意味である。すなわち、ISO/TR10013:2001(品質マネジメントシステムの文書類に関する指針)では、「品質マニュアル」「手順書」と共に、「指示を与えないとそれによって悪影響が発生する可能性のある仕事全てについて記述した」文書として
work instruction を挙げている。 この旧版のISO10013:1995(品質マニュアル作成の指針)の階層化された文書体系の中にも、「品質マニュアル」「品質システム手順書」に続く第三階層文書の「他の品質文書」として
work instruction が「書式」「報告書」と共に例示されていた。更に、TC176作成の支援文書のひとつISO/TC176/SC2/N525R(13
March 2001)でも、規格が規定する「文書化された手順」以外の「プロセスの効果的な計画、運用、管理に必要な文書」として
work instruction, test instruction が挙げられている。
<作業手順書>
このように、ISO9001においては work instruction は「作業手順書」のことを指す。 なお、この他の部分の文書としての work instruction は、JISは「作業指示書」と和訳している。 7.5.1 b)項は「作業手順が利用できる」ではなく、「作業手順書が利用できる」である。製品の製造或いはサービス提供が組織の意図したように間違いなく実行されるためには、作業手順が確立しているだけでは十分でなく、作業手順が文書化されていることが必要な場合があるということを指摘した規定である。 これに関連して規格は、プロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実にするために必要であるとの文書化(4.2.1 d)項)の意義を明確にし、製品実現の計画(7.1 a)項)では当該製品にどのような文書が必要かを決定すべきことを規定しており、これら文書が必要な時に必要なところで使用可能な状態にするような文書管理(4.2.3 d)項)も規定している。このような文書が 7.5.1 b)項の作業手順書である。
(OALD): Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
|
| このページの先頭へ |
H18.8.21 |
22. 測定値の正当性が保証されなければならない場合には とは
測定値の正当性が保証されるために必要な場合には の意
|
測定機器の校正又は検証の実施
(ISO9001 7.6 監視機器及び測定機器の管理) |
<測定機器の校正又は検証>
ISO9001 7.6項では、測定機器の管理に関する要求事項 a)〜e)項を定めており、この中で「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」「測定機器を校正又は検証をすること」との規定がある。この英原文は、
Where necessary to ensure valid results, measuring equipment shall be calibrated or verified ….
である。JISでは valid results を「測定値の正当性」、Where necessary to ensure 〜 を「〜が保証されなければならない場合には」と和訳されている。
<従属接続詞 Where と省略>
他の項にも Where appropriate(7.4.2, 7.5.3項)、ISO14001にも Where
necessary(4.4.7項), Where practical(4.4.7項) という同様の構文があり、「〜の場合には」などと和訳されている。
この Where は「〜の場合に」の意味の従属接続詞であり、Where に始まる文節は主節に対する従属節である。この従属節では
it is が省略されているが、it は「〜すること」との表現の主節全体を指している。例えば
Where necessary なら、「そのことが必要な場合には、・・・・・すること」又は「・・・・することが必要な場合には、その・・・・をすること」と丁寧に訳すとわかり易い。
<不定詞の形容詞的用法と名詞的用法>
ところで、 it is を加えた規格条文の Where を除いた文章、
it is necessary to ensure valid results
では、不定詞 to ensure の用法上で2種類の解釈が可能である。第一に副詞的用法では、to ensure はnecessary を修飾するから、it (「それ」、つまり、主節の内容)が「必要」で、なぜ必要かというと「〜を保証するために(to ensure 〜)」である。これは規格の他の部分の Where 節と同じ構文、意味である。第二の名詞的用法では、it は to ensure を指す形式主語であるから、「必要」なのは「〜を保証すること(to ensure 〜)」である。JIS和訳は、まさしくこの構文解釈に依っている。
しかし後者では、従属節の「〜を保証する」の主語は暗黙的に「組織」であるから、主節の主語の「測定機器(monitoring
equipment)」との関係で文法上の「分詞構文の従属節と主節の主語の不一致」という誤りになる。従って、ここでは名詞的用法はあり得ない。すなわち、原英文の意味は、「測定値の正当性を保証するために校正又は検証が必要な場合には、その校正又は検証を行うこと」である。
<英語圏解説書の説明>
英文解釈の点ではまず絶対的に正しい英語圏の解説書の本条文の説明の例を挙げるが、いずれも「測定値の正当性を保証するために必要な場合には」である。
@ 必要な測定精度を確保するための必要に応じて、次のような方法で測定機器を日常的に管理すること: a) 検査及び試験機器を校正すること
A ISO9001では、測定値の正当性を保証するためにそれが必要な場合には、測定機器を校正、検証に供することが必要である
<結論>
英原文では「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」でなく、「測定値の正当性が保証されるために必要な場合には」であり、そのような場合には測定機器の校正、検証が必要であるという意味である。現実の業務において測定値の正当性つまり正確さがどうでもよいというようなことはなく、しかし、使用によっても狂いようのない、校正不要な測定機器はある。この現実を反映したのが規格の条文である。
(註) 論点を拡散させないため、JISの「測定値の正当性を保証する」という日本語表現を使用したが、これも不適切で誤解を生み易い和訳である。こちらへ |
| このページの先頭へ |
詳しくは(32-02-22) |
21. 是正処置において実施した活動のレビュー とは
実施した是正処置をその後に見直す の意 |
効果的な是正処置に必要な手順
(ISO9001 8.5.2 是正処置) |
ISO9001 8.5.2 f)項は是正処置の手順に関する要求事項のひとつとして、「是正処置において実施した活動のレビュー」を行うことを規定している。これについて同項の後にISO原文にはないJISだけの「参考」が付され、「f)における”是正処置において実施した活動”とは、a)〜e)の一連の活動のことである」との註釈が加えられている。
しかし、ISO9001の原英文は単純で、reviewing corrective action
taken であるから、「とられた是正処置をレビューする」である。つまり、レビューする対象は「是正処置において実施した活動」ではなく「是正処置」そのものである。JISの「参考」の表現に則すると、レビューの対象は「a)〜e)項の一連の活動」ではなく「d)項で決定し、実施した処置」である。
ここに「レビューする」とは review であるから、「見直し」であり、「注意深く再調査又は再検討する」「過去の事象を顧みる」の意味*2である。規格では名詞形の review を「対象事象がその目標の達成に適当か、適切か、有効かを決定するために行われる活動*」(ISO9000 3.8.7項)と定義し、効率的かどうかを決定する場合もあると「参考」で付記している。しかし、「適当で、適切で、有効であることを確実にするためにレビューする」(5.6.1項)という表現があるし、ISO14001:2004では「有効性をレビューする」(4.5.3 e)項)となっているから、動詞形の review に名詞形の場合の定義をそのまま適用することは適切でない。元々 review はISO9000の定義のように特定の観点で見直すということではないから、規格の動詞形のreview の場合には、それぞれの場合に必要な観点で物事を「見直す」という意味として解釈するのがよい。
そこで、8.5.2 の手順では、d)項で再発防止に「必要な処置を決定し、実施」し、e)項で「とられた処置の結果」を記録しているから、その処置が効果的であること、つまり、是正処置であるに足ることを確認して、その証拠を残している。従って
f)項の「とられた是正処置のレビュー」とは、この是正処置をとってしばらく経過した後に、その処置が適当か、適切か、効果的か、効率的かどうかを再調査、検討することを意味する。この再調査、検討を
マネジメントの実務から考えると、再発防止に力点を置くため是正処置は一般に過剰処置気味となるから、問題の鎮静化した時点でコスト、能率、安全など他の要素に対して問題を起こしていないかなどの観点を含めて見直しをして全体として最適な内容に修正することに相当する。
なお、予防処置(8.5.3 e)項)の「予防処置において実施した活動のレビュー」も「とられた予防処置のレビュー」である。また、ISO14001:2004では「とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする」と原英文に忠実に和訳されている。なお、この「有効性」にはISO9000の定義(3.2.14項)「計画した活動が計画通りに実行された程度及び所定の結果が達成された程度」を直接あてはめることには
マネジメントの実務としては問題がある。この「有効性」とは再発防止だけでなく全体最適という観点での「有効性」と解すべきである。
*1 Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary
*2 Oxford Advanced Learner’s Dictionary
*3 Webster’s Encyclopedia of Dictionaries
*4 The Free Dictionary.com |
| このページの先頭へ |
H18.5.29 |
20. 組織で働く又は組織のために働く人々
組織の従業員又は他組織(供給者)の従業員の意
|
環境マネジメントシステムの下で働人々
(ISO14001 4.2, 4.4.2項) |
組織の環境マネジメントシステムの下で働く人々を表す用語として、96年版の従業員(employees;4.2章)、要員(personnel;4.4.2項)、従業員又は構成員(employees
or members;4.4.2項)の各用語が、「組織で働く又は組織のために働く人々」に統一された。
この原英語はpersons working for or on behalf of the organization である。ここに、
work for 〜 は、
* 働いている(to have a job)*2
* 雇われている(to be employed)*3
* 賃金をもらって仕事をしている(to perform work regularly for wages)*1
の意味であり、
* 広告会社に勤めている(He works for an advertising company)
の用法のように、一般に会社員など組織に雇用されている従業員を意味する。
work on behalf of 〜 の on be half of は、
* 〜の代わりに (instead of )*2
* 〜の為になって(in the interest of )*1、
* 〜の代理で(as a representative of )*4
の意味であり、
* 妻がA氏の代わりに賞状を受け取る( His wife will accept the prize on
behalf of Mr.A)の用法のように、誰かに代わって何かを行うと意味である。
JIS和訳の「組織のために働く」の ”〜のために” というのは
“〜の代わりに” と言う意味での “ために” であって、”〜の利益のために”
の “ために” ではない。 つまり、「組織に代わって働く」という意味であるから、組織の従業員の仕事を代わって実施するということである。すなわち規格では、組織に製品、サービスを提供する供給者の人々を指す。
JIS和訳の「組織で働く又は組織のために働く人々」は、組織に雇用される従業員であれ、別組織の従業員であれ、組織の環境マネジメントシステムの適用範囲で組織の環境影響に係わる業務を行う人々はすべてということを表す表現である。
本事項の表現を巡り、「組織で働く ”又は” 組織のために働く」が
”又は” であることを理由として、「組織のために働く人々」が組織に雇用される者と別組織の者の両方を含むとする解釈は、on
behalf of の英語の意味を無視した誤った解釈である。ISO9001 の94年版まで存在したA
and/or B (A 及び/又は B) の表現が使われなくなった以降は、A and Bなら 「AもBも」であり、A
or B なら 「AかBのどちらか」でなければならないとする硬直的解釈は成り立たなくなっている。同じ2004年版のISO14001でも、規格の意図を勘案して柔軟に解釈すべき
and, or は多くあり、実際にほとんどは適切に解釈されている。 |
| このページの先頭へ |
2000.3.31 |
19. プロセスの妥当性確認 とは
所定の製品・サービスを生むという観点で プロセスが妥当なことを明らかにすることの意
|
監視、測定による製品品質の検証が不可能な場合 (ISO9001 7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認) |
ISO9001 7.5.2項の標題は 「製造及びサービス提供に関する『プロセスの妥当性確認』」であり、
同項では、「結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、その製造及びサービスの該当する『プロセスの妥当性確認を行う』こと」
が規定されている。
これら「妥当性確認」に係わる原英語は、前者が validation、後者はvalidate
である。 この英語に関しては、形容詞が valid であり、これは、根拠があり、又は適法であるが故に
「妥当な、有効な」という意味である。 valid の用法例としては、「有効期間内の旅券(valid
passport)」、「(提案反対の)正当な理由(valid reasons)」、「証明された理論(valid
theory)」がある。
validate は 「valid にする (to make valid)」 という意味の動詞である。
例えば、「理論を証明する(to validate a theory)」、「契約を法的に有効なものとする(to
validate a contract)」 のように、「それを立証できるような形で妥当なもの、有効なものとする」、
「妥当(有効)なことを明らかにする」という意味である。 「validation は名詞で
「valid にする行為、活動 (an act or process of validating)」であるから、「妥当(有効)性の明確化」であろう。
また、規格の定義(ISO9000 3.8.5)によると、validation は 「客観的証拠を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に関する要求事項が満たされていることを『確認』すること」 である。 この「確認」の原英語は confirmationであるから、「確かめる」という当人の認識や理解に関する行為ではなく、 証拠を示して他人に認識や理解を得る行為であり他人の認識や理解に関する行為である。
規格[TC176/N526R]でも confirm は、「公式合意によって valid にする (make
valid by formal assent)」 「〜を実証する(ratify)」と定義されており、「確かめる」ではない。 また、confirm と validate は同義語であり、confirm が 「疑いを除去すること」、validate が 「妥当であることを一般に承認させること」に力点を置く場合にそれぞれ用いられるという違いだけである。
従って、規格の validation は、「客観的証拠を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に対して妥当又は有効であることを『明らかにする』こと」
という意味である。 7.5.2項の「プロセスの妥当性確認を行う( validate any processes
for …..)」とは、そのプロセスの結果の製品・サービスが監視、測定によって要求事項を満たしていることを実証出来ないのなら、「プロセスが間違いなくそのような製品・サービスを生むという観点で妥当(有効)なものにして、そうであることを客観的証拠で示す」
ということである。
同項は引続き、「validation は、これらプロセスが所定の結果を達成する能力を有することを実証することでなければならない」と規定して、規格の意図する
validation が 「確しかめる」ではなく「証拠によって明らかにする(実証する)」であることを明記している。また、validationの定義(ISO9000
3.8.5)の 「客観的証拠を『提示する』ことによって、・・・・・・を『確認』する」 というJIS和訳も日本語として奇異であるが、これも
confirm を「確かめる」と解釈した誤りの結果である。
|
| このページの先頭へ |
詳しくは<sub32-02-19> |
18. 管理責任者 とは
トップマネジメントに代わって、日々の品質又は環境マネジメントを行う人 の意 |
管理責任者の任命と責任及び権限の付与
(ISO9001 5.5.2項/ISO14001 4.4.1項) |
ISO9001,ISO14001両規格ともトップマネジメントが「管理責任者」を管理層の中から任命し、本来の責任及び権限にかかわりなく品質又は環境マネジメントシステムに関して特別な責任及び権限を委ねる必要を規定(5.5.2項/4.4.1項)している。
「管理責任者」とは management representative のJIS和訳である。 固有名詞としての management representative は諸文献の中に見当たらないし、ISO9001,14001でも定義していない。 従って、単語2文字から成る普通名詞として解釈してよいと思われる。 普通名詞としての management representative は英文法上、ふたつの名詞から成る群名詞である。 ここに management は 「マネジメント(活動)」であり、 representative は 「本人(当事者)の有する権限を与えられて、代理人、補佐人、代役、受託人として他人(組織)を represents する者」であり、 represent は 「ある事に関して〜に代わる」 である。 群名詞として解釈すると、management representative とは、「権限をトップマネジメントから与えられた代理人として、トップマネジメントに代わってマネジメント(活動)を取り仕切る者」という意味になる。
management には「管理層」という意味にも使われるが、「管理層」の中から任命された「管理責任者」が「管理層に代わって管理層の業務をとりおこなう」というのは奇妙なことだから、この
management は 「マネジメント(活動)」 と解釈すべきである。このような representative
の用法には例えば、米国の会社の役職名のSales Representative(営業課長), Customer
Service Representative(顧客サービス課長)があるが、これらは、トップマネジメントから権限を与えられた代理人として或いは会社を代表して営業や顧客サービスの活動を行う人である。
また、政府の機関の通商代表部(Office of the U.S. Trade Representative)の長の役職名は
U.S.Trade Representative(米国通商代表)であり、日米貿易摩擦でしばしば登場した同代表は、大統領に代わって米国政府を代表して各国との貿易交渉という活動を行うのが役割である。
組織の「最高位でマネジメントを行う*」(ISO9000 3.2.7)のがトップマネジメントである。管理責任者(management
representative)は、トップマネジメントに代わって品質又は環境マネジメントを行う責任と権限をトップマネジメントから与えられた人のことである。
管理責任者は、いわゆるスタッフの立場ではなく、トップマネジメントと通常の組織構造の部門長との間に立つラインの責任者として日々の品質又は環境マネジメントを取り仕切る。
このことを規格は 「マネジメントシステムに必要なプロセスを確立、実施及び維持」(5.5.2 a)項)、「マネジメント
システムを確立、実施及び維持」(4.4.1 a)項) と表現している。 しかし、管理責任者は代理人であるから、マネジメント活動の状況や問題点を適宜トップマネジメントに報告し、問題対処の意見を具申し、必要な決定を求め、指示を仰ぐことが必要である。
これが規格の 「マネジメント システムの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告」(5.5.2
b)項)、 「レビューのために改善の提案を含む マネジメントシステムの パフォーマンスを報告」(4.4.1
b)項)である。
トップマネジメントは、組織全体のマネジメント、すなわち規格の表現では
「全体マネジメント(overall management)」 又は 「組織のマネジメント(organizational
management)」 を取り仕切るのが業務であるが、それ故にその一部の例えば品質又は環境マネジメントの活動の詳細にまで目を行き届かせることが困難な場合がある。
このような場合には、トップマネジメントはその次席者又は補佐役職者、或いは、品質又は環境問題を主管する機能部門の長に、それら個別マネジメントの日常を取り仕切らせるのが普通である。
マネジメント実務のこのような立場の人を擬したのが、規格の「管理責任者」である。
|
| このページの先頭へ |
H18.1.25 |
17. トップマネジメント とは
組織の管理層の最高位で品質又は環境マネジメントを行う人 の意 |
|
|
ISO9001,ISO14001両規格とも「トップマネジメント(top management)」の責任、役割を規定している。
management は、「事業、組(チーム)、組織をとりしきり、管理すること」、つまり、マネジメント又は運営管理という意味である。 同時にマネジメントを行う人々をも意味し、その場合はJIS規格では「管理層」と和訳されている。管理層の一人一人は manager(管理者)である。管理層は一般に、トップマネジメント(top management)、ミドルマネジメント(middle management)、ロアマネジメント(lower management)の3階層(2)から成る。
株式会社では株主が会社の「経営」を担う取締役を選定し、取締役会がトップマネジメントを雇用して、会社の日々の活動をとりしきらせる。 トップマネジメントは日本語では「最高経営層」(1)とも呼ばれ、一人一人は top manager である。 トップマネジメントの行うマネジメント(活動)も英語では top management である。 経営活動(business administration)とtop management活動との区別は実際上あいまいで、日本では、トップマネジメントをしばしば「経営」、「経営者(層)」と呼ぶ。
ほとんどの組織は機能別、階層別組織構造で事業活動の実行と管理を行っているが、トップマネジメントの意を体してこの各部門の業務をとりしきるのがミドルマネジメントであり、日本語では「中間管理層」である。
ミドルマネジメントの指揮下で部門内のそれぞれの業務の実行を直接的に管理するのが
ロアマネジメント であり、これは supervisory management(監督者層*)、first-line
management(第一線管理層*)とも呼ばれる。
規格のトップマネジメントはマネジメントを「最高位で行う個人又はグループ*」(ISO9000
3.2.7)と位置づけされているから、実際の組織では会社の社長など「最高経営層」に相当する。
品質、環境マネジメントを副社長、専務などの別の業務執行取締役の責任としている場合にはその取締役も規格のトップマネジメントになる。
さらに規格で「組織」とは、「会社、法人、共同事業*、企業、団体、慈善団体、個人事業者、協会、若しくはこれらの一部又は組合せ」(同 3.3.1
例)であるから、トップマネジメントは経営者(層)である必要は必ずしもなく、例えば会社の一部たる特定の事業所を「組織」として、品質又は環境マネジメントシステムを確立、運用する場合には、事業所長が経営層に属さなくともトップマネジメントとなる。
両規格の品質又は環境マネジメントシステムにおけるトップマネジメントの役割は、組織の管理層の最高位で品質又は環境マネジメントを行うことである。 規格でもトップマネジメントはマネジメント業務を直接取り仕切るのではなく、業務を分担するいくつかの部門から成る内部組織を構築し責任と権限を定めて(ISO9001 5.5.1/ISO14001 4.4.1)、各中間管理層に業務を依託する。 依託した業務がトップマネジメントの意図の通り実行されているかどうかは基本的には、内部コミュニケーション(5.5.3/4.4.3)や管理責任者からの報告(5.5.2 b)/4.4.1 b))などで日常的に、また、内部監査(8.2.2/4.5.5)で体系的に監視する。
このような業務の実行と管理に関して規格は、「組織は・・・・すること」と表現している。しかしトップマネジメント自身が実行しなければならない業務は「トップマネジメントは・・・すること」と規定し、また、実行を中間管理層に委ねるがその日々の管理はトップマネジメント自身で行う必要がある業務は「トップマネジメントは・・・・を確実にすること」と規定している。
(1) 吉田和夫他: 基本経営学用語辞典、同文館、H6.3.30
(2) 兼子春三: マネジメントの基礎、多賀出版、1996.10; p.148-149 |
| このページの先頭へ |
詳しくは<32-02-17> |
16. 組織は要員が訓練を受けていることを要求すること とは
組織は要員に訓練を受けさせるようにすることの意 |
要員に対する教育訓練
(ISO14001:1996 4.4.2 訓練、自覚及び能力)
|
JISQ14001 4.4.2項(訓練、自覚及び能力)では、「組織は、(中略)すべての要員が、適切な訓練を受けていることを要求しなければならない」と規定されている。
「組織は要求しなければならない」と言われても、「すべての要員が適切な訓練を受けていること」を誰に要求したものか理解に困る。
本来、要員の訓練を行なうべきなのは組織自身であるからである。 だから一般には、この日本語を重視しないで「組織はすべての要員は訓練を受けているようにしなければならない」というように解釈されている。そしてこれは、怪我の巧妙か正しい原文解釈である。
この意味不明な日本語条文の原因は、ISO14001だけでなくISO9001を含めて規格の規定のことを意味する requirement を「要求事項」と呼ぶことにも関係する、原英語の require の問題のある和訳にある。 すなわち、この require なる英語は、
to claim as by right (権利として要求する)
と共に、単に
to need (必要とする)
という意味を持っている。 従って例えば、
I reqire to go to school today.
は、「私は学校へ行く必要がある」とか「私は学校へ行かなければならない」という意味である。
4.4.2項の原英文は、require が shall(〜しなければならない)と共に用いられ、
The organization shall require 〜
であるから、「組織は、すべての要員が適切な訓練を受けていることを "必要としなければならない"」という意味である。 つまり、「組織はすべての要員が適切な訓練を受けているようにしなければならない」であり、このように和訳すれば容易に意味が通ずる。
requirement は an essential condition (必要条件)の意味であるのに、「要求事項」と和訳されたことから、規格の「〜しなければならない」を審査合格のための規格の「要求」であるかの解釈が広く行なわれている。
4.4.2項は requirement が「要求」ではなく「必要」の意味であることを裏付ける傍証でもある。
★ ISO14001:2004改定
ISO9001との整合化のための条文記述の変更により、上記表現はなくなった。
|
| このページの先頭へ |
H16.7.15(追;H17.7.4) |
15. 教育と訓練と教育・訓練 (JISQ9000 6.2/JISQ14001 4.4.2)
教育は学校教育、訓練と教育・訓練は業務遂行能力に関する組織の教育
の意 |
JISQ9001では、「教育」「訓練」「教育・訓練」と3つの類似の日本語が使用されているが、原英語は、education と training であり、「訓練」も「教育・訓練」も training である。 ISO14001では training は常に「訓練」と翻訳されているから、JISQ14001 の「訓練」と JISQ9001の「教育・訓練」「訓練」は皆同じである。
education と training の意味の違いに着目して各種辞書で調べると、education は学校教育、training は職業訓練の意味で使い分けられていることがわかる。例えば Oxford Advanced Learner's Dictionary では、education は「知識と技能の向上のために、教える、訓練する、学ぶ過程(特に学校や大学で)」であり、training は「仕事をするのに必要な技能を学ぶ過程」と区分は明確である。
日本語ではどちらかというと、知識の習得が「教育」で肉体的能力の習得が「訓練」という風に受け取られる。
しかし、規格の training は組織の業務遂行に係わる要員の能力向上の教育のことであり、技能に限らず、知識も認識/自覚も対象としている。
訓練(training)は、組織の中で行なわれることが多いが、組織外の研修や資格取得の講習も
training である。 これに対して、高校、大学、専門学校など公式の学校教育制度の下での教育のことが
教育(education) である。
企業では、人を新たな仕事につける際には、その人の力量(JISQ9001)又は能力(JISQ14001)を評価して、必要な教育訓練を施すのが普通である。
その時には学歴と履修科目(「教育」)、職歴や役職、前の会社での仕事(「経験」)、或いは、国家資格や免許が証拠となる特別な技能や専門性(ISO9001のみ「技能」)が判断の基準となる。これらの尺度で新業務を委ねるには問題がある場合は、必要な力量/能力をもたせるように教育訓練する。これが規格の「訓練(training)」である。
訓練(training)は、認識(JISQ9001)又は自覚(JISQ14001)に関して管理者の人々への働きかけにもしばしば活用される。
規格では、要員がその仕事に力量/能力があることを「適切な*教育、訓練、経験、技能(ISO9001のみ)」を根拠として判断すべきことを規定している。
ここに「教育」は学歴や履修専門学科、「訓練」は組織が主体となって行なう人々の業務遂行の意識と知識、技能に関する教育訓練のことである。「マニュアルや手順書の教育」は、規格の意図の「訓練」であろうか。
★ ISO14001:2004改定
JISQ14001:2004では4.4.2項の表現がISO9001(6.2項)と同じようになったが、翻訳では
educationは「教育」と不変だが、training には「訓練」と「教育訓練」が用いられるようになった。
|
| このページの先頭へ |
詳しくは<32-02-15> |
| 14. 管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面( | |