| ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修 |
| 7.1 項 製品実現の計画 | 実務の視点による ISO9001:2000の解説 <その35> |
35-01-35 |
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7. 製品実現 7.1 製品実現の計画
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1. [7.1項]の趣旨 本項では、製品実現の計画活動の手順を確立し、成約又は受注した個々の製品に対して製品実現を計画する必要を明確にし、適合製品の顧客への引渡しを確実にするための製品実現の計画活動の在り方の要件、及び、計画活動がとり上げるべき事項とそれらの要件を規定している。 2.製品実現のプロセス (1) 製品 プロセスアプローチの考えで書かれているISO9001では、製品とは「プロセス の結果」であり#1、プロセス とは業務のことであるから、ものづくりの工程の結果の製品だけではなく、営業や設計や計測、データ分析の業務等々、組織のすべての活動、業務で得られる結果は製品である。しかし、ISO9001が実際に対象とする製品は、「顧客向けに意図された製品、又は、顧客に必要とされる*製品」とされるから(1.1項 参考)、事業目的として顧客に供給する製品のことである。意図されない製品として「汚染物又は望まなかったサービス提供の効果」が例示#3されているから、顧客に引き渡してはいけないいわゆる不良品は「製品」に含めないということである。「意図された製品」を対象とし、「意図されない製品」を顧客に引き渡さないことを図ることが、品質保証である。 (2) 製品の類型 規格は製品を、サービス、ソフトウェア、ハードウェア、素材製品に分類できるとし、輸送、計算機プログラムと辞書、機械部品、潤滑剤をそれぞれの製品類型の例に挙げている#1。さらに、多くの製品は複数の製品類型を含んでおり、その中の支配的な製品類型で呼び方が決まるとし、例えば自動車は ハードウェアであるが、素材製品(燃料、冷却液)、ソフトウェア(運転説明書)や サービス(販売員の操作説明)をも含んでいると説明#1している。また、組織の事業活動が顧客に提供する製品は一般に、有形、無形の“もの”と サービスを両極端とする座標軸上の連続的なものと認識されるとも説明もある#2。この説明では、限りなくサービス要素の高い製品として法律事務所の提供するサービス、限りなく“もの”の要素の高い製品として自動車販売が挙げられ、その中間的な製品の事例として レストランのサービスが挙げられている。製造業でも営業や販売活動を伴い、サービス業でも“もの”の製作活動を伴う。顧客が“もの”を購入するにせよ、サービスを購入するにせよ、その購入に係わる他の“もの”や サービスに対しても顧客が一定のニーズと期待を持っており、それがどの程度満たされるかが本来の製品を購入をするかどうかの顧客の判断に影響を及ぼすなら、それらの関連する、或いは、付帯的な“もの”や サービスも規格の対象とする「製品」とみなすことができる。 (3) サービス 製品の一種とされる「サービス」の定義#1は「必然的に供給者と顧客との接点で実行されるひとつ以上の活動の結果であり、普通は無形なもの*」と難解である。英語service の普通の意味(13)は、「顧客のために何事かをなすが、品物を作らない事業」「ホテル、レストランや店舗で顧客を支援し、又は、何かを販売すること」であり、経済や市場用語(1)としての サービスは「物たる商品に相当する非物質」であり、その事業は「所有権をもたらさない経済活動である」とも説明されている。 規格では、“サービス”は“サービスの提供(service provision)”というプロセス (活動、業務)の結果としての“製品(product)”である。自動車が修理された、納税申告が代行された、知識情報が伝わったという状態、事実や、ホテルやレストランで顧客が味わった雰囲気が“サービス”であり#1、それを実現するための、自動車の分解、点検、補修、収支情報の加工、計算、申告書の作成、問合わせに対する回答、さらに、室内外の装飾、従業員の応接などが、それぞれの“サービス提供”のプロセスである。なお規格では、製品たるサービス を顧客に引渡す行為、活動は、“サービスの引渡し(delivery of service)”と表現される。サービスの種類によっては、“サービスの提供”と“サービスの引渡し”が同時であることもある。 規 格では通常、サービスも他の類型の製品も一括して「製品」と表現しているが、「製品」をもたらす活動の場合は「製造又はサービスの提供」と表現して、サービス とその他の製品とを区別した表現となっている。「製品」を組織の元から出す行為は「製品のリリース (release of product)」であり、時に「製品の出荷」とも表現され、顧客に引き渡すことは「製品の引渡し(delivery of product)」であり、時には サービスに限定した「サービス の引渡し(delivery of service)」という表現も見られる。 これら製品やサービスの概念や説明は94年版#2,#3にも見られ、基本的には変わってはいない。但し、94年版に関連して存在した「品質マネジメント及び品質システム要素−第2部 サービス の指針」#2に相当する文書は2000年版には引き継がれていない。ただし、サービス分野でのISO9001使用のための解説書(2)が2006年9月になってISOとITCとの共同で発行された。 (4) 製品実現の業務体系 受注から製造又はサービス提供から製品の顧客への引渡しなど、製品を生み出し顧客へ引渡すことに関連する一連のプロセスを総称して「製品実現の諸プロセス (product realization processes)」と呼ぶ。聞き慣れない言葉だが インターネット検索に現れるし、欧米の規格解説書でも語源や語意について特段の説明がないから、規格独特の用語ではなさそうである。米国より欧州の方でよく使われるとする説明(3)もあるから、英語圏では一般的な用語なのかもしれない。 この諸プロセス は、顧客要求事項に適合し顧客満足を創造する製品を引渡し、また、製品の継続的改善を図るすべてのプロセス であり、直接的に製品を生み出すプロセス のみに限定されるものではない(4)。 94年版が“付帯サービス”という名で規定#23していた事業目的の製品に関連又は付帯するサービス は、2000年版では“引渡し後の活動”であり、これも製品実現のプロセス のひとつである。更に、製品の種類や機能説明の活動など契約前の活動、文書や記録の管理、要員の力量や教育訓練の管理、購入先や外注先のプロセスの管理などのプロセスが、適合製品の引渡しや顧客満足の獲得に不可欠であれば、それらも製品実現のプロセス として取り扱うことが必要である。 プロセス とは業務のことであり、製品実現の諸業務には、それぞれの実行に必要な要員や設備など資源が整えられており、所定の結果を出すように各業務を実行する手順が確立しており、諸業務は適合製品の確実な引渡しを目的に相互に関連をもって実行されるようになっている。これら諸業務は「相互に関連する、又は、相互に作用する要素の集まり」という「システム」の定義#19に適うから、諸業務は全体としては製品実現システム である。実際、TC176のプロセスアプローチに関する指針文書の最新版では製品実現の諸プロセスを システムとして図示している(10)。製品実現システム とは、適合製品の引渡しを目的とする種々の業務の有機的集合体であり、製品実現の業務体系であり、実体的には製品実現の体制のことを指し、組織の事業活動の中核をなす活動の枠組みである。但し、規格ではISO9001適合の業務体系の全体を品質マネジメントシステム と称しているから、それとの混同を避けて システム という表現をとらず、製品実現の諸プロセス と呼んでいる。 ところで、規格の組織内のプロセスの説明の中には、例えば、「品質マネジメントシステムの諸プロセスには製品実現の諸プロセスが含まれる」(7.1項 参考1)とか、「〜の手順は一般に、品質マネジメントの諸プロセスに関連するものと製品実現に関連するものとを含む*」#20とか、品質マネジメントシステム が「マネジメント諸活動*、諸資源手配*、製品実現、測定の各諸プロセス」から構成される(4.1項 参考1.)というような記述がある。すなわち、組織のプロセスを、品質マネジメントシステム、品質マネジメント又はマネジメント諸活動、及び、製品実現活動の構成要素として描いている。この中で、品質マネジメント又はマネジメント諸活動の諸プロセスと呼ばれているプロセス群は、規格の5章の各条項に相当する トップマネジメント 主体の諸プロセスを指している。こちらの諸プロセスも顧客満足向上に向けて相互に関連して実行されているから、システムとみなすことができる。 これら両システムとも、その構成プロセスは品質マネジメントシステムのプロセスであるから、品質マネジメントシステム内の二次システムとみなすことができる。例えば文書管理プロセスのように特定のプロセスはこれら両二次システムで共有されている。品質マネジメントシステムは、その目的達成を分担するこのような二次システムのいくつかから構成されていると考えることができる。 3.製品実現の計画 (1) 製品実現の計画活動 JIS和訳の「計画」は原英語が planning であり、「計画活動」のことである。また、英語(13)の「計画する(plan)」とは、「将来実行する事を詳細に手配する」、規格(12)では「(処置や企画された一連の事柄の処理の実行のために)前もって手はずを整える」である。製品実現の計画活動とは、製品実現に必要な諸業務とそれらの順番と相互関係を決め、各業務の手順を確立し、要員、設備など資源を準備することである。事業活動を効果的、効率的に行うためには組織は、必要な顧客満足向上が図られるように顧客要求事項を決定し、それを満たす製品を確実に顧客に引渡すことができるように製造又はサービス提供を中心とする一連の諸業務の手順と資源を定め、準備することが必要である。すなわち、製品実現の計画活動とは、組織の事業の各製品の製品実現の体制を整える活動である。 94年版では「品質計画」という条項#13で品質マネジメントシステムの計画と製品実現の計画が一緒に、また、製品実現の計画の結果の品質計画書まで一緒に規定されており理解に混乱を生じていた(8)。2000年版では前者が5.4.2項、後者が本項に分けて別々に要求事項が規定されることになった。しかし、「品質マネジメントシステムの計画」の定義#14は「品質計画」という名で規定されており、「製品実現の計画」の結果を表す文書を「品質計画書」と呼ぶなど、混乱が残った。 (2) 製品実現の計画の手順 94年版では各条項の書き出しの第1文は決まって、「〜する手順を文書に定め、維持すること」であった。2000年版では、4.1項で「この規格の要求事項に従って、品質マネジメントシステムを確立し、文書化し、実施し、かつ、維持すること」と一括して規定され、各条項では書き出しの第1文も「〜すること」としか書かれていない。規格の意図では、本項の「製品実現のプロセス を計画すること」は、「製品実現のプロセスを計画する手順を確立し、必要により文書化すること」の意味である。ここに、手順の文書化の必要性は「プロセス の効果的な計画、運用、管理を確実に実施するために」どうかという組織の判断(4.2.1 d)項)である。また、「手順を確立し、必要により文書化する」という活動は、2000年版では「品質マネジメントシステムの計画活動」(5.4.2項)である。5.4.2項は、すべての条項に相当するそれぞれのプロセス に関してその手順の確立の必要を一括して規定している。 5.4.2項への適合を主張するには組織は、「製品実現の計画」を計画しておくことが必要である。組織は、必要な時点で個々の製品について効果的な製品実現の計画活動が確実に行われるように、製品実現の計画活動の手順を確立しておかなければならない。この手順には、いつ、誰が、何を、何に則って又は用いて決めるのか、結果を何に表し、誰が承認し、それをどのように使用するのかが含まれていることが必要である。「製品実現の計画」の計画活動のアウトプット は、製品実現の計画活動の手順であり、この手順は大抵の組織では4.2.1 d)項に照らして文書化が必要である。 (3) 製品実現の計画の実行 事業を営むからには、受注から製造又はサービス提供から製品の顧客への引渡しなど、製品を生み出し顧客へ引渡すことに関連する一連の業務又は工程、手順、要員や設備など基本的な製品実現の体制が確立していなければならない。成約や受注の度毎に、一から製品実現の計画を行うというようなことは普通ではない。この事業の基本体制を整えるのも、製品実現の計画活動である。事業開始又は事業拠点の開設に当たっては、予定の製品に関して製品実現の計画が行われ、その結果としての製品実現の体制の下で事業活動が開始される。 しかし、この後も新しい製品が加わるから、これら製品に関する製品実現の計画を行うことが必要となる。 製品実現の計画活動をどのように行うかは、業種や業態などで大きく異なる。TC176の中小企業向け解説商業本の94年版(9)は、この類型を3つ挙げていた。すなわち、製品受注が日常的で反復性の強い事業では、既存の手順と資源の選択だけでよい。常に新規注文、プジェクト受注である事業では、その度毎に新たに製品実現の計画を行うことが必要となる。定例的でない製品の受注の時だけ製品実現の計画を行えばよい事業もある。本項は、製品実現の計画活動が多様ではあっても、どのような製品実現の計画活動でも決定しなければならない事項を、a)〜d)項として明確にしている。 (4) 製品実現の計画の結果 製品実現の計画の結果は、製品実現の計画活動というプロセス の結果であるから、「計画のアウトプット」である。計画の結果は、個々の製品を製造又はサービス提供し、顧客に引渡すことを可能とする手はずや手配のことであり、その製品の製品実現体制が確立されたという事実を指す。これが実際にどういう状況であるかというのが製品実現の計画のアウトプットである。大抵の事業の日常的な製品実現の計画活動の結果は、業務又は工程とその手順、或いは、資源適用の手順の指定なし変更であるから、作成又は変更された文書、或いは、既存文書の特定の手順を指定する文書の存在が製品実現の計画活動の結果の中心となる。しかし、新商品を自ら開発し量産するような事業では、新規製品の製品実現計画の結果は、新設備や新たな要員の配置、手順書を含むその製品の製品実現の体制そのものである。また、店舗販売型事業の新規サービスの製品実現計画の結果は新たに設置された販売コーナーと訓練され配置された要員である。更に、大規模工事の事業では、計画の結果が工事に必要な工場や設備、機材の購買とその施工計画書であり、購買や施工自体が製品実現のプロセスであることもある。いずれの場合でも、設備や要員によって業務が行われる訳であるから、実際には業務の手順を確立することが製品実現の体制の確立の大きな部分を占める。 規格は、この手順の文書化の必要を直接的に規定していないが、製品実現の諸業務の効果的実行を確実にするためには文書化(4.2.1 d)項)することが必要である(5-a)。 個々の製品についてどのように製品実現を図るかを記述する文書は、規格では「品質計画書」と呼ばれる(7.1項 参考1.)。 品質計画書の定義#20、「個別の製品に対してどの手順及び関連資源が誰によって、いつ適用されるかを規定する文書」が示すように、所定の品質の製品を実現する方法は、一般には製品実現の諸業務と順番、その手順と資源を記述することで表される。ただし、すべてを単一の品質計画書の中に記述する必要はなく、a)〜d)項のそれぞれがどこに規定されているかを記述した形でよい。94年版では、品質マネジメントシステムの「適当な手順書を引用する形」であってもよい#18と明確に説明されていた。また、94年版では品質計画書の作成が必要と規定されていた#13が、2000年版にはその規定はない。2000年版では本項の参考1で、品質計画書は製品実現の計画活動の結果を文書化するひとつの方法であり得ると説明されている(4)だけである。 計画の結果は品質計画書を含み、手順書、業務実行指示書、計画書、企画書、製品仕様書、図面、現物見本など種々の機能の文書に表される。文書の具体例としては、工程計画書、製造又はサービス提供日程計画書、資源調達及び日程計画書、検証/検査・検査計画書、管理計画書、手順書、作業手順書など(5-b)、また、プロジェクト実行計画書、製品開発計画書、生産計画書、調達計画書、保守保全実行計画書、管理又は検証計画書、施工計画書、試運転計画書、実績評価計画書など(6-c)が挙げられている。 4.品質保証の業務体系 (1) 製品の品質目標 規格で「品質目標」とは「品質に関して、追求し、目指すもの」であり#21、「インプットをアウトプット に変換する活動」であるプロセス#22 の アウトプット の狙いや目標のことを意味する。 「品質目標」は、改善の活動の狙いの到達点であるだけではなく、品質マネジメント のすべての各業務で達成すべきもの、つまり、業務の目標のことを指す。従って、製品実現の一連の業務の狙いの到達点は、「製品の品質目標(quality objectives for product)」である。製品実現の一連の業務を製品実現システムとみなすなら、これは製品実現システムの品質目標である。また、製品実現の一連の業務の内の製品の実現を直接担う各業務の品質目標は、製品の品質目標と呼ばれる。とりわけ、製造又はサービス提供の業務自体がいくつかの業務又は工程から成り、それらの業務を次々と重ねて実行することで製品を完成させるような場合は、各業務又は工程のそれぞれの目標も「製品の品質目標」である。購入先や外注先の製品実現の業務の結果は素材、購入品、中間製品などであるが、それらを生み出すための購入先や外注先の各業務又は工程の狙いも「製品の品質目標」である。製品の品質目標にも、システムの狙いとしての製品の品質目標と、それを達成するための各プロセスの狙いとしての製品の品質目標がある。製品実現を直接担わない業務の狙いは“品質目標”である。 顧客のニーズと期待を満たすためにどのような製品でなければならないかは、規格では「製品要求事項」(6.3項等)又は「製品に関連する要求事項」(7.2.1項等)として表される。これは、製品に関する要件又は必要事項の意味である。この製品要求事項を満たす製品を製造又はサービス提供して顧客に引渡すための製品実現の一連の業務の全体的目標が製品の品質目標である。製品の品質目標は製品要求事項を基礎として決められる。この製品の品質目標の達成を目指して製品実現の諸業務を計画する際に、各業務又は工程の実行の目標としてのそれぞれの製品の品質目標として展開される。 製品の品質目標には、製品の実体に関する要素と製品の価値に関する要素がある。前者は、どのような製品であるかを表すものであり、例えば、ハードウェア製品では構造や機構、外観、素材製品では組成や性状、ソフトウェア製品では情報とその担体、サービスでは利便や感情刺激などである。後者は製品の機能、性能、効用、効能を表すものであり、ハードウェア製品では性能や機能、素材製品では性能や重さ、ソフトウェア製品では機能や印象、サービスでは受益度、好感度など顧客満足度に関係するものである。製品そのものの実体や価値と直接関係しない、例えば、納期や引渡し方法、製品表示条件、更に、製品説明や製品相談活動や補修活動の関連サービス など製品の顧客満足に関係する事項は、規格の本項では製品の品質目標には含めず、「製品に関する要求事項(requirements for product)」と呼んでいる。すなわち、製品要求事項を満たすための製品実現の目標は、「製品の品質目標」と「製品の要求事項」とで表される。本項では後二者は、quality objectives and requirements for product と一括して表現されており、JIS和訳では「製品に対する品質目標及び要求事項」である。 (2) 2種類の品質保証 品質マネジメントシステムをいくつかの二次システムの集まりとする考え方の中では、製品の品質保証を直接の目的とする二次システムには、マネジメント諸活動システム と製品実現システム がある。マネジメント諸活動システムは、顧客のニーズと期待を満たすためにはどのような製品を供給しなければならないか、或いは、どのような製品が顧客満足向上に繋がって組織の発展をもたらすのかを判断して決めることが役割である。一方、製品実現システムは、そのような製品を間違いなく製造又はサービス提供し、良品のみを顧客に引き渡すことが役割である。製品実現システムが生み出し、顧客に引渡す製品は、マネジメント諸活動システムが生み出す品質方針や商品戦略に基づいており、製品は品質マネジメントシステムが生み出したものでもある。 すなわち、品質マネジメント において製品実現を管理する活動は、製品の品質目標を達成することを確実にする活動である。これは、「ある“もの”が品質要求事項を満たすことについての十分な信頼感を供するために…実施される…活動」と定義#6され、不良品を出さないという、94年版の概念の品質保証の活動である。この場合の「品質」\1は、一般に品質が良いとか悪いとかの品質である。 製品実現システムが生み出した製品は、品質マネジメントシステムが生み出した製品として顧客に引渡される。製品実現システムの狙いの品質目標を満たした適合製品であっても、その製品の品質目標が顧客のニーズや期待を満たしていないなら顧客に受け入れられない。品質マネジメントシステムとしては、つまり、組織としては、製品実現システムの不適合製品だけでなく、このような理由で顧客に受け入れられない製品も不適合製品である。2000年版の「品質」\2は事実上、顧客満足度のことを指す(7)。 この「品質」に関する「要求事項が満たされるであろうという信頼感を供する」活動が、2000年版の品質保証活動#5である。 世界的に不良品や欠陥製品が日常的問題ではなくなった今日の世界市場で組織が顧客の支持を得て発展するには、マネジメント諸活動システムが顧客のニーズや期待を正しく判断し、製品実現システムの製品の品質目標に正しく反映させることが、業種、業態によってはとりわけ、重要になる。 5. 組織の日常業務の管理 (1) 日常業務 一般に組織は製品を生み出し、顧客に買ってもらうという事業を行っている。事業活動には多様な形態があるが、組織の日常とはつまるところ、製品の製造・サービス提供の業務を中心とする応札または受注から製品の顧客への引渡しまでの一連の業務を行うことである。組織が事業を行うには、その製品に関するニーズの把握に始まり、製品の企画、開発、製造・サービス提供、製品の引き渡し、保守や使用相談など事後サービス、また、契約や受注、製品広報、苦情処理、更には、資材や原材料の購買、外注等々、一連の業務とその実行に必要な要員配置、設備、営業拠点など製品実現の体制を確立していなければならない。これらの諸業務が規格の「製品実現のプロセス」で、個々の製品についてこのような体制を整える活動が「製品実現の計画」である。 少数の特別な熟練者がすべての製品実現を担うような組織を除いては、成約又は受注した製品それぞれについて、必要な品質ないし仕様や要件、及び、必要な数量や引渡し時期が明確にされ、その実現の方法が決められ、配置された要員が設備を使用して協働して製品の製造又はサービス提供し、顧客に引渡すための種々の業務を行っている。大型プロジェクト専門のような組織を除くほとんどの組織では、個々の製品の成約又は受注は日常業務のひとつである。 組織の日常業務は一般に、確立した製品実現の体制の下に、個々の契約又は注文の製品の品質と時間及び数量並びにそれらの実現の方法を決める業務、及び、それに基づいて製品を製造・サービス提供を行うことに関連する応札や受注から製品の顧客への引渡し、引渡し後の活動までの一連の業務が中心である。すなわち、製品実現の諸業務は組織の日常業務そのものである。 (2) 製品実現の管理 組織の日常業務の管理は、個々の製品について顧客に受け入れられる製品を確実に引き渡すことである。この管理は、製品の品質特性とその実現の方法、及び、日程を決めることから始まるが、それぞれを決める活動は、品質設計、工程設計、日程設計と呼ぶとわかり易い。すなわち、 @ 品質設計:成約又は受注した製品の仕様や要件を適切に決める活動 A 工程設計:そのような仕様や要件の製品を実現する方法を決定する活動 B 日程設計:所定の時期に製品を引渡すために必要な製品実現の日程を決める活動 である。 この製品実現の計画を実際にいつ行うかは、組織の事業の形態によって異なる。プロジェクト型事業では、品質設計から工程設計、日程計画までが個々の製品の見積りや成約時に行われ、組織が自身で商品メニューを揃えるような事業形態では、顧客の潜在ニーズや期待を汲み取って新商品を開発しようとする時点で品質設計が行われる。量産型事業でも受注の都度、顧客の要求に合わせて標準品を変更する軽微な品質設計が行われる。店舗販売など顧客待ち受け型の事業では、品質設計はサービス企画の時点で行われる。 (3) 業務実行の管理 どの組織でも管理者がおり、諸業務が効率的、効果的に行われるよう、それら諸業務の実行を監督し管理している。 組織の事業活動に関する日常の業務実行の管理は、所定の品質ないし仕様や要件の製品を、所定の数量だけ、所定の時期に、製造又はサービス提供し、顧客に引き渡すようにすることが狙いであり、品質設計、工程設計、日程設計の結果がその通りに実行されるよう図ることである。製品実現の手順にも、製品品質の達成のみならず、コスト、能率、労働安全或いは環境など様々な観点が織り込まれており、日常の業務実行の管理もこれら様々な観点で行われる。 この日常の業務の品質に関する実行管理は、規格の「品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメント の一部」である「品質管理」#12である。 この品質管理は一般には、順守管理、検査又は試験から成る。 @ 順守管理:製品を実現する方法が、決められた通りに間違いなく行われるようにする。 A 検査又は試験:得られた製品が、所定の品質を満たしていることを確認する 更に、製品が、所定の時期に間違いなく顧客に引き渡されるように管理する日程管理の他、設備の保全、要員の勤務管理、文書の配付や情報伝達の管理も日常の業務実行管理に含まれる。 (4) 管理の縦串と横串 日常業務の管理は、成約又は受注した個々の製品の効果的、効率的な実現と顧客への引渡しを図ることであるから、管理は個別の製品が基本となる。品質設計、工程設計、日程計画の結果も一般には、個々の製品を単位にして表され、製品実現の各業務の業務実行の管理、検査又は試験、日程管理も個々の製品を単位として行われる。 プロジェクト 受注型の事業では特に、このような管理形態が主体となる。反対に、カタログ標準品の大量生産、或いは、在庫販売のような事業では、例えば工程設計の結果は関係する業務又は工程毎に表わされ、提示される方が都合がよいし、日程設計も各業務又は工程に対する生産計画であり、その実績の管理が日程管理となる。 個々の製品を単位とする管理では、製品毎の不良や数量過不足、工程進捗などが指標となり、業務ないし工程を単位としての管理では、業務ないし工程毎の不良率、歩留り、製造又はサービス提供実績、納期達成率などが指標となる。作業手順は、製品単位に定められることもあるが、業務や工程の作業単位に定められる場合も少なくない。 個々の製品の実現を中心にする管理と業務又は工程の実行を中心にする管理は、それぞれ日常業務の管理の縦串及び横串にたとえることができる。一般にどの組織の日常業務の管理も、どちらの串がどの程度太いか細いかの違いだけで、縦串及び横串の両管理を組みあわせて行われている。 6.規格要求事項とその真意 (1) 製品実現に必要なプロセス を計画、構築する [第1節: 第1文] JIS和訳「製品実現の計画」は、製品実現の計画活動の意味である。組織は、製品実現の計画活動の手順、すなわち、いつ、誰が、何に基づいて行い、結果を何に表すかの手順を確立しておくことが必要である。これは、5.4.2項がすべての条項に相当するプロセス に関して一括して規定している要件である。また、94年版なら「〜する手順を確立すること」を「〜すること」としか記述しないのは、2000年版規格の要求事項表現の特徴である。 製品実現の計画活動とは、必要な顧客満足向上が図られるように製品要求事項(7.2.1項)を決定し、製品実現に直接、間接を問わず必要なすべての諸業務とそれらの順番と相互関係を決め、各業務の手順を確立し、要員、設備など資源を準備することである。規格は7章で製品実現に直接係わる業務として、本項の製品実現の計画の他に、製品仕様の決定を含む受注業務(7.2項)、製品実現の工程設計(7.1項)、製品の設計開発(7.3項)、購買業務(7.4項)、製造又はサービス提供の管理(7.5項)を挙げ、適合製品の引渡しを確実にするためのそれら各業務又は工程に関する要件を規定している。8章にも監視測定(8.2.3項)と製品の監視測定(8.2.4項)を挙げ、適合製品の引渡しを確実にするための要件を規定している。その他、文書や記録の管理(4.2.3, 4.2.4項)、また、要員の力量や教育訓練の管理(6.2.2項)、設備の導入(6.3項)、作業環境の整備(6.4項)なども製品実現のプロセスとなることがある。 規格は7章の各条項として、製品実現に直接必要なプロセスを挙げているが、条項の順番は製品実現の業務又は工程の順番とは無関係である。規格はそれら条項のプロセス を計画する際の要件を「要求事項」として規定しているだけである。 製品実現に必要なプロセスは、組織の製品や事業形態によって異なる。7章の各条項の特定のプロセス 又はプロセスの要件が、所定の品質の製品を間違いなく生み出して顧客に引渡すために必要でない、或いは、業態から存在し得ない場合は、そのプロセス 又はプロセス要件は製品実現のプロセス から除外し、或いは、該当する要求事項の適用を除外すればよい(1.2項)。しかし、そのようなプロセス が外注化したことによって組織内に存在していない場合には、そのプロセス の製品実現の計画をしなくてよいということにはならない。組織が個々の契約又は注文の製品を所定の品質の製品として確実に顧客に引渡すためには、外注化したとしても組織内で実行する場合と同等の手順や資源の適用が必要である。製品実現の計画活動では、そのような外注先、購入先の業務及びその結果として組織が受取る製品が間違いないものであることを確実にするための管理の手順を決めなければならない(4.1項)。 「計画して、構築すること」の英原文は、 shall plan and developである。 このplanとdevelopの違いについてであるが、組織内に製品を実現する業務又は工程の実行体制が整備され存在しており、成約又は受注した製品の具体的な実現の方法や条件を決めるなら「計画する(plan)」である。しかし、新商品の量産移行時や新規なプロジェクトの成約時や、或いは、新規な特性の製品の受注時などには、これまでにない新しい業務又は工程、手順や要員、設備が必要になる場合がある。新たにすべての手順を決め資源を用意しなければならない場合、あるいは、試作や試験が必要な場合などは「開発する(develop)」である(6-b)。規格執筆者も、参考2.の記述を引用して同じ趣旨の説明をしている(4)。この場合の製品実現のプロセスの開発は、7.3項(設計開発)の要求事項に則って行うのが効果的であることがある(参考2.)。 plan and developという表現の規格の意図は、「計画して、構築する」というより、「計画、又は、開発する」である。 (2) 品質マネジメントシステムのその他のプロセス の要求事項と整合している [第1節: 第2文] この規定は、全く同じ英語文言で94年版の品質計画に対しても書かれていた#13。 この意味については、「製品実現の諸プロセス を計画する際には、規格の4.1項の要求事項を念頭に置かなければならない」(11)と軽くとらえる解釈もあるが、規格執筆者のひとりは「製品実現の諸プロセス は、それらが規格の7章の他の要求事項に従って実行され、4.1項の要求事項を満たすことになるように決定され、計画されなければならない」(5-a)と説明し、あるいは、「個別の製品の実現のために適用するプロセス は、品質マネジメントシステムを構成するプロセス であるか、それを発展させたものか、又は、既存の諸プロセス に合う新しいプロセス でなければならない」(6-d)とも説明されている。製品実現の計画で決定する個別製品の実現のための諸プロセス やその手順は、組織の品質マネジメントシステム という枠組みや規格の関連する条項の要求事項とは矛盾があってはならない。製品実現の各プロセス は、新たに開発したプロセスを含み組織の品質マネジメントシステムの中のプロセスであることを確実にし、その手順は品質方針やそれを反映する業務実行に係わる決め事や原則に沿うものでなければならない。製品実現の業務体系が、全体の品質関連業務の体系である品質マネジメントシステム の中の二次システム であることを確実にしなければならない。 (3) 製品実現の計画に当たって、次の該当するものを明確にする [第2節: 前段記述] 「明確にする」の原英語はdetermineであるから「決定する」である。組織は、製品実現の計画活動においては、次のa)〜d)項の事項を必要に応じて決定しなければならない。 a)項は製品実現の一連の業務の目標であり、b), c)項は製品実現の各業務の手順に関し、d)項は各業務の実績に関する事項である。個々の製品について、a)〜d)項を決定することが規格の意図する製品実現の計画活動である。 (4) 製品に対する品質目標及び要求事項 [箇条書 a)項] 組織は、個々の製品について決定された製品要求事項(7.2.1項)に基づいて、どのような製品を製造又はサービス提供し、顧客に引渡すかを決める手順をもっていることが必要である。組織はこの手順に則って、引渡そうとする製品の実体と価値の狙いを製品の品質目標として明確にしなければならない。製品実現の計画活動は、これを達成又は実現できるように製品実現に必要な諸業務又は工程と手順、資源を決める活動である。製品実現の計画では必要により、この製品の品質目標の達成又は実現を確実なものとするために、各業務又は工程の結果である原材料、部品、中間製品などに関する製品の品質目標も決めることになる。 本項の「製品の品質目標」は、5.4.1項(品質目標)で「7.1 a) 参照」として確立の必要が規定されている「製品要求事項を満たすための品質目標」と同じものである。但し、本項では、製品要求事項の内で顧客満足には必要だが製品の実体と価値には直接関係しない包装や輸送、付帯サービスの条件のような事項は、製品の品質目標に含めず、「製品に対する要求事項」と表されている。製品の品質目標もその他の要求事項も、製品実現の各業務の実行を管理するために、狙い値だけでなく許容される範囲、つまり、管理基準を伴うことが必要である。 (5) プロセス、文書の確立、資源の提供の必要性 [箇条書 b)項] 組織は、製品実現の計画活動によって、個々の製品について品質目標が明確にされ、その達成又は実現に必要な業務又は工程を決め、その手順を確立し、手順を必要に応じて文書化し、加えて、手順実行に必要な資源を使用できるようにしなければならない。 JIS和訳の「製品に特有な」は、「個々の製品についての〜」の方がわかり易い。すなわち、JISは … specific to product を直訳しているのであるが、 これは“個々の製品の”という意味で使われている。実際JISも同じ用法の c)項や参考1.ではそれぞれ「その製品の」、「特定の製品の」と和訳している。また、「必要性」の意味に関しては、第2節 前段記述(上記(3))と繋ぐと、「プロセスの確立の必要性を明確にする」であり、何をすることなのか意味が通じにくい。原英語の need(必要)を動詞形(〜が必要である)に和訳して、“どのようなプロセス が必要であるかを決定する”の方がわかりやすい。 「資源の提供(provide resources)」は、資源を利用できるようにするの意味である(6.1項)。 各業務又は工程の手順や資源に関する要件は、7章を中心に規格の該当するそれぞれの条項に規定されている。文書化が必要かどうかは、文書化の要件を規定する4.2.1 d)項に基づいて判断するとよい。 不足する又は必要な資源を充足する効果的な手順は6章に規定されている。 (6) 製品の検証、妥当性確認、監視、検査及び試験活動、合否判定基準 [箇条書 c)項] 組織の製品実現の計画活動は、個々の製品に必要な検証、妥当性確認、監視、検査及び試験の各活動を、製品の合否判定基準と共に決定することを含んでいなければならない。 JIS和訳の「その製品のための」は ….specific to product であるから、[個々の製品についての〜]である。「検証」「妥当性確認」「監視」「検査」「試験」はいずれも、PDCAサイクルのCに相当する活動であり、同種の活動としては「測定」も規格に登場する。それぞれには定義ないし用語使用の指針が規定されている。 まず、「監視(monitoring)」は「観察、監察、監視下におくこと、又は、一定時間間隔で測定又は試験すること(特に規制や制御の目的で行う場合)」(12)、「測定(measure)」は「あるものの空間的大きさ又は量を確定又は決定すること、又は、寸法や容量が既知のものを適用するか又は一定の単位物と比較することによって確定又は決定すること」(12)と定義されている。大体は日本語の意味の通りであり、前者は状態の評価、後者はその定量化といった程度の区別でよい。そして、「試験」は「手順に従って1つ以上の特性を決定すること」#28であるから、監視や測定のひとつの手段という位置づけである。 次に、「検証」は「客観的証拠を提示することによって、規定要求事項が満たされていることを確証すること*」であり#24、「妥当性確認」の定義は「規定要求事項」の代わりに「個々の意図された使用又は適用に関する要求事項*」を当てはめればよい#25。ここに、要求事項を満たすとは「適合」#26という意味であるから、検証も妥当性確認も適合性を証拠によって明確にする活動である。監視や測定或いは試験の結果の情報が、この証拠となり得る#27。 また、「検査」は「観察及び判断に基づく適合性評価」#29のことであり、必要により「測定、試験、又は、計測を伴う」とされている。検査も適合性に関係し、客観的証拠に基づく活動であるが、適合性を判断し決定するという点で、適合性を自他に明確にする活動の検証や妥当性確認と区別される。後者には適合性の判断も含まれているはずだから、前者は後者の一部と考えることもできる。 製品実現のプロセスとしてのこれらの活動の必要と要件は、7.5.2項(製造及びサービス提供に関する妥当性確認)、8.2.3項(プロセスの監視及び測定)、8.2.4項(製品の監視及び測定)に規定され、購買製品への適用の必要も規定されている(7.4.3項)。94年版では、受入検査・試験、工程内検査・試験と最終検査・試験の要件を規定していた#32。すべての業種に適用可能な汎用規格としての2000年版では、製造業に特徴的なこのような試験、検査の記述がなくなった。しかし、同じく2000年版で消えた「製品実現の適当な段階で検証を行わなければならない」という規定#31の趣旨は、適合製品の顧客への引渡しを確実にするために、どの業種でも活かされなければならない。 「製品の合否判定基準」は criteria for product acceptanceであり、製品の検査の合否判定基準(8.2.4項)の acceptance criteriaである。 基本的に製品の品質目標の許容範囲(上記(4))と一致するものであるが、実務では意識的に異なったものにすることもあり得る。94年版にあった「合否判定基準は、主観的な要素を含むすべての特徴と要求事項に関して決めなければならない」との要件#33も2000年版には存在しないが、この趣旨は汎用規格としてはより重要な意味をもつと思われる。 (7) 製品実現のプロセス及び製品の適合性の実証する証拠の記録 [箇条書 d)項] 「記録」は、業務の実行と結果の事実を表す文書#30であるが、条文に「4.2.4参照」と規定され、同項の要件に則って管理することが必要な記録は、要求事項への適合及び業務の効果的実行の証拠となる記録(4.2.4項)だけである。これらの記録は、事後に問題があった場合に、問題なく業務が行われ、所定の結果が出ていたことを確認し、又は、主張することが目的である。また、問題の事実と記録の照合により現行の業務実行手順の問題点を明らかにすることができる。 しかし規格は、品質マネジメントの諸業務の実行及び関連する外部の情勢を正しく把握し、問題を摘出し、また。解決を図るための データ分析の活動(8.4項)の必要を規定している。このための製品実現の諸業務の実行と結果に関係する「監視及び測定の結果やその他の情報源からのデータ」となる記録も必要である。更に、規格が規定していないが、この他にも組織の業務の効果的実行或いは事業発展に資するための データや情報の記録があるかも知れない。 製品実現の計画では、どのような記録を作成し、どのように利用するのか、どのように維持するのかを決定し、当該の各手順に含ませることが必要である。必要な記録が間違いなく得られるように、多くの場合はそれぞれの記録すべき内容を明確にした書式が用意される。この書式の文書としての管理の要件は4.2.3項に、また、記録の管理の要件は4.2.4項に、それぞれ規定されている。 (8) アウトプットは、計画の実行に適した様式である [第3節] 計画(planning)とは手はずを整えてその業務を実行できる状態を確立することである。計画の結果をどの段階又は時点で、どのような形で表すか、どのような文書を作成するのか等は、組織の事業の種類、形態、規模、製品の性格、製品実現プロセスの複雑さ等により異なる。JIS和訳「アウトプットは、組織の計画の実行に適した様式であること」の英原文は、 shall be in a form suitable for the organization’s method of operation であり、この organization’s method of operation を「計画の実行方法」の意味に捉え、form を文書の書式 と捉えたかの和訳である。製品実現の計画のアウトプットとは、確立されたその製品の製品実現の体制が実際にはどのようなものであるかという問題である。これは組織による違いが大きいから、単に使用されるように準備された文書の書式が異なるという程度の違いではない。この英文は「この計画活動の結果は、組織の事業方法に適した形態であること」と広い意味に理解すべきである。 引用規格条項 #1 ISO9000, 3.4.2 #2 ISO9004-2:1991 #3 ISO8402:1994, 1.4, 1.5 #4 ISO8402.1994, 3.5 #5 ISO9000, 3.2.11 #13 ISO9001:1994, 4.2.3 #14 ISO9000, 3.2.9 #18 ISO9001:1994, 4.2.3参考 #19 ISO9000, 3.2.1 #20 ISO9000, 3.7.5参考1. #21 ISO9000,3.2.5 #22 ISO9000,3.4.1 #23 ISO9001:1994, 4.19 #24 ISO9000, 3.8.4 #25 ISO9000, 3.8.5 #26 ISO9000, 3.6.1 #27 ISO9000, 3.8.1 参考 #28 ISO9000, 3.8.3 #29 ISO9000, 3.8.2 #30 ISO9000, 3.7.6 #31 ISO9001:1994, 4.2.3 f) #32 ISO9001:1994, 4.10.2, 4.10.3, 4.10.4 #33 ISO9001:1994, 4.2.3 g) 定義 (* 印は著者による翻訳) \1. 品質(quality) ISO8402:1994 2.1 表明される又は示唆される ニーズ を満たす能力に関係する“もの”の全体的特性* \2 品質(quality) ISO9000 3.1.1 一連の不可分の特性が“要求事項”を満たす程度* 引用文献 (英文献及び 文中の* 印は著者による翻訳) (1) Wikipedia: Service, http://en.wikipedia.org、2007.11.25現在 (2) ISO/ITC: “ISO9001:2000;サービス組織のための学習帳*” ,2006.9 (3) H.C.Monnich,Jr.: ISO9001 for S & M Sized Businesses,ASQ Qty Press,2001;p.63 (4) C.A.Cianfrani: ISO9001:2000 Explained,ASQ Quality Oress,2001;p.79 (5) C.MacNee他: Transition to ISO9001:2000, BSI Publications,2001;a-p.31,b-p.32 (6) D.Hoyle: ISO9000 Quality systems Handbook,Butterworth-Heinemann,2001; p.375, b-p.357, c-p.376, d-p.362 (7) ISO/TC176:ISO9000ファミリー改訂版のコミュニケーション及びマーケティングに関する推奨事項、規格協会ホームページ,2001.1 (8) J.Ketola他: ISO9000:2000 in a Nutshell、Paton Press、2000; p.25 (9) ISO/TC176: 中小企業のためのISO9001, 久米均一他訳, 日本規格協会, 1997.3.10; p.44 (10) ISO/TC176: 品質マネジメントシステムへのプロセスアプローチに関する指針、N544R2, 4 December 2003; Fig.4 (11) L.R.Beaumont: The Standard Interpretation, ISO Easy,2001;p.61 (12) ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、N526R (13) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press |
| H19.12.29(修正: H20.4.1) |
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