ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§26
保   存 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-26
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
     サービス活動(実行) ⇔ サービスの提供$48-1;   製造及びサービス活動 ⇔ 製造及びサービスの提供
§25.1;
     製品サービス ⇔製品及びサービス
$92; 製品サービス実現の計画(活動) ⇔運用の計画$28-2; 要件 ⇔要求事項$1
 
  
§0.3  目 次

§26.1 製品サービスの保存
§26.2 製品サービスの保存の手段
§26.3 製品サービスの保存に関する規格規定の変遷
 
 
§26.1 製品サービスの保存
  JIS和訳「保存」は英文では“preservation”であり、元の良い状態を維持するという意味である。この「保存」は08年版(7.5.5)では「製品の保存」と表現され、「内部処理から指定納入先への引渡しまでの間、要求事項への適合を維持するように製品を保存しなければならない」と規定されている。つまり、規格の意図の「保存」は、外部提供の製品サービスの受け入れから組織の製品サービスの顧客への引渡しの完了までの間の各段階において、その段階までの業務結果或いは購買品や半製品を含む製品サービスが、それまでの業務実行で実現させた決められた通りであるという状態を維持することを意味する。
 
  08年版の「製品の保存」は15年版では「アウトプットの保存」と表現が変わっているが、「アウトプット」は15年版では製造及びサービス活動の途次と最終結果の製品サービスを意味するのにも用いられている§8.3から、規定の意図は08年版と同じである。すなわち、規格の意図の「製品サービスの保存」は、出来上がった製品サービス の状態が損なわれないようにすることであり、製造及びサービス活動の各段階での製品サービスの状態をそのまま次の段階まで維持する活動を意味する。
 
  成約又は受注して顧客に引渡す製品サービス を組織の狙いの顧客満足の状態の実現に資するものとするためには、製品サービス 実現の計画(8.1項)で決められた通りに製品を製造し又はサービス活動を行い、決められた通りの製品サービスを顧客に引渡すことが必要である。そのためには、決められた通りに製造及びサービス活動が実行されるようにする品質つくりこみの管理(8.5.1項)と共に、その各段階の結果の製品サービスの決められた通りの状態を損傷、劣化させないようにする品質維持の管理(8.5.4項)が必要である。規格用語では、前者は「製品サービスの適合化」の活動であり、後者は「製品サービスの適合性の維持」の活動でもある。
 
 
 
§26.2 製品サービスの保存の手段
  規格の各版では、製品サービスの保存の様々な手段が規定、又は、例示されている。但し、規定には、損傷、劣化からの製品サービスの保護のための手段の適用の必要を趣旨とする規定と、製品を損傷、劣化させないようにする処置を示す規定とがある
(28)。従って、前者の規定の解釈には具体的な処置としての後者の規定の適用を考慮することが必要であり、後者の規定の解釈にはその処置をどのような場合に適用するのかを考慮する必要がある。
 
  例えば、94年版の「保護(protection)」は、製品の変形や変質をする処置の必要を規定しているが、この「保護」のための処置は、半製品や製品サービスの位置や場所を変える際の損傷、劣化の防止のための「取扱い(handling )」の処置のひとつでもある。
 
  なお、規格の版毎に「保存」の適用範囲や手段を表す「用語」が異なるが、規定表現上の変化であり、狙いの通りの製品サービスを顧客に引渡すことを確実にするための「製品サービスの保存」の要件が規定されているという規格の意図には変化はない。例えば、00年版執筆者のひとりは
(21)は、08年版(7.5.5)に規定される「識別」が94年版(4.15.4)の「規定された要件への適合を確実にするのに必要な程度に、包装、梱包及び表示の活動を管理する」という規定の包装 の「表示(marking)」に対応するものと説明している。
 
@ 識別
  JIS和訳「識別」の英文は“identification”であり、「識別できるようにする」活動を意味する
$14。製品サービスの保存の手段としての「識別できるようにする」活動」は、合っていない或いは不適切な方法や条件で製品サービスを取り扱い又は処理して、その製品サービスの状態を損傷、劣化させることのないように、製品サービスの特性、状態、性質を見分けられるようにすることである。
 
  例えば箱に入った製品の顧客への輸送の業務では、製品取り扱いの方法や留意点のために輸送関係要員が見分ける必要のある製品の性質を、製品が割れ物であるとか、可燃物であるとか、生鮮食品であるとか、或いは、上下反転不可とか、要冷凍保存などの表示の形で箱の外に明確にし、また、輸送指示書に明記する。製品倉庫に保管中の製品の出荷期限の表示、重ね置き禁止の表示、特定保管場所の指定の表示もよく見られる。レストランの調理場で給仕可能かどうかを給仕盆に注文伝票を載せるというようなことも普通に見られる。
 
A 取扱い
  「取扱い」は“handling”であり、人手や機械で半製品、製品サービスの位置や場所を変えることである。94年版(4.15.2)では「取扱い」に関して、損傷又は劣化を防ぐことのできる製品の取り扱い方法を用いなければならない旨を規定していた。
 
  例えば原料を保管庫から取り出す作業、顧客に製品を輸送する作業、半製品を加工機に取り付け、取り外す作業、半製品を次の工程に送る作業などである。また、自動車修理業での顧客の自動車の作業場への出し入れ、販売業での商品の倉庫から出しての陳列、顧客への説明のための試用、レストランでの料理の調理場からテーブルへの運搬なども、「取扱い」である。 但し、15年版では、この内の組織の外部、或いは、他の製造及びサービス活動の行われる場所への半製品や製品サービスの移動の取り扱いは、下記Eの「伝送又は輸送」と表現される。
 
  人手で丁寧に取り扱う、機械で正確、精密に取り扱う、高温で取り扱う、常温で取り扱う、完全に乾燥させて取り扱う、或いは、半製品、製品を直接ではなく箱に入れて、特殊な容器に入れ、或いは、台に載せて取り扱うなど、それまでの製品サービスの状態を損傷、劣化させることのないように必要な半製品、製品サービスの取り扱いの方法を決め、その方法で取り扱わなければならない。
 
B 汚染防止
  15年版で08年版の「保護」の中から分離された概念である。 製品サービスの上記Aの「取扱い」や下記Dの「保管」、Eの「伝送又は輸送」中の製品サービスの汚染を防止する処置を意味する。「保護」の処置の一環としての油汚れ、水濡れなどの防止の処置が該当すると受けとめてよい。
 
C 包装
  「包装(packaging) 」は、94年版(4.15.4)では「包装(packing)、梱包(packaging)及び表示)」の活動の総称であったが、00年版で「表示」が上記@の「識別」になったから、「包装」と「梱包」を意味する概念となった。
 
  包装、梱包は、例えば、工程間の半製品の移動や仮置き、出荷前製品の保管、顧客への輸送などで生じる製品サービスの状態の損傷、劣化の防止のための効果的な方法である。これには、袋詰め、箱詰め、特定の容器への収納、サービス活動に係わる書類のファイリング、店頭販売での顧客の持ち帰り商品の包装や梱包も含まれるとしてよい。
 
  製品の包装の様式と仕様は、顧客との契約、また、安全性その他の理由から法令で規制される場合もあり、用いる資材に関する規制もある。 これらの法令は、製品に適用される法令又は規制(8.2.2 a)項)としても管理しなければならない。
 
D 保管
  「保管」は“storage”であり、保管、保存、貯蔵、格納などの意味である
(101)。 94年版(4.15.3)の「保管」の規定は、損傷、劣化、紛失のない保管の管理として、保管区域や保管倉庫の指定、出入庫の管理、保管状態の点検の必要を規定していた。「保管」とは、製品の損傷、劣化、紛失、盗難に対する物理的な安全確保と環境或いは雰囲気の影響からの保護のための設備や物理的な領域、空間を適用することを意味するとする00年版執筆者などの説明もある(21)(28)
 
  例えば、受入れた購買製品や顧客支給品、製造及びサービス活動の実行における半製品の使用前、次工程送りの前、最終製品の出荷前の一時的保管や仮置きの処置が相当する。サービス業では例えば、販売用商品の在庫、レストランでの素材、調理中と調理済みの料理の保管や仮置きなどである。サービス活動の実行用書類の担当部門間やりとりの前後における保管も含めて考えるとよい。
 
  規格の意図の「保管」は、製品サービスの状態をそのままに維持するために必要な製品サービスのそれぞれの場合の適当な保管と仮置きのための建屋、設備、場所を用意し、保管の方法や条件、及び、損傷の発生と劣化の進行の程度の必要な監視測定の時期と方法と基準を決めて、保管や仮置きを管理することである。
 
E 伝送又は輸送
  「伝送」は“transmission”、「輸送」は“transportation”であり、それぞれの英文は「伝送、送信、伝達」、「輸送、運送、運搬」の意味
(108)である。どちらも、製品サービスの位置や場所を変えることを意味する。15年版で現れた概念であるが、上記@の00年版の「取扱い」の中から、組織の外部、或いは、他の製造及びサービス活動の行われる場所への製品サービスの移動を分離して規定されたものと受けとめてよい。この場合、「伝送」は紙に書かれた、或いは、電子データとしての製品サービスの電送、郵送、人手による移動であり、「輸送」はものとしての製品サービスの自動車、鉄道等による輸送と考えてよい。
 
  規格の意図は、製品サービスの伝送、輸送において、それまでの製品サービスの状態を損傷、劣化させることのないように必要な製品サービスに対する処置、伝送や輸送の方法を考慮することである。
 
F 保護
  「保護」は“protection”である。この用語と規定は、94年版(4.15.5, 4.15.6)の最終検査に合格した製品を以降の顧客の手元に引渡すまでの間の品質の維持に関する、「保存(preservation) 」と「引渡し(delivery) 」の規定の趣旨がひとつの用語となって00年版で登場した。
 
  15年版の「保護」は00年版の「保護」をそのまま引き継いだものであり、顧客への製品サービスの引渡しを含む製造及びサービス活動の一連の業務を通じた、自然の、又は、不測の、或いは、製品の特性に起因して発生する製品の損傷、劣化の防止の処置を意味する。
 
  例えば、製品の変形、変色、変質、腐食、発錆、汚染、異物混入、揮発、漏洩、発火、爆発を防止する処置である。また、起こり得る盗難や情報漏洩、作成中のソフトウェアのプグラムの パソコン故障による消失、インターネットによるサービス活動の関連システムの誤動作や不調、契約書や納入製品説明書の持ち運び中の紛失や破損を防止する処置も含まれる。更には、隣接設備の事故、火災や自然災害がもたらすかもしれない、製品の不都合から製品を保護することにまで範囲を拡げることも可能である。
 
  この「保護」に対応する94年版の「保存」は、製品を元の状態のまま維持する方法と隔離や別置きの方法を適用することと規定していた。後者は、例えば、容器や配管に残留する前回製造の成分の混入、蓋のない容器中の製品への異物の混入、化学反応に起因する製品の変質や食品の腐食、可燃性製品の発火や爆発の防止に関係した作業環境や作業方法、容器や貯蔵庫の仕様を適切なものとすることを意味する
(23)
 
 
§26.3 製品サービスの保存に関する規格規定の変遷
@ 94年版
  94年版は、工程管理 (4.9)で管理すべき製品をつくる業務とは別の業務として「取扱い、保管、包装、保存及び引渡し」という標題の条項(4.15)を設けて、それらが「製品の状態の維持」を図るための処置であるとして、それぞれの要件を具体的な処置の形で規定している。
 
A 00年版
  00年版(7.5.5)では,これら活動を「識別、取扱い、包装、保管及び保護」の処置と表現し直し、活動の全体としての総称の用語「製品の保存」が創造された。しかし、各活動の内容や意義に関する94年版の規定は一切なくなり、代わりに、それら活動の狙いが、決められた通りにつくられた製品サービスを顧客の手元に引渡すための「製品の状態の維持」を図ることである旨が明確に規定されることとなった。
 
  このような規定表現の変化について、00年版執筆者のひとり
(21)は、94年版の規定は有形の製品の加工や製造業を中心とする記述であり、サービス業には不適切な表現であるとする多くの意見が汲み取られて、表現をすべての業種業態に受け入れられるように改め、規定の記述を簡素化したものであり、規格の意図や規定の範囲には何ら変更はないと説明している。
 
B 15年版
  さらに規定の汎用化を図り、製造業に特有の方法論を伺わせる用語や表現をなくするとの改訂方針に従って、製品の保存に係わる具体的な処置の規定がなくなり、00年版規定の処置の区分と名称を再編して、注記として記載されるに留められている。
 
H28.10.23 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所