ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
07 ISO9001/14001 規格解釈と認証制度運用に巣くう権威主義と無批判・盲従
審査料金値引き規制、審査料金の消費者負担、審査簡易な新認証制度
という妄想
           
<66-01-07>
(1) JABシンポジウム 基調講演
  H30.3.20の第6回JABマネジメントシステム シンポジウム予稿集を入手した。これによると、今年のテーマはISO9001/14001の2015年版の有効活用であり、TC176国内委員会副委員長 山田 秀氏による「マネジメントシステムの第三者認証制度が目指すべき姿」と題する基調講演が行われた。テーマは、役に立たないとの組織の不満と認証組織の不祥事の相次ぐ報道や、認証登録数が10年前頃に頭打ちから減少に転じたという認証業界を取り巻く情勢変化への対応として、この15年間、時々の視点で議論されてきたものであるが、この基調講演はこれを2015年版規格を梃子としての認証制度の目指すべき方向の検討とその方策の提案という形で論じるものである。
 
 
(2) 社会から信頼され、活用される認証制度
  氏ははじめに、認証業界が目指すべきは「社会から信頼され、活用される認証制度」であり、それが、顧客による商品購入先の選択、企業による外注先の選択、取引開始時の取引条件のひとつとする等の形で認証の有無によって社会がその行動を変えることであると明確にしている。第三者認証制度創設の狙いが正しくこのようなことであったことは論を待たない。近年において報じられる不祥事が認証組織によって発生していることが、社会が登録証を信用しなくなった原因のひとつであり、登録証が企業や人々の行動指針となるほどには信頼性が高くないということである。基調講演の目標設定は、認証取得しても品質が改善しないので組織に不満があるというようなこれまでの論議と一線を画したものであり、真に信頼回復に資する問題解決策の提案が期待された。
 
 
(3) 取り組むべき課題
  氏は次に、2015年版規格が信頼され活用される認証制度となるために十分な内容になったと評価している。そこで、そのような好ましい状況下での取組むべき課題として、規格のマネジメントシステムを事業目的に役立てるよう組織が自律的に運用するべきこと、逐条審査から脱却して認証、認定審査を事業目的に応じたものとすべきこと、及び、認証制度の整備を挙げている。初めの2つの課題は、これまでの認証業界関係者の問題分析と対応策の提言と同様、責任と取組みを組織と審査員に押し付けるだけの権威主義的唯我独尊の提案であり、恐らくご本人もこれらが実行され実現して認証制度の信頼性が高まり、その活用が拡がるとは思っておられまい。
  
  3つ目の認証制度の整備では、「1. 持続可能なビジネスモデルへの転換」「2. 到達度合いが分かる日本独自の第三者評価制度」「3. 社会の受け止め方の調査」の3つの取組みのみ必要を挙げており、その中身であるが、1.は審査費用の消費者負担(税金での補てん)と審査費用の値引き競争の規制であり、2.は新しい認証制度の創出であり、3.は認証効果の実体評価である。すなわち、1.により組織の認証費用の支払いが軽減されて気軽に認証登録を受けることが可能になり、同時にJAB系認証機関の収入を安定させることができ、2.により規格作成機関や認証機関が新たな収入源を得ることになり、3.により登録数が増えるような世論を創り出すことを期待しているのであろう。従って、取組みの目的は、認証制度の活用の拡大、つまり、登録数の増加を信頼性の向上の結果として図るものではなく、登録数増加と認証機関の収入増加を直接的に図ろうとするものであり、動機は不純で、中身は強欲丸出しである。
 
  
(4) 認証業界の当面する事態と妄想
  認証業界の現今の最大の懸念は、認証登録件数が10年程前から頭打ちになり減少に転じたことにより、さらに、同じ頃から海外認定機関傘下の海外認証機関を中心とするいわゆる非JAB格安認証費用の認証機関が台頭し、近年ではJAB傘下の認証機関からの登録証の切り換えが加速するという事情により、JABと傘下の認証機関の経営問題の深刻化が進むことである。さらに、2015年版は10年間は改訂しないとして発行されたので、これまで頻繁な規格改訂により組織の認証制度への不満をそらしつつ、業界は規格解説や移行審査などで臨時収入を得ていたのが、今後はこれが期待できず収支悪化もこのまま進行する可能性が高い。
  
  基調講演でも登録件数の推移データを取り上げており、そのテーマ選択が近年の登録件数の減少と認証業界の経済的苦境を動機とするものであることは容易に想像できる。 テーマの「社会からの信頼性の向上」が認証制度を活用する組織、つまり、登録組織数の増加となって認証業界の繁栄につながることを意識したものであるとすると、テーマ選択は時宜を得た妥当なものである。しかしながら、基調講演の3つ目の課題取組みの認証制度の改革は、認証業界のためにひたすら登録件数を増加させようとするだけの認証制度の信頼性の向上とは無関係な取組みである。山田氏が認証業界の利益追求にしかならない取組みを、「社会からの信頼を高める」ための取組みとして挙げることは、認証制度は社会制度であってその活用の拡がりたる登録件数の増加がすなわち社会の利益になるという唯我独尊の妄想に業界首脳部が今日なおどっぷりと浸っていることの現れであろう。
H30.5.15 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所