ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

   
論評
   ISO マネジメントシステム   時事評論
ISOマネジメントシステム規格に関係のあるする最新の報道、ウェブサイト、その他の情報について、
組織の利益に照らしての規格と認証制度の意義と有効性の観点から考えます。
   

、読者の本記事の使用による如何なる結果にも責任を負いません。
用いた情報の真実性には責任を負いません。情報の詳細、発信者の意図に関しては原情報をお読み下さい。


 
No.3   免震・耐震ダンパーの検査データ改竄不祥事は認証業界の大失態 :H30.11.6
  日本製品が品質で世界を席巻していた1980年代のある日、英国の会社の営業マンが日本企業に部品を売り込みに来た。部品は必要な品質機能も満たし、低価格で魅力的であった。しかし購買担当者は、あの老大国の名も聞いたこともない会社の製品であり、安かろう悪かろうではないかと心配になる。そんな時、営業マンは「我が社は品質日本に倣った製造管理体制の下で材料調達から設計、製造、検査、さらに出荷、輸送まで管理しており、そのことは政府管轄認証機関によって認められ、定期的に監査も受けています。不良品を出さないようしっかり管理していますので安心して下さい」と、鞄からBS5750規格の登録証を持ち出した。
 
  購買担当者はそれなら買ってみようかと考える。そして、納入された製品が契約の通りであり、その後の長い期間の取引でも、受入検査での軽微な不良品はゼロではないが、他の日本企業と遜色ない品質保証水準であることが確認された。品質重視の経営を正しく行ない良い製品を提供する企業が無名でも顧客に選ばれ、発展するきっかけを得ること、これが品質保証規格と認証制度の効用である。英国産業復興のためにサッチャー首相が発案したこのような仕組みが、後にISO9001規格の発行とJABも参画するIAFの下の国際的第三者認証制度に発展した。
 
  ところで、10/21報道の川金HD社による免震・耐震ダンパーの検査データ改竄不祥事では、10/16報道のKYB社の免震ダンパー*1と同様に、制振ダンパーの製品検査不良率は30%とあり得ない高さであり、不良品を再調整工程に回すことなく検査データの書き換えだけで済ましてきた、不正が当該工場での生産開始時点から行われてきた点で同質である。よって実態は検査員の横着によるデータの改竄ではなく、定められた製造方法では大量の検査不良が発生し、再調整に回していると生産活動自体が成り立たないということである。両社の経営者は、このように検査不良品も良品として出荷するという品質保証体制を前提に設備投資を行ない、要員を配置し、手順を定めて、注文をとり、生産活動を行ない、免震・耐震ダンパー製造販売事業を行ってきたということである。
 
  ISO9001の登録証を掲げて、つまり、「我が社は、顧客満足の製品を提供するためのISO9001の製造管理体制に則って製品を製造しており、このことは公正な認証機関から審査を受けて認められています。不良品を出さないようしっかり管理していますので安心て下さい」と嘘をついて注文をとっていた組織が2社になった。 こんな事態においても、JABや認証機関はなお平然としている。
 
*1: No.2.  KYB社の免震改ざん不祥事は検査不正か H30.10.23 

No.2   KYB社の免震改ざん不祥事は検査不正か H30.10.23
   ISO9001認証取得企業による昨秋以降の一連の検査データ改竄不祥事は、一年を経過して9/1の電線大手フジクラに引き続き、10/16には油圧機器メーカーのKYB社の免震・制振装置の性能検査記録データの改竄が報じられた。報道によると、製品の性能検査で不合格となった製品を分解、再調整すべきところが、それには5時間を要し、月120本の検査に検査員が1人しか配置されていなかった等の背景から、検査員が生産計画の日程を守るために再調整の代わりに検査データを改竄した、改竄が8人の検査員に引き継がれてきたとされている。報道は原因をこれまでの検査データ改竄と同種の検査員と現場管理者の品質意識の問題として扱っているが、本質は別のところにあるように思える事実がある。
 
  すなわち、同社が社長名で行ったウェブサイトでの10/16付けの事情説明では、不正の疑いのある2003~2018年の間の免震用ダンパーの出荷総数は5,232本で、この内の検査データを書き換えたものの総数は2,413本である。書き換えは検査で不合格となった不良品に対して行われたとされるから、免震用ダンパーの製品検査不良率は46%ということになる。また、別の一覧表では検査の合格範囲は目標±15ないし10%であるが、不合格品出荷の特にひどい5事例の実績値は目標に対して+16, +18, +20, +32, +42%のはずれというから、平均不良率が46%ということもうなずける製品性能のばらつきの大きさである。
 
  一般に量産品で検査不良率が46%もあり、不良品は手直しして出荷するというような生産活動では、品質保証上、製造コスト上、納期達成上で健全な事業活動の推進はとても無理というのが常識である。同社が、このような製造管理体制で必要な生産を行ない利益を挙げて18年間も事業を継続できてきたということは、経営者以下管理者に検査データの改竄こそが検査の目的であると見做す暗黙の共通認識があり、改竄が前提で要員が配置され、設備投資が行われ、生産活動が行われ、その管理が行われてきた結果であるに他ならない。これに、需給が売手市場であること、及び、出荷した製品の性能が顧客に実際に試される機会がないという製品の特徴が幸いした。
 
  本件不祥事に関しては認証機関には、検査データ改竄を認証審査でなぜ見落したのかというようなことではなく、このような品質保証意識と日常業務及びその管理体制の実態の同社になぜ顧客満足の追求により事業の健全な発展を図る優良企業という証の登録証を発行したのかに関する検討が必要である。

No.1   ISO45001/JIS45001/JISHA-適格OSHMS基準、 労働安全衛生三規格が乱立  : H30.10.10
  9/28付けでISOの労働安全衛生マネジメントシステム規格のJIS版、JISQ45001と共に、いわゆる「日本版マネジメント規格」としてのJISQ45100(安全衛生活動などに対する追加要求事項) が発行された。勧進元の中災防によると、ISO45001に盛り込まれなかったKY活動などの安全衛生活動を織り込んだ日本独自の規格であり、「JISQ45001との一体運用でさらなる安全衛生水準の向上が期待できる」とのである。一方、中災防はこれまで通りJISHA方式適格OSHMS基準認定を続けるので、世評では今後日本では3種類の労働安全衛生マネジメントシステムなるものの認証が行われることになり、どれを選ぶかは組織次第ということだそうだ。
 
  規格化すなわち工業標準化の意義は、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について、経済・社会活動の利便性の確保、生産の効率化、公正性の確保、技術進歩の促進、安全や健康の保持、環境の保全等のそれぞれの観点から、統一又は単純化すること」とされている。それであるなら3規格が乱立する状況は、規格化で防止しようとする混乱、不利益を社会にもたらすもの以外の何物でもないが、この見方は単純すぎる。
 
  ISO45001は世界の労働安全衛生規範を定め遵守を強制する国際機関ILOが世界標準とは認めていないが、関係者の合意によって決められる民間規格としてはそれは問題ではない。この規格の規定を満たすことが世界標準の労働安全衛生水準を実現し維持する組織であると見做そうという合意の下で組織が規格を用い、認証機関が適合の登録証を発行することに用いられる規格であるからである。認証はそのような世界標準の管理の下でその結果の安全衛生水準を維持する組織であることを顧客や社会に保証するものである。
 
  JISHA認定は厚労省の労働安全行政の一環としての労働基準監督署に対する労災再発防止対策報告のためなど、厚労省傘下のJISHAが組織に労働災害防止ための管理のあり方を指導し、評価し、そのような組織であることを認定するものである。認定は管理体制の不備により重大災害を起こした組織が再発防止を図り、労働安全行政が目指す安全衛生水準を実現、維持するための管理体制づくりを支援することが目的である。ISO45001認証とは目的が異なり規定の狙いも異なるから、両者は併存可能であり、これを乱立と言うことがおかしい。
 
しかし、JISQ45100は、その1章にJISQ45001より組織がやるべき事項を増やして「安全衛生水準の更なる向上を目指すことが目的」と書かれているから、組織や社会にはどちらの安全衛生水準を狙うのかの二者択一の問題である。しかし、実現が期待される安全衛生基準は明確ではないから、実際には選びようがない。しかも、無秩序化して社会を混乱させかねないどういう事情があったのか、どういう統一、単純化なのか、社会にどのような利益をもたらす標準化なのかわからない。
 
| ホーム  | ISO規格 | システム構築要求要項コンサルティング・研修海外の動向コンサルタントの切り口 | 海外の文献|
ISOマネジメントシステム規格  情報発信   サニーヒルズ コンサルタント事務所   名古屋市緑区