ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
12 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
審査での規格不適合を見落としに対する是正処置の実施は
認証業界の10年前の公約
         
<66-01-12>
(0) 概要  こちら
 
 
(1) 新たな不祥事の報道
  9月に入ってまたも新たな品質不祥事が新聞報道された。記事によると(株)クボタでは、圧延用ロールの検査成績表の不良試験値を合格値に書き換える等の不正行為が内部通報で判明したということであり、例えば硬さ値の書き換えはH15〜H30.7月の間の総出荷21,035本の内の16.7%に相当する3,512本にものぼったという。ISO9001は製品検査のあり方を規定しており、このような不正行為があれば2015年版では8.6項の規定「製品の合否判定基準への適合の証拠の記録を保持しなければならない」に関する審査において検出できる。本件品質不祥事も先報*1と同様、認証審査が普通に行われておれば、その断片を規格規定への不適合として検出し、関連業務に蔓延する不正な業務実行たる不祥事を検出できた。
 
 
(2) 認証機関の規格不適合の検出能力
  不祥事を見つけるのは認証審査の目的ではない。認証審査では、組織がISO9001規格の規定に従って品質保証関連業務を行っているかどうかを審査するのであるから、規定に従わない業務実行と結果、つまり、規格不適合を見つけるのが審査の目的である。従って、ISO9001認証組織において規格不適合が原因の品質不祥事が露見して新聞報道になるのは審査で見つけるべき規格不適合を見落としたことが原因ということになる。とりわけ、認証機関が報道を受けて臨時審査で規格不適合が検出されたのでその是正処置の完了まで認証一時停止処分にしたというような場合には、その不適合をなぜ定期の認証審査で見つけることができなかったのかと思うのが自然の感情である。
 
 
  しかし実際の審査では、審査員はこれら著名組織で検査データ改竄というような幼稚な違法行為が行われることは想定しないから、改竄が被審査側から明らかにされることが期待できない状況では、多いといえども16.7%程度の頻度のデータ改竄を限られた審査時間で見つけるのは難しいかも知れない。認証機関が審査が抜き取りであることによる確率論的頻度の見落としは起き得るし、警官ではないので隠されてはどうしようもないという言い訳が当てはまることもあり得る。従って、認証機関が規格不適合を見落とし、或いは、組織の不祥事を摘発できないことはあり得る。認証組織が不良品出荷ゼロ或いはクレームゼロでないように、現実問題として認証組織に不適合を見落として適合の証明の登録証を発行することはあり得る。
 
 
(3) 認証機関の責任と矜持
  問題はJAB及び認証機関が、これだけの多数の品質不祥事が新聞報道で明らかになり、認証審査でなぜ発見できなかったかと社会から非難されているのに、これら組織に対してその品質保証関連業務には問題がないとする規格適合性の証明のいわば虚偽の登録証、或いは、規格用語では狙いの顧客満足に反する不適合製品たる登録証を発行しているという事実に無頓着でいられることである。このような状況からは、認証業界の人々が、認証審査の目的が規格不適合の検出であり、組織に規格不適合のないこと、従って、品質不祥事を起こす芽もないことを保証する登録証の発行という社規的に重要な役割を果たすことを生業にしているということへの責任感と矜持を持っているようにはとても感じられない。
 
 
(4) 規格不適合見落としに対する「是正処置」
  何にせよ結果が狙い通りでなく、そのことが本来あってはならないことであると思うなら、何が悪かったか反省して二度と起きないよう対策をとるというのが世の中の常識である。ISO9001規格ではこれを「発生した不適合に対する是正処置」と呼び、これを繰り返すことにより狙いの結果を確実に出すことができる強靱な業務体質を目指すことを「継続的改善」と呼ぶ。認証機関の認定要件を定めたISO ISO/IEC17021-1規格*2でも、認証機関は認証活動で発生した不適合に対して再発を防ぐ「是正処置」をとる必要が規定されている。
 
  認証機関は、不祥事の原因の規格不適合を見落としたという認証活動の不適合に対して「是正処置」をとらなければならないし、様々な規格不適合見落としに「是正処置」を繰り返し行うことにより、不祥事の種々の原因の規格不適合を確実に摘発できる認証審査能力を身につけていくことができる。ISO9001の認証制度における認証機関たるもの、すべての規格不適合を検出できる業務能力を身につけ、以て品質不祥事をも摘発するという社会の期待に応えられる不断の努力をしていかなければならない。
 
 
(5) 是正処置実行の公約
  H20.3.14付けJAB文書「組織不祥事への認定・認証機関の対応について」*3は当時の不祥事多発による認証制度信頼性低下への認証業界の対応方針をとりまとめたものであるが、この中では、認証機関は自ら行った認証審査において見逃した不適合の再発防止に向けて必要な改善を速やかに実施すると書かれている。先報*1で述べた予防処置の実施についても「水平展開」として触れられている。また、JABはこれら改善をも採り入れ、認定・認証審査や制度の改善を進めると書かれている。
 
  JABのウェブサイトの8/8付の「品質データ改竄などの不適切行為報道に関連する認証について」の一覧表にはH29.10〜H30.7月分として22件の不祥事と、関係のISO9001認証取得22社、7認証機関の名がある。これによると、JICQAが9件、JQAとJIAがそれぞれ4件、LRQAが2件、JSA,BSI,TUVがそれぞれ1件の不祥事に関係する不適合を見落としたことになる。不祥事発生の時点のみで評価する限り、少なくとも多数の不祥事に係わっている認証機関が見落とし判明の都度効果的な是正処置をとってきたとは思えない。認証機関は、上記の22件の品質不祥事に関連して、認証機関のあり方の国際標準であるISO ISO/IEC17021-1規格に規定の「是正処置」と「継続的改善」、及び、上記の10年前の公約をどのように実行したのか、JABはそれをどのように管理したのかの説明責任があるのではないだろうか。
   
 
*1先報: 11. 一連の品質不祥事に対して必要な認証機関の予防処置 http://www.ms-jitsumu.com/sub66.html#11
*2規格: ISO ISO/IEC17021-1:2015 適合性評価―マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項
*3 JAB文書: 組織不祥事への認定、認証機関の対応について(組織不祥事対応検討会 報告書)、2008.3,
H30.9.19 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所