| ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修 |
| 6.2.2 項 力量、認識及び教育・訓練 | 実務の視点による ISO9001:2000の解説 <その32> |
35-01-32 |
6.2.2 力量、認識及び教育・訓練
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1. [6.2.2項}の趣旨 本項では、要員が「力量がある」こと(6.2.1項)をどのように確実にするかの力量マネジメントの必要条件を規定している。同時に、品質マネジメントの諸業務の真に効果的な実行には要員が「力量がある」だけでは十分でなく、「認識」も必要であることを指摘している。 2. 人的資源マネジメント (1) 力量マネジメント 品質マネジメントの効果的実行のためには組織は、所定の結果を出すように業務を行う能力、つまり、業務遂行力を持つ要員にそれぞれの業務を委ねなければならない(6.2.1項)。 組織は、組織内に必要な業務遂行力を維持し#7、いつの時点、どのような場面でも品質マネジメントの諸業務が効果的に実行され、又は、実行に支障を生じさせないようにしなければならない。組織は現在、将来に必要な業務遂行力を把握し、現在不足する又は将来に不足する業務遂行力を時宜を得て確実に充足する必要がある。 組織が新分野に進出したり、新商品、新技術、新設備の導入などのため品質方針や品質目標が変われば必要な業務遂行力の水準、性格、種類も変わる。また、特定の分野や商品の間の生産や販売量移動、製品の増減産によっても、組織内の業務遂行力に過不足が生じ、特定の業務遂行力の必要が生じる。さらに、新規採用者は一般に業務遂行力が不足しており、要員の退職によっても業務遂行力の不足が生じ、職場間の要員の異動や役職昇格によっても、要員には新職務に対して業務遂行力が不足することになり、要員の退出により旧職場にはその業務遂行力がなくなるから、両職場にはそれぞれ特定の業務遂行力の必要が生ずる。さらに、品質マネジメントが効果的に実行されない場合、要員に業務遂行力が不足しているのが原因であることもある。 組織は将来も見据えて業務遂行力の必要又は過不足を把握し、不足を適切に充足するための手順、責任、方法、制度を確立することが必要である。マネジメントレビュー(5.6.3 c)項)は、トップマネジメント が品質方針実現との関係で必要な業務遂行力について戦略的判断を下す機会であり、また、組織に必要な業務遂行力を最終的に確認し判断する機会である。不足する業務遂行力は一般には新規採用や要員の職場異動と教育訓練の実施によって充足する。また、外部から要員を採用して業務遂行力を組織内に取り込み、或いは、専門業者に業務を外注するなどによって組織内から業務遂行力の必要をなくする。さらに、手順の変更や標準化、機械化や自動化、コンピューターシステム化によって必要な業務遂行力の軽減し、存在する要員の業務遂行力で必要な所定の業務結果を出すことができるようにすることもある。 組織はこれらの処置を実行して不足する業務遂行力を充足して、その業務遂行力で各業務を行い、又は、将来の必要の備えを進める。そして処置の実行の後には、それぞれの処置によって実際に業務遂行力の必要が満たされたかどうかを評価することが必要である。つまり、各処置の結果、業務遂行力が不足し補充が必要と判断される根拠となった品質マネジメントの各業務の実行上の及び結果の問題が解消されたかどうかの評価であり、各処置の問題解決に関する有効性の評価である。問題が解消されていなければ、業務遂行力の必要を見誤ったか、その必要を満たす手段として当該処置を決めたことが適当でなかったということである。問題解決のためにどのような業務遂行力が必要か又はその必要を満たすためにどのような処置が適当かを再度検討し、その充足を図らなければならない。これらの事項は マネジメントレビュー(5.6.3 c)項)において再度総合的に評価、検討され、新たな業務遂行力の必要を勘案して、新たな業務遂行力の補充、強化の戦略的決定が行われる。これが力量マネジメント のPDCAサイクルである。 (2) 力量充足処置及び日々の要員配置の実行管理 規格のマネジメントシステムの要求事項は、システムとその構成要素の各業務(プロセス)の両者にPDCAサイクルを回すことを旨とする プロセスアプローチ (3)を基礎としている。力量マネジメントの諸業務の全体としての、つまり、システム としてのPDCAサイクルは、品質マネジメントの実行に必要な業務遂行力を見極め、不足を充足し、いつの時点でも組織内に必要な業務遂行力があるようにする上記のPDCAサイクルである。 このPDCAサイクルでは、不足する業務遂行力を充足する各処置によって当該の業務遂行力が間違いなく得られることが必要である。これを確実にするのが、業務遂行力充足処置である各業務(プロセス)の実行管理(control)のPDCAサイクルである。不足する、すなわち、必要な業務遂行力を充足する各処置は一般に、採用計画や要員配置計画、教育訓練計画、或いは、設備計画の下に実行される。手順の変更なども規模の大きい場合は特別な業務目標とその実行計画、外注化も特定のプジェクトとしての実行計画などに基づいて実行される。処置が実行された後は、狙いの通りの業務遂行力が充足されたかどうかを評価する。これは狙いの業務遂行力を充足する計画とその実行の有効性の評価である。狙いの通りに充足されていなければ当該処置の計画かその実行が不適切であったためであるから、新たな処置を検討して実行する必要がある。例えば、新規採用や職場異動者に不足する業務遂行力を教育訓練で充足する計画の場合は、教育訓練実行後に行うのは、委ねようとする業務の業務遂行力を身につけたかどうかの評価である。「力量がある」と判断されれば予定の職場に配置し、不十分と判断されれば教育訓練を続けるか、方法、手段を変更する。自動化設備導入の計画の実行後の評価は所定の機能を発揮したものとなっているかどうか、外注化の計画の実行後の評価は、当該供給者が所定の出来ばえで業務を実行できる状況にあるかどうかであり、良なら設備稼働又は外注化を決定し、否なら計画と実行を見直す。 力量マネジメントの目的は日々の各業務に業務遂行力のある要員を割り当てることである。全体として必要を満たす業務遂行力を備えても、実際に特定の業務遂行力を日々のそれぞれの業務に確実に割り当てることができなければ、品質マネジメントの効果的実行はおぼつかない。組織は、各職場の日々の各業務にそれぞれの業務遂行力をもった要員を確実にあてるという要員配置の実行管理(control)のPDCAサイクルを回すことが必要である。このためには各職場では各要員のもつ業務遂行力、つまり、委ねることのできる業務が何かを把握しておくことが必要であり、日々にそのような業務を委ねることを確実にしなければならない。作業ミスや不良な業務結果を出す要員に関しては、その業務に必要な業務遂行をもっているのかどうかを改めて評価し、教育訓練などにより不足を充足する必要がある。 3. 認識 (1) やる気 「認識」の原英語は awareness であるから、「気がついている」「受けとめている」(1)、「何かが存在し、重要であることを知っている」(2)の意味である。ISO14001でも同じ英語が用いられている#1が、JIS和訳は「自覚」である。規格では「認識」とは「要員が自らの活動と組織の品質目標達成との関連性及び重要性、並びに、どのように寄与するかを認識する*」(6.2.2 d)項)である。これは「要求事項を満たせなかったことが結果として組織と人々にもたらす悪影響を認識させる」#3こと、或いは、「適切な業務遂行の利益と不十分な業務結果が他の人々や顧客満足、操業コスト、組織の業績に与える悪影響を認識させる*」#2こととも表現される。 94年版には要求事項としてではないが、「motivation(やる気*)」#2という概念があり、これは「人々が委ねられた業務に何を期待されているのか、また、それら業務が組織の全体の活動をどのように支えているのかを理解することから生まれる」と説明されている。「認識」は、人々の業務遂行への意欲や責任感の醸成に繋がるということである。2000年版では「認識」は要員が組織の一員としての意識を高め、組織の利害を自分のものとも受けとめる意識とそれに基づく組織の目標の達成に向けての積極的な業務取組みを意味する「involvement(参画)」#4との関係で記述されている。すなわち規格は、「すべての階層の人々は組織にとって不可欠な存在であり、人々を組織の目標達成に参画させることが、人々の能力を全面的に引き出して組織の利益のために資さしめることが可能になる*」#4と考えている。 (2) 日本的企業文化 組織が品質方針に掲げた顧客満足を確実に実現し、又は、製品・サービスに対する顧客の受けとめに齟齬をきたさないためには、各業務のそれぞれが定められた通りに、かつ、定められた結果が確実に出るように実行、管理されることが必要である。所定の結果が常に確実に出るよう諸業務が真に効果的に行われるためには、要員に「力量」があるだけでは必ずしも十分ではない。各要員が組織の欠くべからざる一員であることを認識し、業務に対する責任意識、業務意欲、やる気をもって業務に取組むことが必要である。このことによって、要員はその持てる能力のすべてを業務の効果的実行と組織の狙いの顧客満足の向上に資することになる。これは組織にとって大きな利益であるが、同時に、要員も自己実現欲求や承認欲求が満たされ、仕事のやりがい或いは生きがいという人間としてかけがえのない満足感を得る。 人々の仕事への意欲や責任意識を重視し、品質はじめとする組織の様々な業績の改善に人々の能力を活用することは、戦後日本の国民風土の上に育まれた日本的経営の特徴のひとつであり、品質で世界を席捲した輸出企業の“ものづくりのマネジメント”の基本要素である。ISO9001で「認識」が2000年版で初めて要求事項となったのは、要員のやる気とか参画意識の重要性が欧米で認められ始めたのが1980年代であることによる。 米国の製造業ではどん底の1980年代初頭から日本の“ものづくりのマネジメント”から学ぶ姿勢をおおっぴらにし、1990年代半ばには製品品質における顕著な改善と共に企業業績を大きく改善し、「米国の復活」とも呼ばれる競争力の回復を果たした。この原因を分析したジェリー・ヤシノウスキーらは「成功への10の道」の要素として「従業員の創造力と活力を引き出す」「顧客を満足させ新市場を発見する」「絶えざる改善をする」という3つの要素を挙げている(5)。日本では著名だが、米国では統計的解析法の専門家として知られる程度だったW.E.Deming氏は日本製品の優れた品質の生みの親として1980年代に脚光を浴びた。同氏が要請を受けて 品質競争力を失ったフォード自動車の再生に関して提起したのは品質管理手法ではなく マネジメントの変革の必要であり、従業員のやる気から労使の民主的な協調まで人間関係の重要性を説いて経営者や管理者を驚かせた(6)。同氏が亡くなる直前まで10数年間で20万人を集めたセミナーで説いた米国企業が競争力をつけるための「マネジメントの14原則」は、つまるところ「(勤労者から)恐れや不安を取除き、信頼や協調に基づく企業文化を育成することによって、個々の勤労者の能力や創造力を最大限に発展させ、組織全体の目的をより効率的に達成し、組織体の競争力をつけようとする」という考え方(7)を表現したものである。この「14原則」は日本的経営を色濃く反映したものであり、同氏の日本での体験に基づく「品質管理の技術が真に効果を発揮するには安定雇用や人的資源を最重要資源と見做す日本の企業文化が不可欠」との認識が基礎となっていると、同氏の側に永年あった吉田耕作氏(7)は述べている。米国復活の原動力となったと言われている1987年制定の米国経営品質賞の表彰基準は事実上、日本との品質競争に敗れ停滞する米国経済の復活のための企業経営の指針を示すものであるが、ここにも人的資源重視の必要が明確にされている。その趣旨(4)は、優れた経営業績をあげるためには、従業員にやる気をもたせ、潜在能力を開発させ、それを組織の目標に振り向けさせることが必要であり、組織は経営業績の向上と人々の成長を育むような従業員支援風土と業務環境とを構築し維持することが必要であるということである。 (3) 関連する規格要求事項 このような「認識」の醸成に関して規格は、「認識」の要求事項を6.2.2項に記述することによって、教育訓練によって図るべきことを規定している。しかし、この教育訓練は「組織の経営戦略、方針と目標、事業構造の変化と発展、改善活動の実行、創造と変革の必要性、組織の社会的重要性*」に関して行われる#3と説明されているから、職場を離れた教育訓練だけでなく、日常業務における指導や意思疎通、情報伝達によって「認識」を向上させることも教育訓練の範疇としているようだ。 規格はまた、「認識」との関連だけで規定しているのではないが、教育訓練の他にも「認識」向上に関連する品質マネジメントの要素業務を規定している。 第一に コミュニケーション(5.5.3項)であり、「方針、目標、必要事項及び実績に関する情報伝達は人々を組織の目標の達成に直接参画させることに寄与する」#5として、「認識」向上と「参画」促進が組織内の効果的な情報伝達の役割のひとつであることを指摘している。このコミュニケーションには、法令順守と顧客満足を得ることの重要性をトップマネジメント(5.1 a)項)や管理者(5.5.2 c)項)が人々に理解させることを含むと考えてよい。第二に、作業環境(6.4項)である。この作業環境には、一般的な物理的作業環境のみならず、承認欲求に応える制度や人間工学的見地からの作業環境など社会的、心理的な観点からの作業環境が含まれている#6。これにより規格は、人々が働く環境の整備が「認識」ややる気を醸成するために必要であることを指摘している。 (4) 方法論 「認識」が、やる気に繋がり、「人々の参画」を促進し、人々の潜在能力を呼び起こし、仕事で達成感を満たされ、働く喜びを味わう。このような風土の中で、業務は真に効果的に行われ、組織は事業発展の目標を真に効果的、効率的に達成することができる。規格はこのような考えで「認識」の確立の必要を規定しているが、関連する要素業務を規定しているだけで、どのように醸成し、確立するのか、どのように組織と人々の利益に活用するのかは示していない。この方法論については日本でも、世界的にも種々の試みがあり、手法や論理があり、研修講座があり、実績の報告もあるが、統一され確立された論理や方法と形式が形成されるまでには至ってない。人間の内面を扱うこの問題にはひとつの答えはなく、百花繚乱の状況は今後も永く続くだろう。 日本では、要員の職場配置や担当業務指定の前には、それに必要な基本知識と実際の業務の実地訓練を含む教育訓練を行うのはまず普通であり、少なからぬ組織が業務の出来ばえを高め、業務の業務遂行力を育む業務関連知識、技能、専門性に関する教育訓練を行い、人々の自己研鑽を支援し、外部の教育、研究機関への研修派遣を行うなどの能力開発制度をもっている。各人の業務履歴は、業務に経験を積み、業務範囲を拡げ、効率性、有効性など業務の出来ばえを含む業務能力を高めるという考えで管理される。人々は勤務年月を経るにつれ、能力開発や業務経験と業務実績の評価を基に、より高度なより重要な業務を委ねられ、或いは、役職を与えられ、より重い責任を持たされる。人々は業務能力の向上と組織への貢献を実感し、組織との一体感を強め、参画意識を高める。終身雇用制度を基本とする組織では人材育成投資は確実に組織に還元され、組織の業務能力向上をもたらす。終身雇用制度による雇用や福祉に関する組織への信頼感は、人々に能力向上結果を組織のために全面的に使用することを躊躇させない。日本人の働き振りから欧米人が学んだ規格の「認識」「参画」或いはやる気は日本的企業文化の産物であるが、それは終身雇用制度並びに戦後の貧困からの脱却という国民的目標と伝統的な価値観とが結合した結果の勤労精神を土壌として形成されたものである。一時もてはやされた能力主義賃金制度の見直しや、非正規社員の正社員化の動きの急速な拡がりの動きの背景には、この「認識」の重要性に関する経営の判断があるに違いない。 4. 規格要求事項の意図 −力量マネジメントの要件と「認識」の必要性 (1) 全体 [前段記述] 品質マネジメントの諸業務の効果的な実行のためには、各業務にそれぞれの業務遂行力をもった要員を当てなければならない(6.2.1項)。これを可能にするために組織は、必要な業務遂行力をもった要員を常に組織内にもつようにしておかなければならない。a)〜c)項は、これを確実にすることを図る力量マネジメントのPDCAサイクルを規定している。 また、d)項で「認識」の必要性を規定し、e)項では力量マネジメントに必要な記録について規定している。 本項では力量マネジメントのPDCAサイクルのDに相当する、必要な力量を充足する活動及び力量がある要員を確実に配置する日々の要員配置の活動の実行管理については何ら要求事項を規定していない。しかし規定がなくとも、両活動が適切に管理されて実行されなければ、業務遂行力のない要員が業務を担当する事態の可能性が生じる。両活動に関しては4.1項の全般的な要件の他に特別な必要条件がないということであって、両活動やその管理が不要ということではない。なお、5.5.1項の要員の「責任及び権限が定められている」とは業務遂行力のある要員に各業務がゆだねられているということと同じ意味である。 (2) 要員に必要な力量を明確にする [箇条書き a)項] 「要員」の原英語は personnel である。これは単数形を持たない集合名詞であり、「一緒に働く一群の人々」(1)を意味し、普通は「組織又は軍隊で働く人々」(2)のことである。 JIS和訳の「要員」でよいが、ひとりひとりの要員を指すのではない。「要員に必要な力量」とは「組織に必要な力量」の意味である。また、「明確にする」は determine(決定する)であった、あいまいなことを明確にするとか、紙に書いて明確にするということではない。 品質マネジメントの効果的な実行を図るには、必要な業務遂行力が現在から将来にわたって常に組織内にあることが必要である。このために組織は、品質マネジメントの実行のために現在又は将来にどのような業務遂行力が必要か、必要になるかを判断しなければならない。この判断や決定は、組織にある業務遂行力では不足する業務遂行力は何かという形で表されるのが普通であり、その業務遂行力がなければ品質マネジメントの当該業務の実行と結果に支障が生ずるかどうかが判断の基準となる。これら力量ニーズは普通、関係部門で抽出し判断されるが、トップマネジメント は マネジメントレビューにおいて組織として総合的に見直しし、また、戦略的な力量ニーズの決定(5.6.3 c)項)を行わなければならない。 (3) 必要な力量がもてるように教育・訓練し、又は他の処置をとる [箇条書き b)項] 「必要な力量がもてるように〜する」は英原文$1では「これらのニーズを満たす〜をする」である。また、6.2.1項で「訓練」と和訳されたtraining(教育訓練) は本項では「教育・訓練」と和訳されている。 すなわち、a)項で不足するとされた業務遂行力を充足する教育訓練を実施するか、又は、その他の処置をとる」ことの意味である。「その他の処置」が何かについては、規格には特段の規定も説明もない。 (4) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する [箇条書き c)項] 組織は、不足する業務遂行力を充足するために教育訓練などの処置をとったなら、やりっ放しではなく、その結果で狙った通りの業務遂行力が充足されたかどうかを評価しなければならない。 a)項で業務遂行力が不足する又は将来に不足することになると判断したのは、現在の品質マネジメントのどれかの業務の実行や結果の問題点が特定の業務遂行力不足に起因し、或いは、現在の組織の業務遂行力では将来の品質マネジメントに問題が生ずると思われたからである。とった処置の有効性とは、処置によって補充、強化又は構築した業務遂行力によって当該の品質マネジメントの問題が解消できたかどうかである。問題解決になっていなかったなら、問題の原因としての業務遂行力の特定が間違っていたか、とった処置が必要な業務遂行力を充足する処置として適当でなかったかである。組織は改めて問題の原因と必要な業務遂行力の特定又はその充足の処置を決めて、実施しなければならない。この評価と決定は、マネジメントレビュー での人的資源ニーズの評価や決定(5.6.3 c)項)の範疇でもある。 (5) 要員が認識することを確実にする [箇条書き d)項] 品質マネジメントの諸業務が真に効果的に実行され、品質方針、品質目標の顧客満足が確実に実現し、或いは、顧客の著しい不興、不信を招くような製品不良や不祥事を絶対に起こさないためには、要員は手順に則って業務を行う能力をもっているだけでは十分ではない。要員は、当該業務の業務遂行力をもつだけでなく、その業務が組織の品質目標の達成にどのように関連するのか、どのように重要なのか、また、どのように寄与できるのかを「認識」をしなければならない。規格では組織の品質目標は組織の発展に必要な顧客満足度を意味するから、要員の「認識」とは自分が組織の発展に不可欠で、重要な業務を担当しているとの認識のことである。トップマネジメントを初め各層管理者は、人々が自分の業務取組みが組織の業績に直接関係をもっていることを認識し、業績向上に寄与することを意図にして委ねられた業務を効果的に行い、組織の発展に負っている責任を進んで果たすというような職場風土の維持に努めなければならない。規格はこれに寄与するものとして、教育訓練(6.2.2項)、コミュニケーション(5.5.3項)及び作業環境(6.4項)を挙げている。 (6) 教育、訓練、技能及び経験について該当する記録を維持する [箇条書き e)項] 要員が特定の業務に業務遂行力をもっているかどうかは、履修した学校教育、組織の実施した教育訓練、特定の専門性及び職務経験の4種の事実を用いて評価、判断される(6.2.1項)。各要員に関するこれらの事実の記録は、要員が特定の業務遂行力をもつことを何で判断したかを示し、適切に判断したことの証拠となる。業務実行の中で特定の要員の業務遂行力の不足が疑われる場合、この記録から業務遂行力を充足するためにどのような処置をとったか、業務遂行力のあることをどのように判断したのかがわかる。これによって、業務遂行力充足の処置の在り方や業務遂行力有無の判断の手順や基準の変更の必要性が抽出され、以降の業務遂行力充足を間違いないものに改善できることがある。JIS和訳の「該当する記録」は appropriate records であるから、このような記録保持の目的或いは必要に照らして適当な記録という意味である。 e) 項の記録は、特定の業務遂行力のあると判断された要員に日々に間違いなくそのような業務を担当させることを確実にする要員配置の管理には実務的ではない。また、学校教育履修履歴や職歴は組織の人事管理の基本情報であるから、普通は力量マネジメントの中で管理することはない。教育訓練は力量充足を目的とするいろんな観点から実施されており、その記録の在り方も一様ではない。「適当な記録の維持」とは種々の記録の中に力量マネジメントに必要な記録が分散されていることの暗示かもしれない。 引用規格条項 #1 ISO14001:1996/2004; 4.4.2 #2 ISO9004-1:1994; 4.18.3.1 #3 ISO9004; 6.2.2.2 #4 ISO9000; 0.2 c) #5 ISO9004; 5.5.3 #6 ISO9000; 3.3.4 #7 ISO9004; 6.2.2.1 原英文 $1 ISO9001 6.2.2 provide training or take other actions to satisfy these needs 引用文献 (英文献及び 文中の* 印は著者による翻訳) (1) Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc (2) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press (3) ISO/TC176: 品質マネジメントシステムへのプロセスアプローチに関する指針、N544R, 17 May 2001; p.6 (4) NIST: Criteria for performance Excellence, 2001 Criteria, 5. (5) ジェリー・ヤシノウスキー他: アメリカ製造業の復活、寒河龍太郎訳、東急エージェンシー出版部; p.24 (6) アンドレア・ガボール: デミングで甦ったアメリカ企業、鈴木主税訳、草思社、1994.2.17;p.22 (7) 吉田耕作: 米国復活におけるデミング博士の役割、日本経営品質学会, H15秋季大会,p.21 |
| H19.10.1 |
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