ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
13 ISO 認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従  (誤った認証制度運用)
KYB社の免震改ざん不祥事は検査不正か
<66-01-13>
< 要旨 >
   昨秋以降ISO9001認証取得企業による品質不祥事の報道が絶えない中、10/16にはKYB社による免震・制振装置の性能検査データの改竄が明らかにされた。報道によると、製品の性能検査で不合格となった製品は分解、再調整すべきところが、検査員が生産計画を守るために再調整の代わりに検査データを改竄したとのことである。報道は、原因を他社の検査データ改竄と同種の現場の品質意識の問題として扱っているが、本質は別のところにある。
 
  すなわち、同社の事情説明では、2003〜2018年の間の検査データを書き換えた免震用ダンパーの総数は2,413本であり、書き換えは検査不合格品に対して行われたとされるから、製品検査不良率は46%ということになる。一般に量産品で検査不良率が46%もあり、不良品は手直しして出荷するというような生産活動では、常識的には健全な事業活動はできない。 同社が、18年間も利益をあげ事業を継続できたということは、検査データの改竄が前提で要員が配置され、設備投資が行われ、生産活動が行われ、管理が行われてきた結果であるに他ならない。
 
  認証機関には、このような品質保証意識と管理体制が実態の同社に、なぜ顧客満足の追求により事業の健全な発展を図る優良企業という証の登録証を発行したのかに関する検討と社会に対する説明責任を果たすことが必要である。
 
 

< 本文 >

  日本ではISO9001認証取得企業による昨秋以降の一連の検査データ改竄不祥事は、一年を経過して9/1の電線大手フジクラに引き続き、10/16には油圧機器メーカーのKYB社の免震・制振装置の性能検査記録データの改竄が報じられた。報道によると、製品の性能検査で不合格となった製品を分解、再調整すべきところが、それには5時間を要し、月120本の検査に検査員が1人しか配置されていなかった等の背景から、検査員が生産計画の日程を守るために再調整の代わりに検査データを改竄したこと、また、改竄が8人の検査員に引き継がれてきたとされている。報道は原因をこれまでの検査データ改竄と同種の検査員と現場管理者の品質意識の問題として扱っているが、本質は別のところにあるように思える事実がある。
 
  すなわち、同社が社長名で行ったウェブサイトでの10/16付けの事情説明では、不正の疑いのある2003〜2018年の間の免震用ダンパーの出荷総数は5,232本で、この内の検査データを書き換えたものの総数は2,413本である。書き換えは検査で不合格となった不良品に対して行われたとされるから、免震用ダンパーの製品検査不良率は46%ということになる。また、別の一覧表では検査の合格範囲は目標±15ないし10%であるが、出荷された不合格品の特にひどい5事例の実績値は目標に対して+16, +18, +20, +32, +42%のはずれというから、平均不良率が46%ということもうなずける製品性能のばらつきの大きさである。製造管理手順がお粗末の限りである。
 
  一般に量産品で検査不良率が46%もあり、不良品は手直しして出荷するというような生産活動では、品質保証上、製造コスト上、納期達成上で健全な事業活動の推進はとても無理というのが常識である。同社が、このような製造管理体制で必要な生産を行ない利益を挙げて18年間も事業を継続できてきたということは、経営者以下管理者に、検査の目的が製品の性能データを採取することであり、結果によりデータを合格範囲内により書き換えることであると見做す暗黙の共通認識があり、或いは、検査手順書に直接的に明記されていないとしても、例えば、検査データの集計手順或いは品質管理用グラフにデータ改竄が標準的手順であることが窺えるものがあった可能性が高い。いずれにせよ、同社では検査データの書き換えは、検査員が勝手に行った職務違反行為ではなく、不合格品に対する検査データ改竄が前提で、要員が配置され、設備投資が行われ、生産活動が行われ、その管理が行われてきたのに違いない。同社が18年間もこんなことが出来たのは、需給が売手市場であること、及び、出荷した製品の性能が顧客に実際に試される機会がないという製品の特徴が幸いしたのだろう。
 
  18年間も毎年審査をしてきて、抜き取り審査だから、例えば08年版では「合否判定基準への適合の証拠を維持しなければならない(8.2.4項)」や「不適合製品の処理に関する“文書化された手順”を確立しなければならない(8.3項)」や「不適合製品に修正を施した場合には、再検証をしなければならない」(同上)というような規定の審査は一度もしてこなかったということではあるまい。18年間も気付かなかったのは、審査員の目が節穴だったか、被審査側が嘘の文書、データを示したかである。本件不祥事に関しては認証機関には、検査データ改竄を認証審査でなぜ見落したのかというようなことだけでなく、このような品質保証意識と日常業務及びその管理体制が実態の同社に、なぜ顧客満足の追求により事業の健全な発展を図る優良企業であるという証の登録証を発行したのかに関する検討と社会に対する説明責任を果たすことが必要である。
H30.10.23 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所