ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§17
コミュニケーション ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-17
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
  業務 ⇔プロセス$2; 業務実行 ⇔プロセスの運用$8-1; 経営管理 ⇔マネジメント$19; 条件 ⇔ 要求事項$1
   職務能力 ⇔力量
$67; 製品サービス ⇔製品及びサービス$92; 品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;
   要件 ⇔ 要求事項
$1
 
  
§0.3  目 次

§17.1 コミュニケーション
§17.2 顧客とのコミュニケーション
§17.3 情報交換の実務
 
 
§17.1 コミュニケーション
(1) 情報交換

  「コミュニケーション」は英文では“communication”であり、情報の交換、或いは、それによって考えや意思を共有することを意味する言葉$21であり、TC176指針(6)では「情報交換」のことと説明されている。共通テキスト概念説明文書では、情報交換方式には口頭/文書、一方向/双方向、内部/内外間があり得るとされている(16)。実際には規格では日本語の「情報交換」と「情報伝達」の両方の意味で使われている。
 
  また、規格では情報伝達、情報交換することには、動詞“communicate”が使われており、JISは「周知」「伝達」と和訳している。
規格は、効果的な品質経営の規範としてのPDCAサイクルに倣った体系的で組織的な活動を意味するプロセスアプローチの考え方で書かれているが、規格における情報交換は、プロセスアプローチにおける08年版(4.1 d))の「業務実行$8-1及び監視を支えるのに必要な情報を利用できることを確実にしなければならない」という規定の「情報の利用」に相当する。この「情報の利用」は15年版では、文書化した情報§7の維持と保持として表されている(4.4項)。
 
 
(2) 情報交換の意義
  組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の狙いを決めてその確実な実現を図る品質経営活動には、組織の内外の様々な人々が直接間接に係わっており、組織内では多くの要員が協働し、また、顧客や供給者など外部の組織と連携して様々な業務を行なっている。品質経営活動が必要な顧客満足を確実に実現する真に効果的なものであるためには、人々の業務は相互に関連づけられて体系的で組織的に行なわれなければならず、そのためには関係する人々の間で業務実行と実行結果に関する情報交換が、時宜を得て適切な方法、方式で行なわれなければならない。
 
  また、人々が職務を認識(7.3項)し、やる気や参画意識を育むには、人々を知らされた状態に置くことが不可欠であるという点から、当該要員の業務実行に直接関係しない情報であっても、品質経営に係わる情報が必要な程度に伝達され、入手できることが大切である。
 
  ISO9001規格は基本的に品質保証規格であり、1987年に英国の品質保証規格を基礎としてISO規格として発行された。品質保証規格とは、顧客がその想いに反する不良品や欠陥品を受け取ることのないことを確実にするための、組織の製品製造と引き渡しに係わる業務の在り方の標準を示すものである。組織が、規格の規定に則って業務を行えば、顧客に不良品や欠陥品を引き渡して、顧客に迷惑や損害を与え、或いは、不興を買い、取引関係に悪影響が生じるというようなことを最小限にすることができる。なぜなら、品質保証で実績のある多くの組織の業務方法と原理を整理してまとめたものが規格の内容であるからである。
 
@ 品質保証規格の誕生 MIL-Q-9858規格
  品質保証規格の始まりは1959年制定の軍需産業に対する米国の規格MIL-Q-9858(軍事仕様書:品質取組み要件)と言われる。これは国防省が戦地で使用され、文字通り命に係わる問題としての兵器の品質を確保するために調達先に課した品質保証活動に関する規範であった。日本語では規格というよりは、国防省の購買基準という性格のものであり、調達先にその兵器製造に係わる業務で規定遵守を求めた。
 
  規格の規定は、兵器製造方法に関する規定ではなく、不良兵器の納入を無くするための兵器の設計から製造、出荷関連の業務の管理の在り方を定めたものである。規定の管理要素は、品質計画、文書化、記録、不良品管理、是正処置の他、購買管理、設備管理、製造管理など、今日の品質保証の管理要素とほとんど合致する。ISO9001初版と比較した文献では、ISO9001初版の規定の管理要素の内でMIL-Q-9858にない管理要素は、文書管理、製品トレーサビリティ、計器の校正、内部監査、教育訓練、付帯サービスだけと分析されている
(33)
 
  国防省は、兵器供給者に対してこの規格MIL-Q-9858の規定の遵守を要求し、その遵守を購買基準とし供給者を選定し、選定した供給者の遵守状況を国防省が行う二者監査によって監視することで、不良兵器が納入されることの防止を図った
(33)
なお、国防省の購買基準としてのこの規格は、ISO9001規格の94年版の発行後にこれによりと置き換えられて、1996年に廃止され、以降は購買基準にはISO9001が用いられている。
 
 
§17.2 顧客とのコミュニケーション
(1) 顧客との情報交換の意義

  組織が供給する製品サービス に所定の顧客満足を得ることができるかどうかは、組織が顧客の想いを正しく把握してそれを満たす製品サービス を顧客に引渡すだけでなく、顧客が製品サービス を正しく理解して、使用し又は受け入れるかどうかにもよる。 これには、双方が製品サービス について必要とする情報を相互に発信し、受け取ることができ、双方の想いや理解を一致させることができるような状況が必要である。例えば、製品サービス に関する不適切な、誤った情報交換により、顧客が意に沿わない を買ってしまったり、買った製品の誤った使用で事故を起こし、又は、サービスが誤って期待していたものと違ったことになれば、製品サービス そのものに問題はなくとも、顧客不満足の状態が起きる。
 
  顧客とのコミュニケーションの規定は00年版から設けられたが、その規格執筆者ら(22)は「組織が顧客のニーズと期待を満たし、顧客満足を向上させる能力は、顧客との情報交換活動の有効性に影響される」と、顧客との情報交換の意義を説明している。また、情報交換の活動の狙いとして、次の3つを挙げている。
 
@ 顧客の必要を見出し、組織が提供できる製品を伝えること
A 製品の使用のための情報を提供すること
B 引渡した製品に関する顧客の意見を把握すること
 
  情報交換の必要と態様は業種業態によって様々であるが、一般に組織が行う情報交換の活動としては、製品広報、営業、応札、注文受付けの各活動、及び、顧客からの使用方法照会対応、苦情処理の各活動がある。 また、製品引渡し、引渡し後のサービス活動などでも顧客との間の情報交換を伴う。情報交換の手段として、広告、インターネット、口頭、文書、仕様書、取扱説明書、製品展示、見本、或いは、顧客との定期的な会合、市場調査など様々である。
 
 
(2) 情報交換活動の顧客満足
  顧客との情報交換活動は組織と顧客との接点で行われる。申し立てられた苦情への真摯な対応が顧客の への信頼感を高めることにもなる。一般消費者向け製品では使用説明窓口の対応が への顧客の満足感を大きく左右する。製品使用についての照会に対する組織の応答や体制に顧客が不満を覚えると、製品には問題がなくとも、次の機会には組織の製品を選ばない。 逆に、申立てた製品の苦情への組織の対応が、顧客の抱いた不満を解消させ、組織と製品への信頼を向上させることもある§10.1。
 
 
(3) 製品サービスとしての情報交換活動
  規格の事業商品の概念では、大抵の事業の製品サービスは複数の事業商品類型から構成されているとされる。例えば自動車という製品は、本体(ハードウェア)だけでなく、冷却液(素材製品)、使用説明書(ソフトウェア)、販売員による説明(サービス)から構成されている#13-2p。この内、使用説明書の添付と販売員の説明は、情報交換活動である。すなわち、情報交換活動の結果も規格の定義の製品サービスである。
 
  情報交換活動に限らず一般に顧客との接点で行われる活動には、その結果を顧客がどのように受けとめたかという問題が付随し、それが顧客の組織や製品に関する評価に関係するから、活動の結果は規格では である。すべての接点業務は規格では、それ自体が であり、顧客に製品及びサービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と販売 に対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度に直接関係する。
 
   
§17.3 情報交換の実務
  各部門の管理者の日常業務の主体は、各業務が決められた通りに行われ、決められた通りの結果が出ていることを確実にすることである。この日常業務管理では管理者は、様々な業務の現場における業務実行と結果を監視し、決められた通りでない異常や問題を見つけ、それを正して、最終業務結果或いは組織の業績を損なうことのないようにする。更に、必要に応じて再発防止対策をとる。
 
  このためには、それぞれの業務の実行と結果、とりわけ、発生した異常や問題に関する情報が確実に収集され、管理者に、或いは、定められた部門に確実に伝達されるような枠組みの確立が必要である。これには、種々の異常や問題に対応する部門の責任、及び、具体的な処置を実行する部門にその情報を伝達する方法も定められていなければならない。
組織が必要とする業績を確実に実現するための最も大切なことは、日常業務において異常や問題を見落とさず、適切に処置し、これらを部門及び組織全体として把握し、対応することである。異常や問題を部門の管理者が正しく把握、処置し、他の部門も必要によりこの情報を共有し、更に、トップマネジメントがこれを組織全体として把握し、経営管理上の判断を行うような情報収集と情報伝達、情報交換の枠組みを確立し、異常の防止、問題の解消に取組まなければならない。
 
 
(1) 日常業務における情報交換
  個々の日常業務の実行と結果に関する情報交換は、それぞれの業務実行の手はずの一部として定めておくことが必要である。この種の情報交換には、個々の業務や作業の実行の指示と、個々の業務結果に関する業務間又は部門間の情報連絡が主体である。この種の情報交換に間違いを生じないために一般には、定められた書式の文書が用いられる。口頭による情報伝達の場合でも、情報交換が行われたことを確認する帳票が用いられることも多い。
 
  製造業では例えば、生産計画部門からの生産部門への日々の生産の指示と、業務の結果の指示元への報告や次の業務又は関連部門への連絡であり、或いは、生産部門から購買部門への資材購入要請と払出した原料の明細の生産ラインへの連絡である。ホテル業では例えば、受付からベルボーイへの宿泊者案内の指示と、ベルボーイから受付への案内済みの連絡である。食堂では例えば、ウェイトレスから調理場への顧客の注文の伝達と、調理場からウェイトレスへの調理完了の連絡である。
 
 
(2) 日常業務の管理のための情報交換
  日常業務において、それぞれの業務が所定の通りに実行され所定の結果が出されるようにする管理では、業務実行と結果を監視し、それらに関する情報を検知し、その情報に基づく必要な処置を決定し、実行し、また、必要により再発防止対策をとる。このためには、どの業務でどのような不良や異常があり得るのか、それぞれにどの部門がどのように対応するのかの責任と、そのための情報交換の方法を決めておくことが必要である。
 
  このような管理は、日常的な個々の業務に対する管理と、部門や組織の業務の全体としての管理に分かれる。前者の管理で交換される情報は日常業務で検出される不良や異常の情報が主体である。例えば検査不良品の発生時には検査部門と処置決定部門や生産管理部門との間で、不良外注品に関しては生産部門と外注管理部門や外注組織との間で、顧客の苦情に関しては受付部門と対応部門や原因部門との間で、それぞれの情報交換が必要である。
 
  個々の業務における不良や異常の情報は一般に、検査記録、異常連絡票、職場日報などを用いて業務現場から発信される。これへの対応は、それぞれの問題対応手順に則った書式の帳票を用い、この帳票の送受によって情報連絡と問題対応を進める形がとられることが多い。部門や組織全体としての管理は更に、部門を単位とする部門管理とそれらを統合した組織全体としての全般管理に分けることができる。部門管理では、部門が管理すべき不良や異常の発生を部門全体として分析し、部門としてとるべき対応を決め、実行する。例えば、苦情の発生率、納期達成率、外注品の品質成績、設備故障頻度の推移と原因分析、以降の見通し、必要な処置などの情報である。他部門に原因がある不良や異常には対応を要請し、原因部門のとった処置の有効性を管理する。
 
  全般管理のための情報は、各部門の不良や異常、問題の管理の実態の情報だけでなく、それに基づいて組織全体としての業務実行能力に係わる問題点を明らかにし、必要な対応を決め、又は、検討に供することが出来るようなものでなければならない。この情報交換によって、トップマネジメントは組織の業務実行と問題を把握し、全部門が必要な情報を共有することになる。さらに、この中から各部門は問題対応の責任を認識し、それぞれの取組みを合意し、トップマネジメントは経営管理上の判断と指示を行う。
 
このような情報交換は一般に、部門内又は部門間の業務日報や業務週報として、及び、月次の会議や検討会の場で行われる。規格のマネジメント レビュー(5.6項) では一般に年度での見直し検討のための情報交換が行われる。
 
 
(3) 効果的な業務実行を支援するための情報交換
  業務が効果的に行なわれて所定の結果が確実に出されるためには、関係する要員は知らされた状態であることが必要である。すべての要員は、与えられた責任と権限(5.3項)に係わる職務能力を有する(7.2項)と共に、自らの業務の重要性を認識している(7.3項)ことが必要である。
 
  このためには、要員の業務に直接必要な情報だけでなく、関連する情報、更には、組織とその実績に関する様々な情報が要員に伝達されている必要がある。例えば、前者は最終製品や前後の業務の概略知識、特定時点で特別に必要な注意や配慮、周辺で行なわれる特定の活動や出来事などであり、後者は、経営の動向や苦情など重要問題の情報などである。 この情報交換は管理者による普段の対話活動、部門内連絡会や会議、教育訓練、文書の掲示や回覧、社内報などの形で行われる。
 
 
(4) トップマネジメントとの間の情報交換
   品質マネジメントの実行により組織の事業維持発展に必要な顧客満足を実現するのは、トップマネジメントの責任である。ある程度以上の規模になると、機能別組織構造の枠組みの下に部門長に責任と権限を委ね、部門長の業務実行の監視と指揮を通じて、組織全体としての効果的業務実行を管理する。トップマネジメントはこの管理のために情報を収集し、その想いを伝達することが必要である。この情報は一般に、自身の随時の監視活動による収集と合わせて、部門長からの重要問題の報告として随時に、また、定めた会議体及び業務報告書によって体系的に、それぞれ収集される。トップマネジメントの決定や意思に関する情報は、これらの場で行なわれる他、品質方針として表明され、又は、全員集会で説明されて、関係者に伝達される。

 
H30.5.6 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所