ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修


論評
 
  実務の視点   ISO マネジメントシステム コンサルタントの切り口
このセクションでは、 MS 実務の視点主宰者が、ISOマネジメントシステム規格を取巻く種々の問題を取上げ、
実務の視点に立つ  ISO マネジメントシステム コンサルタント としての見方、考え方を披露します。
目  次
論 評
我田引水
ISO
マネジメントシステム

時事寸評
-メールマガジン-
マネジメントシステム
と規格

"MS 実務の視点"主宰者
ISOマネジメントシステム コンサルタント

岡          賢
名古屋市緑区旭出2-909
サニーヒルズコンサルタント
事務所
コンサルタント の プロフィール

"MS 実務の視点"
主宰者による
システム構築・運用支援
サービス


テーマ別  目次
-特定テーマで考える-
顧客満足
日立、原発事故響き巨額赤字
日航再建はブランド力回復がカギ
カルフール社業績不振で日本撤退
ミツカン ブランド重視の拡販戦略

テーマ別  目次
-特定テーマで考える-
不祥事
不祥事と登録証
リンナイの ISO認証再検討
不二家 ISO14001認証一時停止
不二家 ISO9001再認証されず
欠陥マンション会社  ISO9001認証ISO9001、曲がり角
三菱ふそう、ISO認証一時停止
品質不祥事
「白い恋人」賞味期限書換え
フジテック エレベーター規格外鋼材使用
偽装ミンチ食品会社を強制調査
生命保険でも不払い263億円
NECトーキ 製造ミスで最終赤字に
不二家 安全宣言、生産再開
不二家へ衛生管理で支援受け
データ捏造、番組打切り
不二家 期限切れ原料の使用
東芝、中国でパソコン販売自粛
ソニー、リチウ電池問題説明不足
揺らぐ日本の「品質神話」
日立、原発部品事故響き赤字
プール事故死 安全点検業者任せ
トヨタ RV車の欠陥を放置
誤発注で東証マザーズ市場混乱
美浜原発の蒸気噴出事故遠因
パソコン用ソニー製電池発火事故
東証の大規模システム障害(続)
東証の大規模システム障害
環境不祥事
トヨタを汚水排出で書類送検  
日本製紙 煤煙データ  改ざん
その他
全日空システム障害 原因究明
ベスト電器で回収家電大量紛失

鉄道マンの基本の徹底
構造計算偽装解明調査難行
約定急増で東証システム綱渡り

テーマ別  目次
-特定テーマで考える-
地球環境
環境悪化
温暖化、全地球に影響(IPPC)
中国、水不足や汚染深刻
異常気象 世界で猛威
過剰富裕化論の現実化
中国、日本の廃プラ輸入を禁止
環境改善
名鉄が エコムーブマーク で環境アピール環境対策、コストとのせめぎ合い
回収樹脂の自社再使用拡大
環境政策
経産省、省エネ投資支援
経団連が環境税創設に反対

テーマ別  目次
-特定テーマで考える-
他の適合性評価制度
環境
KES認証事業部が独立
環境省 産廃処理業者評価制度

環境省の環境管理認証制度
品質
マンション販売に住宅性能表示
有機JAS認証の不正表示
JAS認定機関業務停止命令
その他
UFJホールディングス 決算再修正

  ISO マネジメントシステム 時事寸評  
  −時事問題でISO9001/14001規格を考える−
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実務の視点が依拠する ISOマネジメントシステムと規格の論理と意図を、
新聞等で報じられる事件や問題を引用して考えます。
要求事項を実務に結びつけて考えることが、
規格理解の促進に役立つと思います。
目 次
<ISO マネジメントシステム 時事寸評 >
<No.1; H16.4.21>  顧客情報漏洩事件の特集記事    から
<No.139; H19.11.21>  キャノン、世界の拠点でISO14001統合認証   まで

<基本事項>
◆ 規格の適用、意義
◆ 認証審査、登録証
◆ マネジメントシステム



<ISO9001/14001 共通>
◆ コミットメント
◆ 品質方針、環境方針
◆ 法令、規制
◆ 文書、文書管理)
◆ 記録の管理
◆ 資 源
◆ 力量、能力、教育訓練
◆ 認識、自覚
◆ 購買管理
◆ 監視機器及び測定機器
◆ 是正処置、予防処置
◆ トップマネジメント
◆ マネジメントレビュー
<ISO9001>
◆ 品質、顧客満足)
◆ 製品、サービスの改善
◆ 内部コミュニケーション
◆ インフラストラクチャー、作業環境
◆ 製品実現の計画
◆ 製品に関連する要求事項
◆ 顧客とのコミュニケーション
◆ 設計開発
◆ プロセスの妥当性確認
◆ 顧客所有物の管理
◆ プロセスの監視及び測定
◆ 製品の監視及び測定
◆ 不適合製品の管理

<ISO14001>
◆ ISO14001 2004年改定版
◆ 著しい環境側面
◆ 実施計画
◆ コミュニケーション
◆ 運用管理
◆ 緊急事態への対応
◆ 不適合の管理

  規格の適用、意義 <基本事項>
<No.131; H19.7.12> −日本製紙 煤煙排出データ 改ざん−
 
日本製紙の釧路、旭川両工場で発電用ボイラー から排出される煤煙の記録データ 改ざんが発覚した問題で、同社は10日、新たに4工場で排出基準超過や報告義務違反、データ 改ざんといった大気汚染防止法などに抵触する法令違反が見つかったと発表した。富士工場では地元自治体との取り決めた「協議値」を超過していた上に報告書のデータの改ざんもしていた。関係各県などは立入検査を実施する予定 (日経新聞 7月5日号)。
   日本製紙は、地球環境への取組みを経営ビジョンに織込み、今年4月の「近年の環境に関する情勢変化を踏まえ6年振りに“環境憲章”を変更した」など積極的な環境取組みを ウェブサイトでも広報してきた。そしてこの一環として、全工場・事業所、事業本部及び研究開発本部でISO14001の登録取得をしている。ISO14001では法令など規制に関して遵守状況を責任者が定期的に評価し、その記録を残すこと(4.5.2項 遵守評価)、更に、トップマネジメント がこれを確認すること (4.6 a)項 マネジメントレビュー)になっている。また、H17年2月のJFEスチールの水質、同5月の神戸製鋼の大気の排出データ 改ざん事件は、トップマネジメントの意に反する末端の担当者の行為という点で関係者に衝撃を与えたが、規格はこのような事件を自社で防止する予防処置(4.5.3項)の手順を規定している。報道では同社がこれらのことをきちっとやってきたかどうかはわからない。しかし、同社の環境先進企業のイメージは今回の事件により失墜した。ISO14001は、組織が環境に関して経営の狙いを実現する、換言すると、社会のニーズや期待を裏切って経営が揺らぐことのないようにするにはどうすればよいか、ということを規定している。しかし、多くの組織が、どこまでやれば“規格の要求”を満たすことができるか、審査に合格する最低限のことをやればよいというような規格取り組みになっている。日本製紙のISO14001も後者で、登録証を壁に掲げ、ウェブサイトで発表するだけのものだったということである。
 
<No.128; H19.6.11> −コムスン介護事業譲渡問題で会長が会見−
 
事業取消し処分を受けた訪問介護最大手コムスンがその全事業をグループ内会社に一括譲渡しようとした問題で折口会長らが8日、記者会見した。同会長は譲渡計画を当面凍結すると表明したが、同時に介護事業継続の意向をにじませた。会見では「介護事業には思い入れがある」「お客様の介護を第一に」と事業に懸ける思いが繰り返し強調された。しかし、処分が下された理由は、管理者やヘルパーがいないのに虚偽の申請をしたりなど悪質なものだった(日経新聞 6月9日号)。
    同社は全国に 2,000余の事業所を展開し、従業員数24,000人にのぼるとされる。事業への思いを東京に居る会長が全拠点で実現させようと思うなら、経営管理の業務体系を確立し、それに則って業務が体系的に行われるようにすることが必要である。会長は思いを方針、目標として明確にし、その実現を図る業務の決まりや方法、基準を定めて文書化し、社員に徹底し、かつ、実際の業務がその通りに行われ、結果として自分の思いが実現しているかどうかを監視し、必要な指示、指導、方向づけの変更を行わなければならない。ISO9001、14001は、このような文書化を武器に経営者の思いの実現を図る経営管理(マネジメント)のPDCAサイクルを基礎としている。ISO9001は顧客満足向上、ISO14001は地球環境保全という点から、企業が健全な発展を目指す道筋を規定している。同会長の思いが会見で披瀝された通りであるなら、社内の業務の再構築を図るのにISO9001が貴重な手本となる。
   
<No.127; H19.5.29> −全日空システム障害 原因解明「まだ時間」−
 
 27日に130便もの欠航を出した全日空の予約搭乗管理システムの障害は、新規導入の3系統のシステムが原因であり、旧来のシステムに戻して復旧した。その後 システム開発にかかわった日本ユニシスなどと共同で原因究明を急いでいるが、「詳細が判明しておらず、解明にはまだ時間がかかる」という。原因がわからない状況では再発防止策もままならない(日経新聞 5月29日号)。
    新規システムがシステム障害の原因であるから、その操作に人為的なミスがなかったとすれば システム設計上の問題であり、新規システム自体に問題があるのか、新規システムと従来の関連システムとの関係に問題があるのかどちらかである。ISO9001では、設計開発の結果である システムのプログラム(7.3.3 設計開発からのアウトプット)について、設計開発の目標(7.3.2 同インプット)である機能、性能を満たしたことを確証(7.3.5 同検証)し、更に、当該プログラムが投入される全体システム環境においても正常に機能し、また、全体システムの機能に悪影響を及ぼさないことを確証(7.3.6 同妥当性の確認)しなければならない。この関係各社の当該業務部門がISO9001の登録証の下で業務を行っているかどうかはわからないが、いずれも著名な大企業であるからこのような品質保証の基本手順を踏んでいないとは思えない。それならば問題は、このようなシステム障害を防止できるほど効果的な検証や妥当性確認を行う能力、つまり、システムを取扱う組織としての固有技術能力に不足があるということになる。ISO9001は効果的な業務であるための必要条件を規定しているが、必要条件をどのように満たすかの手法や技術については何も教えてくれない。ISO9001の要求事項を効果的に満たすことはどの組織にも可能という訳ではない。登録取得組織が不祥事を発生させるのは、要求事項を満たしていることを“仕組み”と称される業務の形式で評価しているからである。
   
<No.124; H19.4.23> −登録件数急増でKES認証事業部が独立−
 
 京都で生まれた環境管理規格KESの認証業務を手がけるNPO法人KES環境機構がこのほど発足した。新法人は、京都市や京都工業会、市民団体などでつくる任意団体、京のアジェンダ21フォーラムのKES認証事業部が独立したもの。登録件数が全国で急増しているためで、法人格取得で社会的信用や認知度を更に高めるのが狙い(京都新聞 4月11日号)。
  KESは中小企業でも分かりやすく取り組みやすいといういわゆる簡易版ISO14001のひとつである。環境マネジメントシステムを唱えてはいるが、ウェブサイトの説明を読む限り実態は“著しい”環境影響を改善する運動を規定している。ISO14001は、環境問題を経営の課題のひとつに位置づけて、環境影響の改善を経営の目標の実現を図る要素のひとつに織り込むことを基本としている。ISO14001は環境責任を果たす経営管理の在り方を規定しており、その枠組みに環境改善運動を取入れることを否定してはいないが、環境改善運動自体がどうあるべきかを規定する規格ではない。同規格の序文はISO14001の意義について大略次のように述べている。すなわち、どの組織も環境を顧慮せずにはたちいかない時代になり、環境改善の種々な取組みをしてきたが、組織の環境影響の程度が今日も将来も法規制や利害関係者のニーズと期待を満たし続けることが保証されるような効果的な取組みであるためには、組織の経営活動と一体となった環境マネジメントの明確な業務体系に基づく取組みとする必要がある。
 
<No.122; H19.4.9> −温暖化、全地球に影響(IPPC報告)−H18.11.12>
 
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第二部会は6日、温暖化が「地球規模で目に見える影響を及ぼし始めた」とする報告書をまとめた。人間の社会活動が温暖化の原因であることを指摘し、平均気温の上昇幅を1990年比で2〜3度に抑えなければ海面上昇、洪水、暴風雨の被害や生物種の激減、サンゴ死滅など世界的に損失が拡大すると警鐘を鳴らした(日経新聞 3月23日号)。
   1992年の国連の“地球サミット”は、世界が21世紀の温暖化防止を初めとする地球環境保全にどのように取組むかを討議し誓約した会議であるが、ISO14001はこれに関連して、産業界を代表するBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)の要請により作成された。規格は、事業組織の地球環境保全責任の果たし方の世界標準である。規格の意図は、現場主導の環境改善活動ではなく、環境責任を果たすのに必要な環境投資、環境コストを事業発展と両立させる経営の戦略的判断を基礎とする環境改善施策の実行であり、施策は公害防止を含み、温暖化進行防止など地球環境改善へ寄与するものでなければならない。
 
<No.104; H18.11.12> −相次ぐ不具合で揺らぐ日本の「品質神話」−
 
 パソコンや家電製品の発火事故、自動車の大量リコールなど、日本企業の強みであった「品質神話」が大きく揺らいでいる。背景には日本企業の品質へのこだわりが薄れているという状況があり、デミング賞申請件数やQCサークル活動成果発表数も減少し、原子力発電のタービン動翼破損事故のように品質に対する認識を疑う事例さえ出ている(日経新聞 11月11日号)。
   ISO9001は、記事の「品質神話」を中心に同様の世界の成功企業の体験の背景を分析して、不良製品、品質事故を起こさないための業務のあり方を論理化し体系化したものである。記事はこのお手本となったはずの日本を代表する大企業で品質問題が頻発し始めたことを憂慮している。記事は「90年代の経営環境悪化で地道な現場の取り組みが重視されなくなった」ことが背景としているが、これら企業のものづくりのマネジメント或いは品質マネジメントの業務体系が放棄されたのではなく、規格の表現によると「効果的に実施していない」ということである。ISO9001は、各種業務のあるべき姿、つまり、要件を規定しているだけで、それら要件を満たす方法論は何も語っていない。しかし、その基本となる管理者のリーダーシップへの責任感(5.1項)と作業者の業務に対する自覚、認識(6.2.2 d)項)、これを育む情報伝達(5.5.3項)と人間重視の労務施策(6.4項)の必要を明確に指摘している。
 
<No.103; H18.10.22> −経産省、中小企業の省エネ投資支援−
 
 経産省は、二酸化炭素など温暖化ガスの削減につながる省エネ設備を購入する中小企業に政府系金融機関が通常より低い金利で貸し付ける「金利減免」制度を設ける。大企業に比べて遅れている省エネ対策を後押しし、地球温暖化防止のための京都議定書が定めた温暖化ガスの削減目標の達成を目指す(日経新聞 10月1日号)。
   組織にとって環境対策は投資やコストを伴うのが普通であり、この故に地球温暖化や、時には公害問題にさえ後ろ向きになりがちである。記事の制度は政府が主導して低利融資によりコスト負担を軽減することで中小企業に温暖化ガス削減取組みを促すことを目的としている。これに対してISO14001は、事業組織がコストを負担しても自主的に活動と製品の環境影響の削減を図る際の指針を示すものである。営利組織である以上は例え地球環境に対する貢献であってもコスト増に見合う利益が必要であるから、審査登録制度がISO14001に則って業務を行う組織を峻別し、広い利害関係者からの利益を得られることを保証する。規格の想定する利益とは、社会との良好な関係、有利な資金調達、安価な保険料、市場占有率強化、有利な新規取引、賠償責任を伴う事故防止、容易な許認可取得などである(ISO14004,0.2項)。 
   
<No.101; H18.9.26> −中国、水不足や汚染深刻−
 
 中国での水の汚染と不足が止まらない。急激な経済成長による水需要と汚染の拡大が中国人の健康をむしばみ、経済発展を妨げる恐れさえ出てきた。地方では「捨てるものになぜカネをかけるのか」とか「排水規制違反で罰金を払う方が安上がり」として汚水処理施設に冷淡な経営者が多い(日経新聞 9月25日号)。
   ISO14001は、このような公害を含めて組織が発生させる環境影響について法規制の遵守は当然として、被害者をはじめ利害関係者のニーズと期待を満たすように環境影響を維持管理し、改善していくための規格である。中国のISO14001の登録数は近年急増し、昨年末では12,683件に達している。これは23,466件の日本に次いで世界第2位で、世界の総登録数111,162件の11%に相当する。このISO14001登録の増加が記事のような環境の悪化を背景としていることは十分に推定できるが、実際に環境悪化を食い止める働きをしているのかどうか、記事はISO14001自体にも触れていない。登録の急増が環境対策への真剣さの現れであり、やがて中国の環境問題が解消に向かうことが期待できるのか、はたまた、公害を克服した日本での現場の自主的環境改善運動然としたISO14001取組みと同じ規格解釈による表面的取り組みによって社会の批判をかわしているだけなのか。
   
<No.100; H18.9.15> −日立、原発部品事故響き巨額最終赤字に−
 
 日立製作所は15日、2007年3月期が550億円の赤字(前期は373億円の黒字)になると発表した。一括計上した未払費用750億円が原因であり、この内で中部電力、北陸電力で起きた原発タービン破損事故に伴う補修費用が半分程度にのぼるもよう。これには中電の逸失利益は考慮されていない(日経新聞 9月16日号)。
    ISO9001は品質保証のための要件を定めた規格であり、2000年版で“顧客満足”を標榜するようになってもこの本質は変わっていない。規格は、製品の品質への不安を拭い去ることによって、国際間の初めての或いは見知らぬ相手と取引が円滑に進められるようにすることを目的に制定された。 審査登録制度は登録証によって、組織が欠陥品、不良品を出荷しないことを含み、組織の製品が顧客のニーズと期待を満たすものとの安心感を顧客にもたらすよう設計されている。反対に品質保証に齟齬を来した組織は顧客から排除され、起こした損害の回復と補償の費用と相まって存続を危うくする事態に追い込まれることにもなる。ISO9001は、このような事態を回避し、逆に品質への信頼によって取引を拡げて組織を発展させるための組織のマネジメントの業務の在り方を規定している。
 
<No.97; H18.7.31> −異常気象 世界で猛威−
 
日経新聞はトップ記事で、世界各地で異常気象による被害が広がっていることを報じている。記事は、米国の高温と渇水、欧州の高温、中国の豪雨と低温、豪州の多雨、それに日本の異常な梅雨を挙げ、偏西風の蛇行が原因とする識者の見解を合わせて報じている(7月29日号夕刊)。国連環境計画(UNEP)は世界各地で観測される現象を”地球温暖化早期警報”としてまとめているが、記事の異常気象はこの延長線にあると見ることができる。一部にこれを全面否定する考えもあるが、国連を中心とした世界の環境取組みにおいては温暖化現象は人間による温暖化ガスの排出の結果であるとの認識が定着している。今日の世界の環境取組みはWECD東京宣言の「持続可能な発展」の考えに基づいており、この枠組みの中で企業など事業組織がその製品と活動のもたらす環境影響を低減する活動の世界標準がISO14001である。組織がISO14001に従って環境問題に取組めば、地球環境保全に必要な貢献が出来、その環境責任を果たすものと社会から認められる。組織は事業に必要な自然環境を維持し、社会の支持を得て持続して発展していくことができる。
   
<No.93; H18.6.1> −名鉄が エコムーブマーク で環境アピール−
 
名古屋鉄道は31日、「鉄道が  マイカー  などと比べて環境に優しい移動手段」であることを  アピール  するために、名鉄独自の環境マーク  「エコムーブマーク」  を制定したと発表した。定期券や  ポスターなどに使用していく(日経新聞 6月1日号)。    ISO14001は組織が事業活動と製品の環境影響の改善に体系的に取組む マネジメントの在り方を規定している。規格では、そのすべてでなくとも、一部でも組織がもたらした環境変化はすべて「環境影響」であり、それは「有害か有益かを問わない」(3.7項)。規格は環境保全を含む環境改善のことを「汚染の防止*」(3.18項)と呼び、直接的には「有害な環境影響」への取組みにしか触れていないが、「環境パフォーマンス」(3.10項)の「継続的改善」(3.2項)において「有益な環境影響」の増進を否定するものではない。組織の活動、製品・サービスの中から利害関係者のニーズ、期待に合致する有益な環境影響を見出し、製品・サービスの購買など利害関係者からの支持に結びつくようにこれを活用できれば、地球環境保全が組織の経済活動の利益になる。ISO14001は組織の マネジメントにこのような機会を提供する。ISO14001のマネジメントシステムは経済上及び環境上の利害を均衡させ、そして、融合させる枠組みである(ISO14004 0.2項)。
 
時事寸評 <No.79; H18.1.7> −環境対策、コストとのせめぎ合い−
I  
日経新聞連載記事"環境と市場"では、電子機器への有害物質含有禁止の欧州連合 RoHS指令への対応が「新たなコスト負担を生むが、製品価格への転嫁は難しい」と業界の悩みを採り上げている(1月6日号)。 ISO14001の狙いは「社会的、経済的ニーズとバランスをとりながら環境保全、汚染防止を図る*」(序文)ことであり、組織がその環境影響を被る又は関心を有する利害関係者のニーズと期待に応えるように環境対策を行えば、利害関係者に受入れられるという市場、社会原理に依拠している。 ISO14001に則って活動、製品・サービスの環境対策を適切に行えば、製品の販売増(顧客の環境意識)、取引先確保(取引先の環境保全要求)、地域社会との共存(公害)、低利融資(環境配慮型融資)、株式時価の高騰(社会的責任投資)、規制官庁からの法違反疑念の低減(立入り調査)など、利害関係者から利益を得ることができる。 いずれも法規制の前に取り組んで初めて競合他組織から差別化でき、獲得できる利益である。 ISO14001の論理は組織が環境保全に寄与して且つ利益を得る絶妙の仕掛けである。
   
時事寸評 <No.74; H17.12.11> −みずほ証券の大量誤発注で東証マザーズ市場が大混乱
    
みずほ証券の東証マザーズ市場への誤発注は担当者の取引システム端末への単純な入力ミスが原因であるが、端末画面の警報が日常的に無視されていること、取り消しの操作を間違えたため誤発注が取り消せなかったことが問題の背景として報じられている(日経新聞 12月10日号)。  ISO9001/14001は誤作業防止に直接言及していないが、業務が狙い通りに行われて狙いの結果を出すようにするための業務管理の在り方を規定している。 規格によると、ミスを含めて決まりの通りに業務が行われなかった場合に事業活動に重大な影響が生じる状況(ISO9001:1996 4.9 a)項/ISO14001 4.4.6 a)項)に対しては、手順を確立するだけでなくそれを文書化することが必要である。 また、一般に手順には、端末操作の手順(ISO9001 7.5.5項)だけでなく、正しい入力の確認(同 8.2.4項)や誤入力修正(8.3項)の手順などPDCAの各要素を含めなければならない。 そして、担当者がこれら手順を理解し操作に習熟していることを確認してからその業務を担当させる(6.1項)。  管理者は種々の可能で必要な程度と方法で警報無視を含む担当者の手順遵守の状況を監視し、改善の指導、処置(8.2.3項)をとらなければならない。 画面の警報も誤作業防止の技法であるが、効果的な技法を編み出し手順に織り込んでその間違いない実行を図るのが マネジメント (management) であり、管理者(manager)の業務である。
   
時事寸評 <No.57; H17.7.1> −商品説明文書の作成プロセスについてのISO9001認証取得−
   日本生命保険は「わかりにくい」と評判の悪い生命保険の募集書類の見直しに向けて品質管理の国際規格であるISO9001の認証を取った(朝日新聞 7月1日)。
    同社はホームページで、「商品内容をお客様にわかりやすくお伝えすることが重要であり、商品説明文書の作成プロセスについて品質管理の仕組みを築くことが、お客様の満足につながるものと考えております」と、規格適用の意図と範囲を明確にしている。ISO9001では商品説明文書も「製品」であり、これの顧客満足向上に焦点をあてた品質マネジメントシステムの確立をISO9001適用の目的にすることは問題ない。ただし、商品説明文書は売る製品つまり商品ではない。同社が成り立つために顧客の満足を得て買っていただかねばならないのは保険商品である。商品説明文書に満足した顧客が、買った保険商品に満足するとは限らない。認証の意義は「組織が登録証記載の分野で供給する製品、サービスに関して合意事項を確実に満たす能力を有するとの信頼感を市場に与える」(ISO/IEC Guide62に関するIAF指針;序文)ことである。その販売する保険商品に関して顧客満足向上を図る品質マネジメントシステムを運用していると顧客が誤解しないように同社、当該審査登録機関は最大限の注意を払わなければならない。
   

時事寸評 <No.46; H17.3.10>    −仏カルフール社  業績不振で日本撤退−
   世界第2位の小売業、仏カルフール社が業績不振のため進出4年で日本を撤退する。背景には日本の消費者の好みやニーズを十分把握できなかった事情がある(日経新聞 2月26日)。
    ISO9001では「組織は顧客に依存しているので現在と将来の顧客のニーズを理解し、必要事項を満たし、その期待を越えるようにしなければならない」(ISO9000: 品質マネジメントの原則)との認識に立って、これを「顧客満足の向上を目指す」と言う。そして規格は、これを実現するマネジメントたるには組織の業務はどうあるべきかを規定している。 規格の規定を意味する requirement  は「"要求"事項」と翻訳されているが、組織の発展を図るマネジメントの業務に対する「"必要"条件」である。カルフール社の失敗はISO9001の必要条件を満たしたマネジメントが行われなかった結果であると記事は断定していることになる。

 
時事寸評 <No.44; H17.2.16>    −経団連が環境税創設に反対−
   
 日本経団連は15日、京都議定書の発効を前に「経済統制的な温暖化対策には反対」とする文書を発表し、この中で環境税を「環境と経済の両立への配慮を欠く一時しのぎの政策と批判している(日経新聞 2月16日号)。 環境保全と経済発展の両立は、国連決議によるWECD(環境と開発に関する世界委員会)の結論たる東京宣言(1987年)の「持続可能な発展」の理念に基づく環境保全取組みの世界共通の原則である。 「ISO14001規格の全体的な狙いは、社会経済上のニーズ、つまり、産業の発展との均衡の下での環境保全、汚染防止を支援すること(筆者訳)」(序文)である。ISO14001は、地球規模では組織が持続可能な発展を世界的に推進する駆動力であり、個々の組織にとってはその存続を支配する利害関係者に受け入れられる精一杯の環境取り組みを行うための指針である。
     

時事寸評 <No.41; H16.12.26>  −環境省  産廃処理業者の評価制度を検討−
    環境省は絶えない不法投棄対策として、産業廃棄物処理業者の評価制度を05年度から始める。産廃処理を委託する排出企業の参考とし、悪質な産廃処理業者を淘汰するため、財務諸表、処理施設能力、処理実績などの情報公開した業者を「優良」と認定する。ISO14001では利害関係者のニースに対応する環境対策を進めることになっているから、産廃処理業の組織にとって処理工程は今日的には最も「著しい」、つまり重要な環境側面である。 組織は不適正な処理を行わないことを環境方針で誓い、実行管理しなければならない。 排出企業にとっては業者が不法投棄をしないということに対して、本来ならISO14001登録証の方が財務諸表等の公表行為よりはるかに強い安心感を与えてくれるものである。15,000件を超える登録証が発行される至ったISO14001業界の隆盛の一方で、社会の信頼感がついてきていない現実の反映である。
     
時事寸評 <No.31; H1610.6>  −環境省が独自の環境管理認証制度−
     環境省所管の地球環境戦略研究機関が中小企業を対象にした環境管理の認証制度を創設し、7日から審査の申し込みを受け付ける。ISO14001の認証取得が高額なため中小企業には負担が大き過ぎるので、中小企業でも環境管理を実践していることを証明できる公的な制度が求められていた(日経新聞: 10月6日)。 ISO14001の認証登録は、組織がその事業活動と製品、サービスの性質、規模及び自然や社会に対する環境影響にふさわしい汚染防止、環境保全の取組みをしていることの証明である。 組織は問題解決の困難さや自身の体力などの事情も勘案して最大限の、かつ、世間が納得する努力をすることが必要である。 これが負担で対応できないという企業の"環境管理の実践"とはどのようなものか、企業の地球環境保全責任を果たす努力なのか、認証により世間に何を保証するのか。 ISO14001代替を主張するならこの説明がなければならない。
   

時事寸評 <No.25; H16.8.12>    −関西電力美浜原発の蒸気噴出事故の遠因−
     関電美浜原発の蒸気噴出事故の原因や背景に関する情報が連日新聞を賑わしている。発電所保全部門は、蒸気配管の破損部分の点検が運転開始以来漏れていたことを昨年11月に知らされたが、緊急性がないと判断し今月14日からの定期検査で調べることとしていた。この際、高浜原発の96〜01年の軽度だった磨耗実績データに基づいて判断され、配管材質を変更した98〜03年の高浜原発の激しい磨耗実績は顧みられなかったという(日経新聞 8月12日)。  点検は米国サリー原発事故を教訓とした事故防止処置であるから、点検漏れは重大な問題である。判断は適切な情報に基づき、それなりの上位管理者による慎重な判断でなければならず、他にも同様の点検漏れがないかの全社的確認や点検漏れの再発防止対策が実行されるべきであった。本事故の原因と背景に直接当てはめることのできるISO9001の条文はないが、組織の品質マネジメントが プロセスの監視及び測定(8.2.3),是正処置(8.5.2),記録の管理(4.2.4),責任及び権限(5.5.1),内部コミュニケーション(5.5.3),購買製品の検証(7.4.3)等の各要求事項を満たすように効果的に実行されておれば、このような事故は防ぐことができた。規格要求事項は単独で意味をもつ場合もあるが、基本的には全体として顧客満足の製品を提供するための指針を示している。
   

時事寸評 <No.23; H16.8.2>    −家電・精密機械大手  回収樹脂の自社製品への再使用を拡大−
     シャープ、キャノンなど家電・精密機械大手が独自に開発した技術で、使用済み製品から回収した樹脂の自社製品への再利用を拡大する。これまで文具、建材、雑貨類などに限られてきた廃プラスチックスの高機能部品への利用の本格化の第一歩であるが、これは新規の資源投入を抑えた環境配慮型の商品への需要の高まりに対応するものである(日経新聞 8月1日)。 ISO14001は、組織がその活動と製品、サービスのもつ環境影響を継続的に改善するための規格である。近年、消費者が機能や性能など製品品質だけでなく製品のもつ環境影響にも関心を強めつつある情勢を受けて、種々の環境配慮型製品が誕生している。廃プラスチックスの再製品化もこのような顧客のニーズや期待に応えるものであるが、これはISO9001の製品の顧客満足の向上を図ることと軌を一にする。顧客のこのようなニーズと期待を見出した場合、ISO14001を導入せずISO9001のみの組織なら、その製品要求事項の決定(7.2.1 b))において製品の環境側面を配慮すればよい。ISO14001のみの組織で製品の環境側面を重視すると、肝心の品質の側面が考慮されずに製品特性が決められて効果的に顧客満足の向上が図れない恐れがある。両規格導入の組織では両マネジメントのこの部分は一体的に実行されなければ、相互にちぐはぐな製品を企画するはめになる。
   

時事寸評 <No.18; H16.7.12>  −顧客価値−
     日経新聞(7月12日)の連載 "イノベート・ジャパン"(広告)のVol.3「顧客価値を創る」は、絶え間なく変化する顧客のニーズに機敏に反応し、期待や想像を越えた満足を提供することが顧客価値の本質であるとの論陣を張っている。 日本では ISO9001の顧客満足はこれと異なり、「"satisfactory"とは優・良・可・不可の"可"程度に相当する」と解釈する向きがある。 しかし 規格の意図における顧客満足は、「組織は顧客に依存しているので、その現在と将来とニーズを理解しそれらを満たし期待を越えるよう努力しなければならない(ISO9000 0.2 a))」「顧客のニーズと期待は変化し市場競争があり技術の進歩があるので、常に製品の改善が必要である(同 2.1)」であるから、記事の顧客満足と同質である。 記事では品質には(ビールが)おいしいということだけでなく、安全・安心を含み、企業の社会貢献、誠実さは前提であるとするアサヒビールの経営理念も紹介されている。ISO9001は顧客価値の製品品質の側面しか取扱っていないから、組織の発展をISO9001のみに依存することはできない。ところでISO14001は利害関係者の環境ニーズと期待に応えることが狙いであるから、環境対応という顧客価値を取り扱うものである。
 
時事寸評 <No.17; H16.7.9>  −過剰富裕化論の現実化−
     日経新聞(7月7日)の連載コラム "大機小機" は、原油価格の高騰、資源インフレなどの最近の経済情勢から、1980年代に一部経済学者により唱えられた「過剰富裕化論」の現実化に警告を発している。 これは、途上国が GDP 5,000ドル/人を越える過剰富裕状態になるなら、地球規模での資源枯渇、環境破壊を通じて人類は破滅の道をたどるという考えだそうだ。人口大国の中国、インドがこのまま経済成長を続ければここに至る危険が強い。、過剰富裕を享受して来た日本は今こそ "持続可能な発展" のモデルとなるべきであると論じられている。 ところで ISO14001規格は、企業の持続可能な経済活動の指針として産業界の要請で作成された。ISO14001を導入した企業は、その存続を支配する各利害関係者のニーズと期待に沿った環境影響の低減に経済的、技術的に精一杯の取組みを行なうことが必要である。 環境ニーズと期待を満たされた利害関係者は製品の購入、投資、立地許容などで企業に報いる。こうして企業は地球環境保全と事業発展を両立させることができる。
   
時事寸評 <No.9; H16.5.29>    −中国、日本からの廃棄プラスチック輸入を禁止−  
    中国政府がリサイクル原料としての日本からの廃棄プラスティックの輸入を今月初め全面停止した。 意図的な生活ごみ混入の廃プラがあったというのが理由で、同政府は悪質業者締出しのため7月から再生資源輸出業者に対してISO14001取得を含む条件を課す登録制を設けることにした(朝日新聞 5月29日)。 ISO14001は企業の事業活動と製品に付随する環境への悪影響を継続的に改善することが狙いの規格であり、登録証は企業が環境改善に関する顧客初め利害関係者のニーズと期待に応えんとする努力をしていることを保証するものである。廃棄物として処分していた廃プラを再生資源の原料に変えた企業の処置は、ISO14001の狙いに沿ったものである。 しかしこの場合は、製品たる廃プラに異物が混入していたという品質保証の問題である。 規格制定の意図からは中国政府は業者にISO9001の登録取得を求めるのが適切である。
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  認証審査、登録証 <基本事項>
<No.139; H19.11.21> −キャノン、世界の拠点でISO14001統合認証−
   キャノンは、国内外のグループ゚一体でISO14001の認証を取得した。統合認証の対象範囲は、国内の事業拠点、関連会社の他、北米、欧州、アジア、豪州など世界38ケ国に及ぶ生産、販売会社で、104社、719拠点。 環境戦略にかかわる管理体制を一元化し、グループ内での環境活動の指示や報告の重複をなくし、環境規制が世界規模で厳しくなる中で経営判断を現場に迅速に伝え、環境計画や規制対応の徹底、企業統治の強化に繋げる。事業所単位の個別認証からグループの統合認証への切替えはソニーや米国IBMなども進めている(日経新聞11月21日)。
   認証の対象となる“組織”とは、「責任、権限及び相互関係が取り決められている人々及び施設の集まり」であり、会社、法人、事業所、団体、協会、個人事業者の単独とは限らず、「これらの一部又は組合せ」も認証対象となり得ることを明確にしている(ISO9000, 3.3.1)。また、IAFは、多数の支店をもつ会社などに対する“多数サイト認証”の指針を決めている(IAF GD2,付属書3)。しかし、ISO14001に関しては基準は見当たらないから、審査機関SGSジャパンの審査登録規則に準拠する統合認証なのであろう。いずれにせよ統合認証では、グループ本社のトップマネジメントの下に全拠点が同じマネジメントシステムに則って地球環境保全の業務を行うことになる。個別認証の審査は実質的にグループ内の関連する個々の全部門を網羅ていたが、統合認証では各拠点が同じ業務を行っていると見做されれば、それら拠点の審査は抜き取りになるので、統合認証により組織は審査の負荷を大幅に軽減できる。記事はこれを3,000億円と報じている。また、登録証はグループ全体に1枚発行される訳であり、登録件数統計においては大きな数値の減少となる。
   

 
<No.138; H19.10.31> −農水省、JAS認定機関業務停止命令へ
   
農水省は、JAS規格の認定業務がずさんだったとして登録認定機関「民間稲作研究所認証センター」に業務停止命令を出す方針を31日までに固めた。同センターが化学肥料を使用する農家に「有機JASマーク」の使用を認めていることが昨年7月に判明し、改善指示を受けても認定業務を見直さなかった。農水省は同センターの新規の認定業務を90日間停止する処置に踏み切ることを決めた (日経新聞10月31日夕刊)。
   
有機JASマークの製品への貼付ができる農家など製造者を認定する業務はH17年JAS法改正により、民間の第三者である登録認定機関に開放された。登録認定機関は農水省の定める登録基準への適合の審査を独立行政法人「農林水産消費安全技術センター」から受けて登録される。登録後も農水省は同センターを通じて登録認定機関を監視し、必要な適合命令、業務改善命令を出すことができる。ISO9001,14001の審査登録制度において、審査登録機関を認定し、その業務を監視する機関は適合性認定機関と呼ばれ、日本ではJAB(日本適合性認定協会)である。各国で発行される登録証の国際的信頼性の確保のため、審査登録機関の認定基準はISO/IEC規格として定められ、また、各国の適合性認定機関はIAF(国際認定機関フォーラム)の下にMLA(多国間相互承認協定)を締結している。審査登録機関がどの適合性認定機関から認定を受けるかは自由であり、現に日本でJAB以外の海外の適合性認定機関からの認定を合わせて受けている機関もあれば、海外の認定機関の認定だけの審査登録機関もある。認定を受けずに審査登録機関として登録証を発行することを妨げる法的問題はないから、海外ではいわゆる非IAFの審査登録機関があり、その格安料金による審査登録が話題となっている。
   

<No.126; H19.5.15> −陸前高田市 ISO9001登録返上し新仕組み−

    陸前高田市は、「正確・迅速・親切な行政サービス」を基本方針として市民の目線に立った行政運営を目指すためにH15年に取得したISO9001の登録を、財政事情からその維持のための昨年の審査を受けず、審査機関により登録証を1月に抹消された。今後はこれまでのノウハウを活かして、新たな仕組みの構築を目的とした独自の「行政品質向上運動」をゼロ予算で実施する(東海新報 5月8日号)。
   
ISO9001は変化する顧客のニーズと期待を把握し、それを満たす製品・サービスを提供できるような品質マネジメント の業務体系を規定している。それは、どのような顧客満足を目指すのかを明確にし、その実現を図る諸業務の手順を確立し、適宜文書化し、それに基づき業務が実行されるよう管理するというPDCAサイクルによる体系的な業務取組みが基礎となっている。業務が実際にこのように実行されていることの保証が審査機関の発行する登録証であり、これを示して顧客を安心させるためにある。ISO9001に従った品質マネジメントシステムを確立し、業務を行うことには誰の許可も必要はない。知的財産権のある著作物としての規格書を購入すれば、内容を学び、業務に適用することは自由である。陸前高田市は登録証を返上したからといって以前の品質マネジメントシステムの文書を捨てたり業務方法を変えたりする必要はないし、新しい仕組みをつくるのは無駄なことだ。
 

<No.119; H19.3.2> −不二家、安全宣言し菓子生産を再開−
    不二家は1日、チョコレートなど菓子の生産を再開し、店頭での販売再開は27日になると発表した。山崎製パンの支援による衛生管理手法AIBの導入などで品質面での安全を担保できたとの説明で、消費期限切れ原料で一連の不始末発覚の端緒となった洋菓子も23日頃生産再開を予定している。ただし、スーパーなど小売り各社は慎重な姿勢を崩しておらず、ダイエーはISO9001など外部機関による再認証が販売再開に必要との立場だ (日経新聞 3月1日号)。
   
ISO9001は品質保証を含む顧客満足向上を目指す経営管理の在り方を規定しており、ISO9001の登録証は個々の製品の品質の保証はしないが、初めての取引、なかんずく輸出取引など、見知らぬ組織との取引を中心に、顧客に組織の製品の品質への安心感を提供する。しかし、一旦、取引が開始されれば組織の製品品質への安心感は実績によって左右される。実績が悪ければ登録証の効用が消え失せるだけで、実績を覆して顧客の安心感を繋ぎ止めるような力は登録証にはない。記事のように不祥事発覚で改めて規格不適合が発見され、これを審査機関の指示で是正して、一時停止された登録証が再び有効になった場合の登録証の効用については、登録制度は想定していないから、実際に顧客がこの登録証をどのように受けとめるか興味深い。ただし、顧客が安心感つまり組織の製品への信頼感を取り戻すには不祥事の後の長期間の品質実績しかないというのが現実であろうし、その結果で登録証に信頼性が回復する。製品品質への信頼回復に登録証は無力である。
 
<No.118; H19.2.18> −不二家、不祥事対策でISO推進室設置−
    不二家は15日付けで、期限切れ原料の使用が明らかになった洋菓子2工場の工場長を更迭し、生産ラインのずさんな管理を改善するため生産本部を新設し、桜井社長が兼務するなどの新体制を発足させた。また品質保証部にISO推進室を新設し、一時停止や保留になっている工場での再認証を目指す(毎日新聞 2月15日号夕刊)。
   
ISO9001、14001の登録取得組織で、いわゆるISO規格取組みを推進する事務局機構を設け或いは要員を配置するところは少なくない。しかし、組織が確立し、それに基づいて業務を行っているISO規格準拠の品質マネジメントシステムとは、組織の経営管理の業務体系の一部としての品質問題に焦点をあてた業務の枠組みである。ISO規格取組みは本来、日常の経営管理業務と一体でなければならない。一般にISO推進室を設置する組織では、ISO9001要求事項を満たす業務の体系が日常の品質保証業務体系とは別立ての、登録証取得が目的化した品質関連業務ないし品質改善運動となっている傾向が強い。ずさんな管理の解消に必要なのは、ISO9001が示す品質保証関連業務の正しい在り方としての要求事項、つまり、必要条件を日々の業務の手順に織込み、きちっと実行することである。ISO推進室の設置は無益であり、逆効果をもたらす危険も小さくない。
 
<No.117; H19.2.18> −リンナイのISO9001認証再検討−
     
製造した湯沸かし器での相次ぐ一酸化炭素中毒事故が判明したガス機大手のリンナイについて、日本適合性認定協会が認証機関に対して認証が適切かどうかの調査依頼を出していることがわかった。調査依頼は13日に出されており、JIA-QAセンターが臨時審査を実施する見通し。その結果次第では、同センターが、「是正措置」により認証に適合しない部分の改善を求めたり、「認証の一時停止」によりISOの取得を対外的に示せなくさせる措置を取ったりする可能性もある (読売新聞 2月14日号)。
   
記事は、日本適合性認定協会(JAB)を国際規格「ISO」の日本機関と呼び、JIA-QAセンターを唯一の認証機関かの表現があり、また、認証条件についての記述など多くの点で不正確である。リンナイの登録証に関しては、登録取得組織の不祥事の報道があれば、組織に事情説明を求め、規格不適合の疑いがあれば臨時審査するというのが、今日、当該の審査登録機関がとることになっている手続きである。記事のように当該審査登録機関はJIA-QAセンターであるが、同センターは本件について未だ何も発表していない。今はリンナイに事情説明を求めた段階であるのかもしれない。臨時審査が行われた場合の結果で考えられる処置は記事の通りである。
 
<No.116; H19.2.10> −不二家、ISO14001認証一時停止に−
    不二家は8日、洋菓子を製造していた埼玉工場が取得いた環境管理の国際規格「ISO14001」について、7日付で認証が一時停止になったと発表した。臨時審査した認証機関が「衛生マニュアルに関して不適合な点がある」としたため。期限切れ原料の使用などが「人々の健康と安全を守り続ける」という環境マネジメントシステムの基本理念に反した他、食品衛生マニュアルの要求事項に合致していなかったことが理由という (日経新聞 2月9日号)。
    当該認証機関である日本環境認証機構(JACO)もそのウェブサイトで、臨時監査の予告(1/18)、実行(1/30)に引き続き、「2/7の認証登録判定委員会で不適合の是正処置とその有効性が確認できるまで登録を一時停止することに決定した」旨、発表している(2/7)から、記事の認証一時停止は事実なのであろう。しかし、なぜISO14001に関する臨時審査が行われ 、このような処置になったかという点では、記事はISO14001とその審査登録制度の趣旨を正確に反映していない。すなわち、ISO14001の認証は組織が公害防止を含む地球環境保全に対する責任を果たしていることの証明であり、食品の安全衛生や製造の衛生管理とは無関係である。食品に関して「人々の健康と安全を守る」ための規格でもない。そして、これまでの報道で明らかにされたのは、製品の品質管理面の、或いは、食品安全衛生面でのずさんな実態であり、環境影響の管理の齟齬を窺わせる事実は報じられていない。記事の「衛生マニュアル」という文書が環境影響の管理を取り扱うものとも思えないから、この不備はISO14001登録に影響しないと考えるのが普通である。
 
時事寸評 <No.114; H19.2.1> −不二家、ISO9001再認証されず−
    不二家の小売店向け菓子の3工場が既に取得しているISO9001の基準を満たしていないことが30日、明らかになった。臨時検査を依頼していたISO審査機関から同日、不二家が調査報告書を受けた。規格の再認証を得て、小売店に販売再開を働きかける方針だったが、想定より遅れることが必至となった(日経新聞 1月16日号)。別のメディアは、不二家が審査機関に臨時審査を依頼したが、管理体制に不十分な点があるとして、登録を保留されたと報じている(フジサンケイ ビジネスアイ 2月1日号)。
    ISO9001登録制度では、組織の要請による再審査も、認証の確認作業や再認証というような措置も存在しないから、両記事の伝えるところは正確でない。登録組織にこのような不祥事が公になった場合、審査機関は登録制度の信頼性毀損の防止のため、組織に事情説明を求め、必要により再審査を行うのが決まりである。この結果、規格要求事項への不適合の事象があれば是正処置を求め、或いは、登録の一時停止処分に付す。記事は不二家が指摘事項の改善を行い、再度審査を受けるとあるから、審査機関SGS社は不適合の事象を発見したが、容易に是正できるので、登録一時停止まで必要ない判断したのであろう。しかし、これほどの多くのずさんな品質管理事例が報じられている状況で、不二家がこの認証再確認作業で安全性にお墨付きが得られるとの見方を示していたと記事が報じているのは、信じ難いし、また、不適合が記事のように1ケ月で是正できる程度のものというのも信じ難い。
   
時事寸評 <No.102; H18.10.2> −後発医薬品、「安心」伝えたい−
   特許が切れた新薬と同じ成分で価格が安い「後発医薬品」が、品質や安全性に関する情報提供が十分でないために普及が進まない。医師や薬剤師、患者の後発医薬品に対する不安が消えず、患者が後発品を選ぶ割合は低水準のまま。安心して後発品を選べるようにと、薬剤師らが薬剤情報のデータベースを作る動きもある(日経新聞 10月1日号)。
  ISO9001の審査登録制度は、海外市場など組織とその製品が知られていない市場や顧客に対して、市場や顧客が必要とする品質の製品を組織が供給できるという信頼感を抱かせることを意図した制度である。組織がISO9001の規定する要件(“要求事項”)を満たして効果的に業務を行えば、市場ないし顧客のニーズや期待に反するような不良製品、欠陥製品を出荷することはない。組織がこのように業務を行っており、従って、不良品や欠陥品を受け取る恐れはないという安心感を顧客にもたらすのが、審査登録機関の発行する登録証である。後発医薬品をめぐる記事の状況が問題なら、ISO9001と審査登録制度の出番である。
   
時事寸評 <No.85; H18.3.7>  −日航再建はブランド力回復がカギ−
   日経新聞の連載「クイックベイ」欄は日航内紛に関する世論調査結果から、低下したといえなお高いブランド力が再生の最後の浮力となるとの分析を示している。調査 では、今後も日航を利用するという人は36%に過ぎないが、この40%以上がブランドイメージが高いことを理由とし、利用しないという人の71%は多発する安全面のトラブルを理由にしている(3月6日号)。  
   データは
安全で優れたサービスという実績が日航という組織に安心と信頼のブランドをもたらして日本を代表する航空会社になったのたが、度重なる運航トラブルの実績によりブランド力が損なわれ乗客からそっぽを向かれ始めたという実態を物語っている。ISO9001への適合の証の登録証は製品個々の品質を保証しないが、組織の製品・サービスの品質への信頼感を顧客に与えるものである。登録証は、ブランドの確立した組織には無用であり、また、取引が開始された後は顧客は実績で組織を評価するから品質が悪ければ登録証は何の役割を果たすこともできない。
 

時事寸評 <No.82; H18.1.29>  −マンション販売に住宅性能表示を義務付け−
   
国土交通省、耐震強度偽装事件を踏まえ、分譲マンションの売り主に欠陥が判明した場合の補修や建替え費用を負担する保険への加入又は銀行保証の設定を義務づけ、合わせて住宅性能表示も義務づける方針を固めた(日経新聞 1月28日号)。
   
この住宅性能表示は、住宅品質確保促進法に基づく一種の適合性評価制度であり、国交相が認定する指定住宅性能評価機関が日本住宅性能表示基準に基づいてマンションの性能を評価して登録マーク入りの「設計住宅性能評価書」「建設住宅性能評価書」を発行する。ISO9001,14001は適合性評価を前提とした規格ではないが、認定された審査登録機関が組織の品質又は環境に係わる業務の規格適合性を評価して登録証を発行する制度の下に運用されている。この制度は法律ともISOとも無関係で、日本では任意の民間団体の日本適合性認定協会が審査登録機関を認定する一方、IAF(国際認定機関フォーラム)の下で各国の認定機関と相互承認協定を結んで、登録証の国際的認知を保証している。認定機関は誰でも設立できるから、英米ではIAFに加わらない認定機関もあり、その認定する審査登録機関も登録証を発行している。
   
時事寸評 <No.72; H17.11.24>  −欠陥マンションの販売会社のISO9001認証取得が判明−
   日経新聞
は、偽造構造計算書に基づくマンションを販売した ヒューザーが 「製品の品質管理の国際規格ISO9001」の認証を取得していたことが23日分かり、認証を与えた(財)日本品質保証機構が認証取り消しも視野に再調査を進めていると報じている。  また、認証取得は 「この分野で手順や仕組みが規格に達していると判断された」結果であるとし、偽造によるマンション欠陥について「審査段階では気づかなかった」という同機構の見解も報じている(11月24日)。
 
 同社が今年8月に認証を得た製品、サービスの範囲は「共同住宅の設計、施工及び付帯サービス(定期点検と補修工事)」である(同機構ウェブサイト)。  顧客のニーズと期待に応える製品、サービスを提供するのが組織の ISO9001適用の狙い(1.1 b)項)であり、規格はその実現を図る道しるべである。 すなわち、同社はマンションの建築販売の企画において、 a) 狙いの顧客層が販売時に明示して求めるであろう事項はもちろん、 b) 顧客は言わないかもしれないが当該マンションに関して顧客が喜び或いは当然必要とし、期待している事柄 、c) 遵守すべき法、条例の要件がそれぞれ何であるかかを明確にし決定することが必要である(7.2.1項)。 そして、これを満たすように管理された状態で設計(7.3項)、施工(7.4〜7.5項)を行い、完工したマンションがこれら要件を満たしていることを検証(8.2.4項)してからでないと販売してはならない。 認証審査はこれらが確実に実行されるような手順が確立しているかどうか、また、それら手順が確実に実行されているかどうかを確認する。 この場合、マンション企画段階(7.2.1 c)項)、又は、設計段階(7.3.2 b)項)で構造計算の建築基準法準拠が確実に取り上げられるような手順となっていたか、外注した構造計算の受入れ検査(7.4.3項)で法準拠を確認する手順があったどうかである。 それら手順が確実に実行されていることの確認は抜取り検査であるから、偽造が一部なら発見できないことはある。
   
時事寸評 <No.56; H17.6.29> −有機JAS認証の不正表示防止のためのJAS法改正−
  相次ぐ不正表示を背景に、有機農法製品のJAS認証を行う登録認証機関に対する基準を強化した改正日本農林規格(JAS)法が15日に成立した。しかし、制度の信頼性低下の一方で、農作業への制約の厳しさ、事務作業の煩雑さ、監査料の負担など、認証制度そのものに対する不満が拡がっている。記事は、 「生産者と消費者がお互いに顔のを見える関係で、信頼があれば認証は不要」として認証にこだわらない生産者の例を紹介しつつ、「両者の顔が互いに見えにくい通常の流通市場では、信頼性の面から第三者が介在する認証制度が不可欠」であると認証制度の意義を指摘している(日経新聞:連載"食安心と価格" 6月29日号)。
    ISO9001,14001規格も第三者の審査登録機関による認証によって組織の品質ないし環境取り組みが顧客を初めとする利害関係者のニーズ、期待に適うものであることを保証する審査登録制度で運用されている。認証は新規取引、新規事業所立地などで顧客など利害関係者が組織を知らない場合に最も効果的に機能する。 信頼関係が確立しておれば認証有無によらず組織と製品は利害関係者に受け入れられるし、逆に利害関係者が組織の品質あるいは環境取り組みの実績に不満を持っている場合には認証は全く無意味なものとなる。これが第三者認証制度の本質である。
   
時事寸評 <No.33; H1610.15>  −ISO9001、曲がり角−
 
 日経新聞 が「ISO9001、曲がり角」という囲い込み記事を掲載している。 「品質意識の不明確な企業」や「認証さえ取れればという意識の企業」までもが登録証を取得しているという建設業界の実情を引用して、審査機関による認証の乱発に対するJAB(日本適合性認定協会)の危機感が、最近目立つ審査機関の資格取り消し(2件)、一時停止(8件)処分の背景であると分析している(10月15日号)。
   審査機関が登録証発行業務を行うには ISO/IEC Guide 62,66 の必要条件を満たさなければならず、JABの認定審査に合格した後も定期、更新審査を受けなければならない。認定停止、取り消し処分はこの審査で、JAB基準(R/T/C/CP213-2003改1、11.1,11.2項)に抵触した場合に下される。 これはJABのウェブサイトに公表されるが、理由となった事実にはほとんど触れていないので、問題提起としては十分でない。 なお、JAB認定が取り消されても登録証にJABマークが使用できないだけで、審査登録業務は引き続き行うことができる。 記事が引用した審査機関も業務継続をそのウェブサイトで発表している。 問題は顧客がそのような登録証を信頼するかどうかである。
 
時事寸評 <No.27; H16.9.9>  −ミツカン ブランド重視の売上拡大戦略−
  ミツカングループ本社は、これまでの「味ぽん」「金のつぶ」など商品力に依存するブランド戦略から、コーポレートシンボルや全商品統一ロゴの導入など企業ブランドを重視した売り上げ拡大戦略に転換し、既に「ブランドマネージメント部」を新設していると報じられている(日経新聞 9月9日)。 
    ISO9001認証登録は、海外など見知らぬ顧客に組織の製品品質への信頼感を与えるのが趣旨であるから、ブランドが市場で確立している組織や製品には認証登録は意味をもたないし、そのような組織には不必要である。 しかし、ブランドの確立に至るには組織の製品が顧客のニーズと期待を満たしてきた永い年月があったはずであり、この期間も現在も顧客満足向上を追求するマネジメントが行われているからに他ならない。 ISO9001は、このようなブランド確立に至る顧客満足向上追求のマネジメントを体系的に行うための必要条件を規定している。 ブランドマネージメントの成功は ISO 9001の品質マネジメントとの連携の下で初めてもたらされる。
 
時事寸評 <No.13; H16.6.16>  −三菱ふそう、ISO9001認証の一時停止−
   
クラッチ系統の欠陥隠しを理由に三菱ふそうトラック・バス(株)の生産本部が取得していた ISO9001 の認証が停止されたことが判明したと報じられている(朝日新聞 6月16日)。
   登録証を発行していた JIA-QAセンターはそのホームページで「登録維持条件に抵触する」ため6月1日付で登録を停止したと発表している。 認証審査では「品質 マネジメントシステムの要求事項が欠けている、実施、維持されていない」「製品の品質に関して入手できる客観的証拠に基づいて重大な疑いを生ずる状況」が不適合(JAB R300-2002 改1)と判断される。このようなことがなく、「品質マネジメントシステムが効果的に実施、維持され、システムに従ってプロセスが運営されている(同)」と判断して登録証を発行した審査登録機関は、その登録の維持、一時停止、取消しに関する条件と手順を定めておくことが必要である(JAB R100-2001)。 JIA-QAはこの手順を適用し、ISO9001登録証の信頼性が失われかねない事態の回避への最低限の処置をとった。
 
時事寸評 <No.7; H16.5.19>  UFJホールディングスの3月期決算大幅赤字に再修正
   
UFJホールディングスの3月期決算が再修正され大幅赤字となる見通しが17日の株式市場を揺るがした。この厳格な再修正の引き金を引いたのはまたしても監査法人であったことが報道されている(朝日新聞 5月18日)。
   
相次ぐ企業破綻で決算を承認した監査法人に対する社会の目が厳しくなっているのに対応して監査姿勢を厳格化せざるを得ないという背景があるとのことである。 会計監査は企業の財務諸表が会計基準に従って適正に作成されていることを検証する活動とされるが、その結果を "倒産はしない" というお墨付きと世間が受けとめるのも自然である。現下の会計監査の信頼性向上の官民の諸施策の原点はここにあると思う。ISO マネジメント システム の登録審査も、品質、環境に関して "少なくとも不祥事は出すことはない" とのお墨付きと世間で受けとめられるのも自然である。このような審査となっているだろうか。
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  マネジメントシステム <基本事項>
<No.99; H18.8.20> −パソコン用ソニー製電池発火事故−
 米国デル社のノートパソコンに搭載したソニー製リチウムイオン電池に過熱・発火の恐れがあるとして14日、410万個を回収・無償交換すると発表した。これには米国外で販売した140万個が含まれており、日本のパソコン各社も情報収集を急いでいる。生産子会社の工場で正負極間に微小な金属片が混入したのが原因と見られ、デル社パソコンのうたい文句の急速充電が電池に大きな電圧負荷をかけるなど「デル社充電システムとの相性の問題」との見方もある(日経新聞 8月17日)。ISO9001の品質マネジメントは、製品の品質事故を防止すると共に一貫して顧客のニーズと期待を満たす製品を供給することを狙いとする経営或いは組織のマネジメントの活動であり、明確な品質方針、品質目標の下に、品質計画、品質管理、品質保証、品質改善の各側面から組織の事業活動をを体系的に管理することによって、狙いの達成が図られる。発火の直接原因の微小金属片混入が製造工程で発見すべき異常であったなら事故は品質管理(品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた活動*:ISO9000 3.2.10項)上の問題であり、当該製造方法に付随する起こり得る問題であったのなら品質計画(品質目標達成に必要な製造工程と資源を決めることに焦点を合わせた活動*:同 3.2.9項)上の問題である。製品の設計特性がデル社充電システムに不十分であったことが発火の原因なら品質保証(品質要求事項が満たされるとの信頼感を与えることに焦点を合わせた活動*:同 3.2.11項)上の問題であり、他社の同じ製品では問題解決済であるなら品質改善(品質要求事項を満たす能力を高めることに焦点を合わせた活動*:同 3.2.12項)上の問題である。問題解決はそれぞれ、7.5項(製造の管理)、7.1項(製品実現の計画)、7.2/7.3項(製品要求事項の決定/設計開発)、8.2.2/8.4/5.6.3項(顧客満足/データ分析/マネジメントレビュー)の改善によることになる。
 
I<No.47; H17.3.26>  −医療機関ネットワーク−  
   来年の医療法改正に関連して、医療機関ネットワークの構築の必要性の主張(松山幸弘氏)が日経新聞連載コラム「経済教室」に掲載されている。すなわち、国民の医療ニーズは多用であり、個々の病院が提供するサービスをばらばらに選択し専門化するのでは「地域住民の医療ニーズ全体とのミスマッチが発生」しかねない。この解決には、地域内の各医療機関が専門性、診療科目、規模、形態等々提供する医療サービスを地域の全体ニーズと合致させるよう、相互に調整、補完して「広域医療圏毎の医療機関ネットワーク」を構築することが必要である(3月21日号)。ある目的の達成のために種々の要素がネットワーク構造で結ばれて機能している場合、これらはシステムと呼ばれる。地域の医療機関がネットワークを構成して地域の全医療ニーズをまかなう医療活動は地域医療システムであり、この場合のシステムの要素は各医療機関が提供する医療サービス活動である。ISO9001/14001両規格では、品質/環境に関するそれぞれのマネジメントの目的達成に向けて必要な種々の業務がネットワーク構造で相互に関係づけられ実行されることを基礎的概念としている(例えばTC176/SC2 N544R)。このような諸業務の集まりを規格は「マネジメントシステム」と呼んでいる。
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  コミットメント <共通>
<No.136; H19.10.3> −次期社長選抜 コンテスト−
  厨房機器販売の テンポスバスターズ社は森下現社長が退く予定で、10月から半年間の次期社長の座を競う社内コンテストに入る。コンテストはち2003年秋に第一回を開き、現社長が勝利した。立候補者は12日に所信表明し、半年かけて経営者としての資質を競う。評価者は現社長が中心になる見通しで、部下の評価も加味して判断する。候補者が必達目標を作り、どのような施策を打ったかを見る。しかし、最大の評価項目は「断固やる」という強い意志があるかどうかである(日経新聞 10月2日号)。
   ISO9001,14001の審査登録制度においても、社長に「断固やる」という強い意志があることを審査員に証明しなければ登録証は発行されない。規格はこれを、トップマネジメント が「品質マネジメントシステムの構築、実施、有効性の継続的改善」を行うこと(ISO9001;5.1項)、又は、「環境汚染の防止と継続的改善、適用される環境法規制とその他の約束の順守」をすること(ISO14001;4.2項)に 「コミットメント する」ことと表現している。規格は組織が、不良品を出さないことを含む顧客満足の向上(ISO9001)、又は、地球環境保全に負った企業責任の全う(ISO9001)によって、顧客はじめ利害関係者の支持を得て発展していくという、真っ当な経営に関する手引き書である。規格は、この経営の実行には相応の経営資源を投入しなければならないこと(6章/4.4.1項)を明確にしている。この経営には、単に収益を上げるだけに比べて多大の コスト や努力を必要とする。それでもやり抜くという強い意志、揺るがない決意、はたまた、内外に誓約したことへの責任感が確立していないと、この経営は挫折しかねず、トップマネジメント は組織の発展は図る責任を果たせない。規格の コミットメント は、記事の「断固やる」のことである。
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  品質方針、環境方針 <共通>
<No.87; H18.3.29>  −不祥事防止は経営理念の浸透が鍵−
   日経新聞の連載コラム「回転いす」で、続発する企業の不祥事は「しっかりした理念が従業員に根付いていない」ことだとする住友電工社長の分析を採上げている。経営理念の浸透に社員教育が重要であるが、失われた10年の間は人材教育の余裕も失っていた。同社では今こそ「企業は人なり」を徹底する時期として、「すぐには効果が出ないが十年先に違いが出てくる」と社員教育に力を入れている(3月28日号)。
   ISO9001/14001は 経営理念を踏まえてどのように業務を行うかの組織の意図、方向づけをトップマネジメントが品質方針(5.3項)、環境方針(4.2項)として定め、人々に周知、理解させる必要を規定している。しかしどのようにすれば周知、理解させることができるかは規格は何ら示していない。一般には方針カードの携行や方針書の掲示などの形式が審査を意識してとられているが、形式で理念や方針という哲学や思想、考え方というものを浸透させることは出来ない。
 
<No.51; H17.5.5>  −鉄道マンの基本の徹底−
  JR西日本の電車脱線惨事に関連して、出勤のため当該電車に乗っていた同社の2人の運転士が救助活動に加わらずそのまま職場に向かったが、これら2人から連絡を受けた上司のいずれもが救助活動を指示せず、また、事故に関する緊急処置の手配や関係部門への連絡など何の対応もしなかったことがわかった。 「鉄道マンとしての基本ができていない」「会社全体の意識、仕組みの問題だと思う」との幹部の認識も報じられている(日経新聞 5月5日号)。
   ISO9001では、トップ マネジメントは鉄道事業者の基本たる安全輸送の実現を図るための意図及び方向づけを品質方針として定め、組織内に伝達し理解されるようにしなければならない(5.1, 5.3 d)項)。 人々は普段は品質方針を反映した手順など決まりに従って業務を行っているが、決まりにない状況に遭遇することは少なくない。緊急事態に際する臨機応変の判断と行動を含めて想定外の状況にトップマネジメントの意図に沿って人々が適切に問題に対応できるには、人々は品質方針の意味や意図を理解しておくことが必要である。品質方針を書いたカードを人々に所持させるのは規格の「伝達、理解」ではない。
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  法令、規制
<共通>
時事寸評 <No.111; H19.1.7> −東芝、中国で品質問題のパソコンを販売自粛−
  中国浙江省の工商行政管理局が昨年10月東芝など4社の5型式のパソコンを、静電気への耐性などが基準を満たさないとして不合格とした問題で、東芝の中国法人は問題の2型式について中国全土で販売を自粛していることを明らかにした。「顧客に不安を与えたため」とし、返品に応じるかどうかは同局と協議中という (日経新聞 1月6日号)。
   
ISO9001では組織が製品の仕様を決める際には、顧客の明示の要求と用途上必要と判断される事項(7.2.1 a),b)項)に加えて、「製品に関連する法令・規制要求事項」(同 c)項)を考慮することが必要であると規定している。製品が法規制を満たしたものであることは顧客の最も基本的なニーズ、期待であり、顧客満足を得る前提である。記事は中国ないし浙江省に独自の電気安全基準が存在することをうかがわせているが、東芝等各社がその存在を把握し、例えば製品の設計開発で基準遵守の対応(7.3.2 b)項)をとったのかどうかには何も触れていない。
 
時事寸評 <No.55; H17.6.23>
  −「知らなかった」の常套句−
   新しい会社法の下では企業の不祥事に対して「取締役は『自分は知らなかった』との常套句で責任を逃れる」ことはできなくなる(日経新聞:連載"会社法どう変わる" 6月23日号)。   ISOマネジメントシステムではトップ マネジメントは、顧客のニーズと期待を満たす製品、サービスの提供に対して(ISO9001 5.1項)、或いは、利害関係者のニーズと期待に応える環境改善努力を行うことに対して(ISO14001 4.2 b)項)、それぞれコミットすることが必要である。このようにコミットしたならトップマネジメントは実務において、適用するべき法令・規制要求事項が製品に取り込まれることを確実にしなければならず(ISO9001 7.2.1 c), 5.2項)、或いは、製品と活動に適用される法的要求事項及びその他の要求事項を遵守することにもコミットし(ISO14001 4.2 c)項)、それらの適用(同 4.3.2項)と遵守(同 4.5.2項)を図らなければならない。 これら業務の実行状況は内部監査(8.2.2/4.5.5項)で監視し、マネジメントレビュー(5.6/4.6項)で確認することが必要である。ISOマネジメントシステムではトップマネジメントは、法令違反を「知らなかった」では済まされない。
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  文書、文書管理 <共通>
 <No.135; H19.9.23> −江戸の治安を支えた“異扱要覧”
   江戸の町の治安がよかった理由のひとつは番人制度にある。町の入口や屋敷の門前・角々に合計2,000近くの番小屋が置かれ、行政と治安の最末端をなしていた。治安の異常事態にどのように対応するかの手順を定めた規則集“異扱(イアツカイ)要覧”が残っている。各番小屋には持ち場“廻り場”が決められ、その範囲内の出来事に責任を負う。例えば変死体には身分によって毛氈又は風呂敷を掛け、検死役を待つこととか、2つの“廻り場”の境界にある変死体や水面に浮かぶ 変死体がどの番小屋の担当になるのかを含め、事細かに定められているという(日経新聞 9月23日号。野口武彦連載「江戸の風格」)。
   企業はじめ多数の人々が協働する組織において、組織の目標を効率的に又効果的に達成するためには、人々の責任と権限が明確され、諸業務とそれらの相互関係についての手順や基準が決まっていることが必要である。これらの決め事は文書に記述することによって、関係する人々に決め事がより明確に理解され、決め事が守られることがより確実になる。ISO9001/14001は共に、組織内の人々が思い思いにではなく、定められた手順に則ってそれぞれに委ねられた業務を行い、或いは、責任と権限を果たすという体系的な業務遂行を基礎としている。規格は体系的業務遂行を可能にするために、各人の業務担当範囲、つまり、責任と権限(5.5.1/4.4.1項)を明確にし、業務の手順を文書化(4.2.1/4.4.4項)することの必要を規定している。江戸の町々の治安を保障したのと同じ考え方、手法である。
   
<No.69; H17.11.3>  −東証の大規模システム障害−
   取引全面停止をもたらした1日のシステム障害の原因は解明に至っていないが、基本的な作業手続きのミスを指摘する声が多い。10月11日に改定したシステムのある部分が11月1日に初めて作動し、そのプログラムが正しくなかったのが直接の原因らしい(日経新聞 11月2日)。 ISO9001で コンピューター システムの管理に直接言及しているのは監視、測定用のコンピューター ソフトウェアの適切さを最初の使用に先立って確認する必要の規定(7.6項)だけである。 規格ではコンピューターシステムのプログラムも仕事の手順の記述であり、それを保持するハードディスク等は文書である。しかし文書改定の際の文書管理については、責任者による適切性の確認(4.2.3 a) 項)や、使用時点、場所での改定版の使用可能なことの確実化(4.2.3 ,d) 項)など書類としての文書を想起させる表現に留まっている。人がその手順を実行する場合は書類の内容承認、配付と要員への周知でよい。 しかし、この場合はコンピューターがプログラムの形で手順を教えられ、その手順を実行するのであるから、コンピューターが意図した通りのデータ処理を行うことを確実にする 4.2.3 a),d)項の処置が必要である。規格は必要条件を規定するものであるから、これが何かは教えてくれていない。
 
<No.29; H16.9.19>   −富士ゼロックスが電子文書管理サービスを開始−
    富士ゼロックスは電子保存可能な文書の範囲が広がる電子文書法の来年の施行に合わせて、企業の紙文書を整理・分類したうえで重要度に応じて電子化したり金庫に移し替えたりして文書管理を効率化するサービスを来春始める(日経新聞: 9月18日)。 
    ISO9000では文書とは「情報及びそれを保持する媒体」であり、「媒体としては、紙、磁気、電子式若しくは光学的コンピューターディスク、写真若しくはマスターサンプル、又はこれらの組み合わせあり得る」と規定されている。 ISO14001では「紙面又は電子形式で(中略)情報を確立し維持しなければならない」(4.4.4)と文書化について規定している。 ISOマネジメントシステムで用いる文書は電子化することが認められている。

 
<No.22; H16.7.31>   −電子入札入力ミスで入札指名停止処分−
   
中部地方整備局は、電子入札で極端な低額を提示した四日市市の建設会社を入札の信頼性を損なったとして3ケ月の指名停止にした。低額提示の原因は、パソコンで金額を入力する電子入札で、「万」の位を忘れた入力ミスであった(朝日新聞 7月31日)。
   
ISO9001,14001では、文書の発行に当たり管理者による適切性(ISO9001, 4.2.3 a))、妥当性(ISO14001,4.4.5 b))の観点からの承認が必要であるから、記入ミスは文書を承認した管理者の責任である。しかし、管理者により承認された紙ベースの見積書をパソコン画面に転記するだけなら、普通は画面上の文書を管理者が承認するようなことはしない。これは両ISO規格も許容している。ただし転記されただけとはいえ画面上の文書は重要な文書であるから、間違いないものであることを確実にする、確認などの手順を規定することが大切である。これはISO9001の製品実現の計画の「製品に特有なプロセス及び手順の必要性を明確にすること」(7.1 b))に該当する。
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  記録の管理 <共通>
<No.96; H18.7.14> −トヨタ RV車の欠陥を放置−
   
熊本県警は、RV車の舵取り装置”リレーロッド”の欠陥を認識しながらリコール届出をせず、交通事故が発生したとして、トヨタ自動車部長らを業務上過失傷害で書類送検した。同社では強度不足を社内調査で発見した96年当時は、再現試験や部品回収を通じて発生頻度、被害の程度などを総合的に判断した結果、リコール必要との判断に至らず、2004年の3件の事故発生を受けてリコールを実施したと コメントしている(日経新聞 7月12日)。
   ISO9001では、設計開発の変更の管理(7.3.7項)に関して、変更の必要性、変更の適切さ、妥当さを検討し、この検討には出荷済の製品をどうするのかを含めなければならないと規定している。そして、検討の結果と決めた処置に関する記録を残すよう規定しているが、これは「要求事項への適合性の証拠」のため(4.2.4項)である。記事によると熊本県警は96年の”総合的判断”を過ちと断じたことになるが、記録はこのような利害関係者の指摘や苦情に対して、自身の製品や行為の正当性を主張し、自身を守るために残すものであるから、それに十分な内容でなければならない。
 
<No.76; H17.12.24>  −検査済構造計算書の所在不明で偽装解明調査が難行−
   
耐震強度偽装に係わるマンションの構造計算書の所在がわからず、大田区による偽造手口検証ができない状態にある。同マンションの建築確認は1998年に大田区に申請され、1999年に「検査済」とした書類が残っているが、構造計算書は保存期間1年が経過した時に破棄された。当時は副本の保存義務を定めた法律もなかった(日経新聞 12月22日号夕刊)。
   ISO9001/14001では、「記録」は「達成した結果を記述した、又は、実施した活動の証拠を提供する文書(ISO9000;3..7.6)」である。 記録を作成するのは「要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠(ISO9001;4.2.4)」として、また、「環境マネジメントシステム及び規格の要求事項への適合並びに達成した結果を実証する(ISO14001;4.5.4)」ために必要だからである。記録の維持は事後に何らかの問題が発生した場合に証拠として使用するためであり、記録は問題の原因と責任の所在を明らかにする活動に有力な情報を提供する。両規格とも記録の保管期間を決める必要を規定しているだけで、具体的な保管期間には言及していない。しかし、記録の目的から考えると、その記録がいつまで使用される可能性があるかによって保管期間を個々に決めなければならないのは当然である。構造計算の結果の良し悪しが建物の建築後相当の期間を経過して初めて表面化するものであるなら、構造計算書の1年という保存期間はISO審査では不適合である。
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  資  源 <共通>
ISO 時事寸評 <No.80; H18.1.20>  −約定件数急増で東証システム綱渡り−
   ライブドア事件による取引激増で18日に売買全面停止に追い込まれた東証では、なお1日の注文件数が取引停止発動基準の八割強の高水準となっており、急遽システム改善で1日当たり約定上限を450万件から500万件に引き上げると発表した。もともと小口の売買を頻繁に繰り返す個人のネット投資家が増えるなど、取引の小口化は世界的傾向であり、ニューヨークやロンドンの取引所では先手を打ってシステムを拡充して安定した取引環境を確保している(日経新聞 1月20日号)。
   東証
が世界の証券取引所と競争するには顧客満足向上を基本とした取引所業務の確立が必須であり、顧客のすべての注文を受付けることはその前提条件である。ISO9001では、品質方針に表明した顧客満足を追求するためには、資源がきちっと適用されなければならず、必要な資源を間違いなく評価し決定し投入し維持する資源マネジメント(6章)の実行の必要を規定している。 トップマネジメントはマネジメントの実績、実態と情勢の変化に対応して新たな資源が必要となるかどうかを定期的に体系的に評価することが必要である(5.6.3 c)項)。
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  力量、教育訓練 <共通>
<No.134; H19.9.14> −企業とIT、システム障害と闘う−
     相次ぐ大規模システム障害に関して日経新聞は連載記事「企業とIT、システム障害と闘う」で、業界の取組みと問題点を取りあげている。これまでおろそかにされてきたシステムの品質保証への取組みを強化する業界にとって深刻なのは システムエンジニアが不足していることである。NECソフト社長は「一定の品質を確保するには受注を制限せざるを得ない」と現状を憂う。 システムの現場はいまだに労働集約型の3K職場であり、人手不足に拍車をかけている。インドや中国での技術者の確保にも乗出しているが頭数を揃えるという発想では根本解決にならない。一方でシステム開発作業の自動化やシステム開発手法の標準化などの取組みも始まっている(9月14日)。
    ISO9001,14001では品質方針、環境方針を実現するためには資源の投入が必要である(6.1/4.4.1項)ことを指摘している。最も重要な資源は人であり、人は頭数ではなく、competence(物事を首尾よく行う能力)が指標でなければならないことを明確にしている。即ち業務遂行力の意味であるが、JISはこれを「力量」と和訳している。記事では、企業は品質方針に掲げる顧客満足の実現に必要なシステム の品質保証のためには、いわゆる“ソフト開発”業務能力が不足していることを認識している。企業は、配置転換、教育訓練による社内戦力の強化だけでなく、外注化や、作業の自動化、標準化による効率向上などで対応を図っている。両規格の「必要な力量を決定する*、この必要を満たす教育訓練又はその他の処置をとる*」(6.2.2 a),b)項)、「教育訓練のニーズを特定する*、これらニーズを満たす教育訓練又はその他の処置をとる」(4.4.2項)とは、記事のような状況と対応を指す。
   
<No.130; H19.7.6> −航空管制官に英語試験−
   英語のコミュニケーション能力不足による航空事故が世界的に目立つ。国際民間航空機関(ICAO)によると、1976〜2000年の間に英語の理解が欠けていたことが原因の空中衝突などの事故で約1,100人が犠牲になっている。管制官と操縦士の会話は英語で交わすのが原則。国交省は4日、各空港の航空管制官らに「公用語」である英語の能力を問う試験を課す方針を固めた。対象者は約2,400人で、不合格者は業務に就けない(日経新聞 7月5日号)。
  ISO9001/14001は要員が業務をきちっと完遂するための業務遂行力をもっていることを確実にする必要を規定している(6.2/4.4.2項)。JIS和訳ではこれを「力量」と呼ぶが、規格は「力量がある」ことを教育、訓練、経験、及び「技能」を指標として判断できることを指摘している。「技能」の原英語は skills であるから、 management skill, language skill などの例のように、必ずしも手を使った技量ということでなく、職業的専門性を指す。記事の場合は、管制官の職務遂行力を学校教育を元にした認定資格、管制官としての職業訓練や業務実績で測ってきたことの問題を認識し、「技能」としての英語会話能力をも別途評価することにしたという、航空管制事業者である国交省の「人的資源」管理における経営判断である。
     
ISO 時事寸評 <No.64; H17.9.5>  −団塊世代定年退職の「2007年問題」−
   団塊世代が大量に定年退職する「2007年問題」が日本の製造業を揺さぶっている。技能や技術のベテランから若い世代への継承の難しさを訴える企業が多い(日経新聞  8月29日号)。 連載コラム「経営の視点」は、この事態を長期的な視野に立っての人材育成を怠ってきた報いであると指摘すると共に、何年も前に予測できた「2007年問題」がこのようになったのは製造業が数年前から加速させてきた人員削減が反作用が予想以上に大きかった影響と同情も示してる。 ISO9001 /14001は、効果的効率的な品質、環境マネジメントには「力量のある要員」が必要である旨規定している(6.2.1/4.4.2項)。「力量がある」とは与えられた業務を期待通りに完遂できるという意味である。 組織は、「予想される業務継承の必要性」をも考慮に入れて、組織内に現在も将来も必要な力量が備わっていることを確実にしなければならない(ISO9004; 6.2.2.1項)。 トップ マネジメントが各マネジメントシステムの実施、維持にコミットメントしている(5.1/4.3項)ということは、リストラや人員削減に迫られても品質、環境を疎かにしないと誓約したということであるから、そのための必要条件である「力量の維持」を 疎かにするはずはない。
   

ISO 時事寸評 <No.43; H17.130>  07年以降に一斉に定年退職を迎える団塊世代について若手社員らの半数に、「退職すると業務に支障がでる」と心配する声があることが、野村総研の調査でわかった(朝日新聞 1月30日)。  ISO9001,14001が規定する「力量」とは仕事をこなすことのできる能力のことであるから、これは団塊世代の退職によって事業継続に必要な力量が組織から失われていくということを意味している。組織は現在及び将来に不足する力量、つまり、必要な力量(の種類)を特定し、これを教育訓練ないし採用など他の処置で充足し、常にそれぞれの業務に力量のある人を就かせることができる状態を維持しなければならない。これがISO9001(6.2項)、ISO14001(4.4.2項)の力量に関する意図である。
   
ISO 時事寸評 <No.15; H16.6.30>  財務省の財務総合政策研究所は、団塊世代の大量退職が GDP 16兆円減少など日本経済に与える深刻な影響を分析した報告書を発表した。これには企業の賃金総額が減り収益にプラスになるとの景気への好影響もあることが指摘されている(日経新聞 6月21日)。 企業を支えている熟年層を穀潰し扱いした失礼な表現である。ISO9001では、それぞれの業務を遂行できる能力を "力量" と呼んでいる。大量定年は、熟年層が担っている高度の業務に係わる(高度な)"力量" が組織から一斉に失われていくことを意味する。組織はこのような事態で不足する、つまり、必要となる力量を明確にし(6.2.2 a))、これを補うよう計画的に後継者を教育訓練するかその他の処置(同 b))をとることが大切である。既に多くの企業で再雇用という力量確保の処置がとられている。
 
ISO 時事寸評 <No.24; H16.8.6>  三重県長島町の遊園地で7月27日ジェットコースターが脱輪して子供2人が負傷した事故に関し、整備と運行管理の業務区分が不明確で専門技術を要する部品交換を運行管理者が行なえるなど管理体制の問題が事故の背景であるとする、県の調査結果が発表された(日経新聞 8月6日)。 ISO9001では、その業務を行なうのにふさわしい能力のことを力量と呼び、各業務には力量のある要員を当てる必要を規定している。その業務に力量があるかどうかは、履修した学校教育、組織内の教育訓練の実績、業務経歴及び専門的な技術、技能を根拠として判断する。力量のない要員に業務を行なわせるとこの事故のように製品、サービスの品質に問題を生ずることがある。ISO9001(6.2.1)の力量管理の規定はこのためにある。ISO14001(4.4.2)の「能力をもたなければならない」も同じ意味である。
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  認識、自覚