| ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修 |
| 4.2.1項 文書化に関する要求事項 一般 | 実務の視点による ISO9001:2000の解説 <その14> |
35-01-14 |
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4.2 文書化に関する要求事項 4.2.1 一般 品質マネジメントシステムの文書には、次の事項を含めること。
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1. [4.2.1項]の概要 顧客満足の向上を図り、或いは、その努力を実証したい組織(1.1項)は、規格要求事項に従って品質マネジメントシステムのPDCAを廻すことが必要である(1)。 本4.2.1項は、この PDCA である品質マネジメントシステムの確立、文書化、実施、有効性の継続的改善(4.1項)の内の「品質マネジメントシステムの文書化」について要求事項を規定している。 要求事項は組織が作成しなければならない文書を指定し、参考2 で文書化の程度についての考え方を示している。 2.文書と文書化の意義 (1) 文書 文書とは「情報及びそれを保持する媒体」(JISQ9000:3.7.2)であり、 情報とは「意味のあるデータ」(同:3.7.1)で、 データとは事実又は情報(7)のことである。 媒体には、紙、磁気、電子若しくは光学式コンピューターディスク、写真若しくはマスターサンプル、又はこれらの組み合わせがあり得る(同3.7.2 参考1)。 規格の「文書」とは実務的には、業務に使用する何らかの情報のことであり、それを保持する物理的手段を意味する。 最も普通の文書は、情報が紙の上に文章で記述されたり、図表や絵や写真で表現されたものであるが、紙の上でなくコンピューターの画面やスクリーン、キャンバス、看板、シールなどに表示された場合も、それらは文書である。 あるものの情報が現物そのもので表される場合はその現物も文書である。人の目では読めなくともコンピューターのハードディスクやフロッピーも文書である。 (2) 情報の文書化 規格には「媒体」の定義はないが、情報の文書化の対極は記憶や言葉で表されただけの情報であるから、個人の頭の中や言葉を伝える声や電波は「媒体」に相当しない。 これらの情報は、本人或いは当事者しか知ることが出来ない。 記憶は変化し音声や電波は一過性であるから、それに保持された情報はその瞬間にしか存在しない。文書化の根本の意義は、頭の中にあったり、言葉で表現されて当事者だけの、かつ、その場限りでしかない情報を、時を越えて不変で、関係者の誰もが知ることができる情報に換えることにある。 (3) 規格における文書化の目的 ISO文書(5-a)は文書化の目的として、情報伝達の道具、適合性の証拠、知識の共有の3つを挙げている。またISO/TS10013(4)では、文書化の利益として、業務の明確かつ効率的な枠組みとなる、業務に一貫性を与える、教育訓練の基礎となる、などを挙げている(4.2項)。 規格の概念において文書化をするのは、プロセスの効果的な計画、実行及び管理と品質マネジメントシステムの運用及び継続的改善のために必要であり、役に立つからである(5-c)。 (4) 実務における文書化の意義 組織とは多数の人々の協働の場である。 協働によってひとつの目標を達成するためには決まりが必要である。仕組み、方法、責任と権限等々である。 これらが口答で伝えられ、或いは見様見まねで覚えられて人々の記憶となっているだけでは、言い間違い、聞き間違い、見間違い、記憶違い、記憶の薄れによる誤認は避けられず、誤作業を引き起こす。 文書化は人の記憶や口答伝達がもたらす誤りとそれによる業務遂行の不首尾を防ぐための基礎である。 決まりを文書化し、文書に基づいて人々を教育し、文書によって作業を指示し、文書に表現された定めに従って業務を行なうことによって、誰でもいつでも、違った相手とも協働して、同じ結果を出すことができる。また、業務の結果を文書化することにより、誰もが実行を確認でき、同じ事実認識を持つことができる。 組織の業務の成果である独自の考え、業務方法、技術は文書化することで、組織内で広く応用され、継承され、他組織による知的財産権侵害に対抗できる。 事業を行なう目的で設立された組織では、製品又はサービスを提供するための諸業務が、事業の維持と発展を図る方向で人々によって分担され実行されている。 事業活動を効率的、効果的なものとするためには、諸業務が担当者のそれぞれの考えで好き好きに行なわれるのでなく、各業務がそれぞれ一定の方法、手段で行なわれ、他の業務と一定の関係をもって行なわれなければならない。 諸業務が体系的に行なわれるよう統制する活動がマネジメントである。マネジメントを担う管理者層は、各業務の決まり、仕組み、方法、責任と権限などを定め、人々を指導し作業の指示を与え、結果を確認する。文書化はこれらマネジメントの活動を効果的なものとする基礎である。実務において文書化は体系的な業務遂行の基礎であり、管理者の業務の基礎である。 (5) 実務における文書と文書体系 組織のマネジメントは種々の観点から行われている。顧客満足向上という観点もそのひとつであり、規格はこれを「品質」マネジメントと呼んでいる。 品質マネジメントに関係する業務は、安全衛生、生産量確保、能率向上、コスト低減など他の種々の観点のマネジメントにも関係がある。 各業務の手順は品質マネジメントの必要を満たすだけでは十分ではなく、それらのマネジメントの必要をも満たさなければならない。どの手順も関係するすべての必要を織込み、組織に固有の経験と知識や技術の体系に基づいて組織全体として最適なものとなっている。このような手順を文書に記した手順書は一般に、品質マネジメントに使用されるだけでなく他のマネジメントにも使用される。品質マネジメントにしか使用されない文書もあるが、品質マネジメントで使用する多くの文書は他のマネジメントと共通の文書であるから、実務上すべての文書は組織の全体マネジメントの文書である。 品質マネジメントに関係し使用される文書も全体マネジメントの文書であり、その一部が品質マネジメントに関係しているということである。従って、これら文書から構成される品質マネジメントの文書体系は、全体マネジメント文書体系の一部であり、それと同じ形で表現されるべきである。
組織にはマネジメントという組織の内部管理のための文書の他に、定款、契約書、業務協定書、官公庁届出用文書、官公庁等からの免許、許可、登録証、更に、広報宣伝用文書など種々の文書が存在し、使用されている。 マネジメント文書とその体系は、これらを含めた組織の包括的な文書体系の一部である。 これらの文書の中には品質マネジメントで直接使用しないが、品質マネジメントの業務にも関係する文書もある。 品質マネジメントの文書の管理においては、これら文書との整合が図られるような何らかの手順が含まれることが必要である。 3. 規格における文書の種類 (1) 文書の機能による分類 規格及び関連するISO文書には様々な文書が規定され或いは例示されている。 一方、規格はこれら文書の管理方法については 4.2.3項(文書管理)と4.2.4項(記録の管理)に分けて規定している。 すなわち、規格の概念においては文書は、その目的ないし機能の違いから仕様文書と記録の2種類に大別されている。 @ 仕様文書 (業務の実行の基準となり、或いは、業務の実行ないし方法を指定する文書) 規格では、「必要事項を記述した文書*」と定義され、総称して「仕様文書(specification)」と呼ばれる(JISQ9000 3.7.3)。 この種類の文書には、活動に関するものとして手順書、工程条件書、試験基準書が、また、製品に関するものとして製品規格、製品性能仕様書、図面などがある(同 参考)。 また、ISO/TR 10013では、品質方針及び品質目標、品質マニュアル、手順書、作業要領書*、品質計画書、様式、仕様書* の各文書の作成要領が説明されている。さらに、別のISO文書(5-b)では、工程図、組織図、連絡書、生産指示書、供給者リスト、品質計画書 の存在を示唆している。 規格の4.2.3項はこの種の文書の管理を規定しているが、この場合には単に「文書」と呼んでいる。 A 記録 (業務の結果を記述し、或いは、実態を示す文書) 規格では、「達成した結果を記述した、又は、実施した活動の証拠を示す文書*」と定義されており、「記録(record)」と呼ばれる(JISQ9000:3.7.6)。 この種の文書は、本項(4.2.1項)を除いては規格中で「記録」と呼ばれており、その管理の要求事項は @ の「文書」とは別の 4.2.4項に規定されている。 (2) 文書の主管元による分類 組織が用いる文書には組織自身が作成したものの他、外部で作成されたり、外部組織と共同で作成したものがある。 後者は外部文書と呼ばれ、その例としては、顧客の図面、発注仕様書*などの顧客作成文書、法令、規制、規格など公的文書、設備保全マニュアル*など供給者による作成文書が挙げられている(ISO/TR 10013:4.10)。 なお、顧客の図面などは顧客の所有物(7.5.4項)にも相当する。 (3) 規格が定義する種々の文書 ISO/TR 10013が定義し、作成要領を説明している文書は次の通り。
4. 規格要求事項とその真意 (1) 規格要求事項 規格は本項 a)〜d)の仕様文書と e)の記録を品質マネジメントシステム文書に含めるべきことを規定している。
94年版ではほとんどすべてのシステム要素、つまり、条項毎に手順書の作成が規定されていたが、2000年版では手順書は6種類のみが明示の要求事項となった。 文書化要求事項の簡素化は、94年版で文書化が目的化しシステムの運用がおろそかにされるかの傾向が認められていたことを改める2000年版改定の要点のひとつである。 代わりに2000年版ではプロセスつまり業務を行なうこと、ないし、その手順の確立と実行に焦点を当てる、プロセスアプローチが強調されるようになった。 しかしながら、業務の体系的な効果的な実行を確実にするための文書化の意義は何ら変わるものではない。ISO文書(5-c)は「2000年版は組織がその品質マネジメントシステム を文書化を選ぶのにより柔軟性を認めることになった」とし、「このことにより、各組織は最低量の文書をもつことが可能となった」と説明している。 しかし同時に、最低量の文書化とは「その諸プロセスの効果的な計画と実行と管理及びその品質マネジメントシステム の運用と継続的改善のために必要とされる」最低量であることを明確にしている。 「大規模の組織或いは複雑なプロセスをもつ組織では、規定された以外の"文書化された手順"が必要になるかもしれない」とも述べられている(5-e)。 このような文書化の必要性を規定したのが、c), d)項である。 規格では、すべてのプロセスについて効果的な実行、管理のためには手順を確立することが必要である(4.1 b),c)項)。 しかし、これを文書化するかどうかは、 a)〜c)とe)項の文書以外は、組織の判断である。 小規模の組織や業務風土の確立した組織では文書化しなくとも、決まりがきちっと守られるかもしれない。 どこまで文書化するかは、組織の規模、業種、業務の複雑さ、要員の能力などの要素によって異なって然るべきである(4.2.1項 参考2)。効果的な品質マネジメントシステムの実施のためには6種類以外の "文書化された手順"が必要になり得ると説明するISO文書(5-e)があるが、最低量の文書化としてなぜこの6種類が必要なのかについての説明はない。 ISO14001の新旧両版でも文書化すべき手順が説明なく変更され、且つISO9001の文書化要求事項との整合もとれていない。この点はあまり詮索しても意味がないようだ。 規格への適合性を主張するなら、組織はそのことを実証する客観的証拠を示さなければならない(5-f)。 この証拠は必ずしも文書化されている必要はない(5-f)。 文書とそれに基づく業務実行の記録は、効果的業務遂行の最も有効な客観的証拠となる。文書化要求事項を緩和したとはいえ、規格はマネジメントにおける文書化の意義を決しておろそかにしておらず、実務上また認証審査上の文書化の重要性は何も変わっていない。c), d)項の本意は不必要な文書化を戒めることにあるとも考えてよい。 5.関連する規格解釈についての検討 (1) 階層構造の文書体系 JSIQ9001規格は文書体系にも階層構造にも言及していないが、ほとんどの組織の品質マニュアルには品質マニュアルを頂点とする文書体系図が表示され、手順書が2〜3階層に分けて作成されている。 これは94年版に「品質システムで使用する文書の体系の概要を記述すること」の要求事項(JISZ9001:4.2.1)とISO10013: 1996(3)で階層構造が推奨されていたことの名残であると思われる。 ISO10013の改定版 ISO/TR10013:2001でも「文書類の体系は階層構造で表現できる」とし、手順書をシステム手順書と作業要領書*の2段階に書き分けることを推奨しているから、規格の概念には変化はない。 しかし現実には、複雑でない手順を階層化して文書化したことによって上下の文書に重複した記述が見られ、極端な場合はほとんど同じ内容になっていることもある。 手順書以外の文書をどの階層の文書に位置づけるのかの困惑も感じられる。このような組織では階層化にこだわる理由も必要もない。 (2) 文書のスリム化 システムの利益が実感できず、システム維持の負担ばかりが苦になるというような規格適用の実態に鑑みて、文書化を出来る限り行なわないという "文書のスリム化" が主張されている。 多くの組織の抱える問題はシステムが効果的に運用されていないことであるから、文書量が少ない方がシステムの効果的運用に好都合ということになる。 しかしこれは、組織の業務の効果的な計画、実行、管理に資さしめるという文書化の目的に矛盾する論理である。 現実の文書化に係わる問題は、重厚な形式や体裁、形式を整えるためだけの記述、同一事項の複数文書への重複記載、改定を顧慮しない不用意な表現など、文書化の方法に関係するものである。 また、文書の承認、改定、配布の管理の手続きの煩雑さである。更に、誰も見ない文書があるというのは、実務と関係ない形式的な業務をつくったということである。 文書化することは組織の業務に文書化と文書管理の作業が必要という以外の何の障害をももたらすものではない。 文書の作成、改定、保管などの作業の簡易化には徹底した工夫が必要である。 しかし、規格の考えでも実務の経験でも文書化はすればするほど組織の体系的、効果的な業務の遂行に役に立つ。 文書量を減らすという考えは百害あって一利なしのように思える。 (3) 品質文書 94年版では規格が維持管理を必要と規定する記録を「品質記録」と呼んでいた(ISO9001:1996 4.16項)。 これにも関係するのか、規格の規定する文書を「品質文書」と呼ぶこと多くが、2000年版で「品質記録」が単に「記録」と称されるようになってもこれは続いている。文書の管理手順の中に、ファイルに「品質文書」と標示することを規定する例も少なくない。 このような場合、ISO14001を合わせて導入する場合にはその文書は「環境文書」であり、作業手順は既に品質文書として文書化されているので、環境マネジメントシステムではその品質文書を引用するという形をとることになる。 いわゆる統合マネジメントシステムの論議の中でも、品質文書と環境文書との異なる文書体系をどう統合するかが焦点になる。 しかし、文書は本質的に組織全体としての業務を規定し、結果を記録するものである。 すべての文書は本質的にすべてのマネジメントに共通の組織全体の文書である。品質マネジメントがそれらの中から必要な或いは関係する文書を使用するだけである。 どの組織でも意識するかどうかは別として実際には、各業務は関係するすべてのマネジメントの必要を満たすように実行されている。業務の手順は最初から「統合」されているのであり、これを文書化した手順書は元来「統合」された文書である。 品質文書という言葉を使うのは問題ないが、その意味は品質マネジメントに使用する文書、品質マネジメントシステムに必要な文書という意味である。 ひとつの文書が品質文書であり環境文書であるという状況は珍しいことではない。このような観点でファイルに「品質文書」であることを明確にする標示をつけることは問題ないし、役にたつことがある。 引用文献(英文規格,英文献及び *印はJIS規格の原英文の著者による翻訳) (1) ウェブサイト ISO-実務の視点:実務の視点によるISO9001:2000の解説 シリーズ, 4.1項 一般要求事項(1) (3) ISO10013:1996, 品質マニュアル作成の指針 (4) ISO/TS10013:2001, 品質マネジメントシステムの文書類に関する指針 (5) TC176: 文書化要求事項に関する指針, ISO/TC176/SC2/N525R, 13 March 2001; 5-a: 2., 5-b: 4.d), 5-c: 1., 5-d: 追補B, 5-e: 4.c), 5-f: 7., (6) TC176: 用語に関する指針, ISO/TC176/SC2/N526R, 17 May 2001 (7) Oxford Advanced Learner's Dictionary, Oxford University Press |
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| H16.5.19 (改H16.9.20, 9.23、H17.4.29改追) |
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