ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

解説
   ISOマネジメントシステム 構築
このセクションでは、ISOマネジメントシステムを "構築"するとはどういうことか、実務の視点で考えます。
目  次
システム構築とは
マネジメント と
マネジメントシステム
(入門解説編)
ISOマネジメントシステム
選択の指針






ISOマネジメントシステム 選択の指針 23
”MS 実務の視点”で、
ISO9001(品質マネジメントシステム)、ISO14001(環境マネジメントシステム)
及び OHSAS(労働安全衛生マネジメントシステム)の各マネジメントシステムの特質
について考え、組織の適用の選択に対する指針を提示します。
目 次
.各マネジメントシステムの特質
.マネジメントシステム 選択の指針
 

.各マネジメントシステムの特質
<共通の特質> 
    −組織の経営目的達成のための運営管理活動に関する規格
   ISOマネジメントシステム規格もコンソーシアム規格のOHSASも、組織を指揮し管理する活動に関する規格である。各規格はそれぞれの経営目的の達成を図るための業務活動(マネジメント;運営管理活動)の在り方を規定している。その方法論も、課題を抽出し、方針、目標に展開して課題解決を進めるという継続的改善のPDCAを廻すということで、どの規格にも共通している。ISO9001で特に強調されているがどの規格も、関係する諸業務を有機的に結びつけて、目的達成に向けてそれら業務を体系的に実施するという、"プロセス"を基本とする"システム"としての業務展開を意図している。 各マネジメントシステム規格は、その取り扱う経営目的がそれぞれ、顧客満足向上、環境負荷低減、労働災害防止と異なるだけである。


<品質マネジメントシステム(ISO9001)>
    −組織の事業の存立を担う基幹業務体系
   ISO9001の品質マネジメントシステムは、顧客の期待とニーズを把握し、顧客が買ってくれる製品、サービスを開発し提供していくためにどのように組織を運営管理すべきかを規定している。製品の品質やそれが顧客に受け入れられることは、いわば事業活動の目的そのものであるから、意識すると否か、あるいは、明示された手順があるか否かによらず、ほとんどの組織でこれらを目的にしたマネジメントが現実に行われている。ISO9001 品質マネジメントシステムは、組織の事業の存立を担う業務体系であり、組織の大半の機能や部門、要員が係わる基幹マネジメントシステムである。
 
   品質や顧客を扱うマネジメントは、営業、設計開発、生産、設備、人事、購買などの各マネジメントの主要部分と重なるかこれを包含しており、組織内の業務の多くはこのマネジメントシステムの構成要素である。このようなマネジメントを、規格に則って体系的な活動にするということは、売れる製品を提供し続けるという規格の目的を実現するだけでなく、品質マネジメントシステムの方法論が他のマネジメントにも影響を及ぼし、組織全体の運営管理活動(全体マネジメントシステム)を体系的活動に転化することを容易にする。
 
   特に中小規模の組織では、ISO9001 品質マネジメントシステムに他のマネジメントの業務を取込むようにして、組織の全体マネジメントをこの品質マネジメントシステムの枠組みに統合して運営管理活動を行うことで、業務の効率化を図ることができる。
 
 
<環境マネジメントシステム(ISO14001)>
    −環境影響を低減させるための業務体系
   ISO14001の環境マネジメントシステムは、製品、サービスとそれを生み出す活動に係わる環境への悪影響の低減に組織が効果的、効率的に取り組むための業務の運営管理の在り方を規定している。ISO14001は、地球環境保全への組織の自発的取組みを支援する目的で制定された。このシリーズにはISO14001で使用する技法、手段に関する各種の規格が定められている。
 
   大抵の業種では、品質とは異なり環境は事業目的ではなく、付随する負の要素であり、環境マネジメントはこれを管理する専門技術的な活動である。環境マネジメントは公害防止に端を発して組織のマネジメントに織り込まれた経緯から、普通は生産マネジメントの一分野と見做され、また、防災マネジメントと重なりあっている。しかし、顧客の環境志向の強まる今日、製品のもつ環境影響が組織の市場戦略上で重要性を増しつつあり、品質マネジメントの要素としての環境マネジメントの重要性が高まっている。
 
    ISO14001 環境マネジメントシステムは、組織の事業活動の特定の側面を担う活動であるから、全体マネジメント システムの中核とはなり難い。既存の生産マネジメントシステム及び品質マネジメントシステムと関連づけて構築し運用することが効果的である。
 
 
<労働安全衛生マネジメントシステム>
    −労働災害の潜在的危険性の低減を目指す業務体系
  規格の労働安全衛生マネジメントシステムは、組織の活動における労働災害、健康障害を防止するための活動の在り方を規定している。環境マネジメントシステムは労働安全衛生の側面を対象から除外しているので、環境や緊急事態に係わる労働安全衛生もこのマネジメントが取り扱う。
 
    経営目的達成には具体的な手段や技法が必要であるが、マネジメントシステム規格であるので、本規格も組織が用意する手段や技法をどのように用いるかを規定しているだけである。ただし、日本では、労働安全衛生法その他の法律が 安全確保のための各種の手段や技法に対して基準を設定している。 労働安全衛生マネジメントシステムを必要とする業種の組織では、古くから労働災害の防止のためのマネジメントが、多くの場合、特別な組織体制まで確立して、実施されている。このマネジメントシステムには当然、労働安全衛生法の規定を基礎とし、同法の規定する種々の安全確保のための手段と基準が取り込まれている。
 
   規格の労働安全衛生マネジメントシステムは、法規制の組織の業務への確実な適用と遵守を図るマネジメントの業務体系とすることが効果的であろう。
 規格は災害リスクの継続的な低減を謳うものである。災害の防止を直接の目的としていない。規格が定める労働安全衛生マネジメントシステムに対して、労働災害撲滅という緊要の課題解決を期待するのは規格の意図に適うものではない。



.マネジメントシステム 選択の指針
<業務体質の強化を図る組織>
  全般的に業務の効率化を図ろうとする組織は、ISO9001の品質マネジメントシステム規格を適用するとよい。中小規模の組織では、品質マネジメントシステムの枠組みの中に他のマネジメントの要素を織り込むことによって、組織全体の運営管理活動を一体的に行うことができる。また、顧客満足向上という組織の基本経営目的の実現を図るという範囲の広い業務活動を通じて、組織の他の業務との関係の整理、体系化が行われ、組織全体の効率的な業務体質をつくりあげることができる。
 
   この目的で規格を適用する場合は、第三者審査は組織の業務に対する純粋に客観的、専門的な評価として活用すればよいし、審査登録に拘泥しないなら自己宣言でよい。
  ISO14001をこの目的で適用するのは この規格のマネジメントシステムの性格から、効果的ではなく、効率的でもない。また、労働安全衛生マネジメントシステム規格の適用は、ISO9001でマネジメントの基盤ができた後が効果的であると考えられる。
 
 
<市場競争力の強化を図る組織>
   顧客満足向上による顧客の確保、売り上げ拡大を目的とするISO9001 品質マネジメント システム規格を適用することが効果的である。
 
   ISO9001:2000は、組織が顧客に提供する製品、サービスを顧客の期待とニーズに合致させることで顧客に製品、サービスを受け入れてもらうという製品満足しか対象としていない。しかし、今日の顧客満足は、製品の品質や性能を越えて、環境問題への取組みをはじめとする遵法、倫理、社会的責任にまで評価尺度が拡がっている。環境、防災、遵法、リスク回避などとの連携の中で、品質マネジメントシステムを運用していくことが大切である。
  また、ISO9001の登録取得の事実を、組織の顧客重視の姿勢を訴える手段として積極的に利用することが得策である。
 
   
<環境問題に取組む組織>
   組織の製品、サービスに係わる環境影響を低減させたい、させなければならない組織はISO14001規格の適用が効果的である。環境への取り組みの動機は、法規制への対応、地域社会との調和、顧客のニーズと期待への対応、市場参入条件への適合、社会的責任の負担など多様であるから、それぞれに焦点を合わせた、システムの構築、運用が大切である。
 
   環境問題への取り組みは基本的に組織に出費を強いる、且つ、自主的な活動である。また、ISO14001は、環境パフォーマンスを少しずつ改善していく仕組みであるので、効果の見えにくい活動である。単なる規格要求事項への適合ではなく、システム構築、運用を組織の利益に資するものとなるような、取り組みの焦点、システム運用の評価、顧客や地域社会への広報など十分考慮することが大切である。
 
 
<労働災害、健康障害に問題意識を抱く組織>
   規格の労働安全衛生マネジメントシステム規格を適用することが、法の定める安全衛生確保の手段や基準を効果的に適用し遵守することを通じて、着実に状況を改善することができる。
 
   規格の適用に当たっては、規格の狙いは災害危険性の継続的低減であり、それを目指した活動を行えば第三者認証審査は合格するのであって、現実の災害発生の有無とは直接関係がないことに留意することが大切である。殊に、日本の他のマネジメントシステム規格の適用に見られるが如き、審査合格の"形"を重視するシステムでは、災害の発生という明確な事実で、その有効性を否定されることになろう。
 
 
<市場参入の条件を得たい組織、顧客から登録取得を求められている組織>
   顧客の求めるマネジメントシステム規格を適用することが第一である。しかし、顧客は目的をもって登録取得を求めているのであるから、組織のマネジメントシステムの構築、運用はこの顧客の意図に焦点を当てることが大切である。単純に規格のすべての要求事項に適合を図る取り組みでは、顧客の意図が実現しないかもしれないし、顧客の意図と無関係な業務に力を注ぐ無駄を生じることにもなる。
 
   顧客の規格適用要求は形だけの登録取得でないことを忘れてはならない。、顧客の登録取得要求の背景を正しく理解し、対応することは、組織の顧客満足獲得の絶好の機会と考えることが大切である。
 
 
<供給者の成績の向上を期待する組織>
  供給者から提供される製品、サービスの品質は、供給者の業務の結果であるから、組織の望む製品、サービスを安定して得るためには、供給者の業務を管理することが本質的である。第三者認証審査制度を伴ったマネジメントシステム規格の登録取得を求めることは、組織にとって効率的で効果的な供給者の管理方法である。
  組織の供給者に対するニーズに対応したマネジメントシステム規格を指定すればよいが、供給者の製品の環境負荷低減がニーズの場合には、ISO14001の適用かあるいはISO9001の適用で製品の包括的な品質の管理を求めるか、検討する余地がある。また、構内下請け作業会社の安全成績が自らの利害となる組織にとっては、供給者に労働安全衛生マネジメントシステム規格を求めることが効果的であると思う。
H15.4.7

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